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動物園にいる白い動物って白くないよね

 良くある“動物になって異性とお風呂”。しかしうちのブランちゃんは初です。良かったね彼が人魚で……



 下半身魚だからね!





 きゅふぅぅ……漸く気付いてくれた兄に無事タンスから救出された潰れゴマちゃん……ブランです。



「埃が積もった部屋だからな…洗おうな」


「きゅ……(しょうがない……)」



 お気に入りのカーペットとソファを汚したくないし、白くないアザラシ赤ちゃんは可愛くないので大人しく洗われよう。べ、別に兄に助けてもらったから懐いた訳じゃないんだからね!悪いと思って反省してる訳じゃないんだからね!


 ………ごめん。自分でも気持ち悪かったわ。ツンデレは無理だわ自分。




 そして兄にワシャワシ揉まれ擦られ……泡だらけ。もう私の原型留めてないね。ただの泡だらけの白いクッション(洗濯中)にしか見えないよね。

 水中なのに泡が体から離れないなんて不思議な光景…もう突っ込みも入れないから。ファンタジーなんでしょ。もう私の常識が通用しないことは諦めたわ。



「痒いところ無いか?」


「きゅふきゅ~(あ~…特にないかも)」




 洗ってもらってるんだから大人しくするよ。するけどさ……兄よお前も何で一緒に風呂に入ってる。人魚だから上を脱げばいいだけなのは……その、……こちとらうら若き乙女だぞ!彼氏とも何も無く異性の裸も見たこたないんだからな!?


 って、胸板を押し付けてくるな!湯船になら独りでは入れるから抱っこしなくてよし!



「あぁ……生き返る」

「きゅふぅ……(親父臭いけど納得……)」



 やっぱお風呂はいいねぇ……水中だけどって突っ込みはなしでお願いします。

 どうなってんだろうねコレ。お湯が混ざることなく湯船に収まってるなんて……魔法?魔法なの?

 ちょっとワクワクするような……ちょっと怖いような複雑な気持ちが心のなかでぐるぐる……



 っと、そうじゃなくて。



 うら若き乙女が知り合って一年にも満たないおまけに恋人でもない異性と風呂に入るってのはどうなのよ。今アザラシだけど。

 しかもイケメン……ちょっと鈍感でデリカシーないけど……まあ、拾ってくれた辺りいい人なんだけどさ。


 うん。でも一緒に風呂に入ってるのはダメだと思う。人じゃなくてアザラシだからなんだろうけど…。

 私が言葉を理解して、尚且つ女の子って分かったのにこの扱い……この兄が人魚で良かったよ。下半身魚で………ほら、見なくてすむでしょ?


 言わせんな恥ずかしい!




 ごほん。取り乱したわ。失礼しました。



 何が言いたいかというとですね、湯船に一緒に入るのはどうなのよって事なんです。

 私も生物的に女です。一応最近まで人間として生きてきましたし、顔のいい異性とこんなに密着したらそりゃドキドキします。



 あ、じゃれているときは論外です。あれは遊んでいるだけですから。一本的にほっぺを伸ばされている私がどうドキドキするのですかって話だ。マゾじゃないぞ私。



「口のまわりも少し薄くなったな」

「きゅ!きゅきゅふ!(近い!顔が近い!)」

「どうしたんだ?……口のまわりの事は言うなって?」



 う~ん違うけどそうだね。頷いておこうか。この兄にしては分かってきたじゃないか。紫色が無くなるまでその話しはしないでほしい。

 あのブドウ擬きを食べると止められなくなるんだよ……現に今も思い出したら涎が……おっとっと。



「お前……涎が……」

「きゅ!(言わんでよろし!)」



 今こそ唸れ私の前足ヒレ



 兄の頬にヘラで叩かれた様な赤い形がついたのは言うまでもなく私がやりましたがなにか?






 あわあわになってアワアワ慌てたお風呂タイムも終わりリビングで浮きまくる……重力があったり無かったりでホントに何が何だか訳がわからない。



「浮いてるな……楽しいのかブラン?」


「ふきゅ~…きゅう(楽しいか~?楽しいよ)」



 重力があったり……いつも何気なく地上と同じ様に行動していたのでこんな風にふわふわ浮かんでいると……何か無性に楽しい。あれだよ、かの有名な動物園で見れるアザラシの透明な筒を上に下に移動する時みたいな浮きっぷり。


 ん~……というよりはゴマちゃんの風船みたいだな。うん。コレが一番しっくり来るかも。




「今日は海の酸激食べないのか?」

「きゅう……きゅうきゅ?(いや、また染まるのも……てか言わないでくれます?)」



 言われると食べたくなるじゃないのさ!



「今から食べたら風呂に入った意味がなくなるからな……今日はこれで勘弁してくれ」

「むぐっ……まぎゅまぎゅ……!」




 な、なんだコレは!



 歯触りはまるでガム…。しかしはじめはレモンの様に爽やかで酸っぱく噛めば噛むほど味に変化が現れる……まさに七色のガム!

 初めはレモン、その次はライム……グレープフルーツに……あ、ブドウ。それから酸味の効いた甘酸っぱいリンゴ……おや?酸味が抜けてマンゴー…ピーチ……苺……ウマウマデス。



「それはガムと言って試行錯誤して出来たものなんだ。色んな果物を入れてとある事をすると味が混ざらず入れた順に味が出てくる……面白いだろ?」


「まぐもぐ……もぐもぐ…」




 凄いだろ?俺が発明したんだとな。

 それはなんとも素晴らしい発明ですね!ん?ガムですと……この世界にもガムがあるのか。意外な共通点だね。

 それにしても兄よお前は天才だな!


 でも何処かで効いた話だね……ガムで食事が出来ないかと某チョコレート工場の工場長が作ったのと似てない?ま、あれはブルーベリーパイが原因で食べたらブルーベリー色の丸い物体になっちゃうんだけど……



 あ、私このガムの果物になったりしない?ねえ大丈夫だよね、コレ。最後の味の苺になったりしない?バイオレットじゃなくて真っ赤な苺になったりしない?ほら、苺って括れがない私を上から見たらそっくり……って誰が逆三角か!



「百味ビーンズも作ってみたい気もするけど、臓物味とかゲロ味は嫌だな…鼻くそ味も……無理無理食べたくない」

「きゅ!(その味を食べたがる人がいるのか疑問だけど)」



 出来ることならそんな味は世に出さないでほしいわ。見た目の理由から蛙チョコも却下の方向で。蛙食べる趣味ないから。

 あ、でもバタービールは飲んでみたいかも。カボチャジュースはちょっと違う気がするからお勧めしない。



 ん?ちょっと待って。………百味ビーンズって言ったよね!まさか兄よ……お前も前世の記憶持ちか?同じ世界出身ですか?



 だったら一生ついていきますぜアニキ!



 ついていったら念願のチョコが食べれるかも。ん?何ですか?食い意地はってる?意地汚い?性根が腐ってる?動機が不十分?ソレガナニカ?


 自分に都合のいい相手についていくってダメなの?今人間じゃないから自分のことも出来ないのだ。そのくらいの我が儘許される。……と思いたい。


 何も兄を不幸にするなんて言ってないから。ただそばに張り付いていれば美味しい物が食べれて生活もできる……好条件ですよ奥さん。それを逃すなんて……出来ないのだ!




「きゅきゅ!(だからこれからもよろしくな!)」

「ホントお前の毛皮は柔らかくて手触りが良いなぁ……口のまわり以外は真っ白を保ってるな……そしてこの伸び具合っ!」

「きゅぅぅ……(みょーんって伸びるのがそんなに楽しいか~)」

「楽しいな」



 そうかそうか……っておい! 私はオモチャじゃないぞ。生き物!せめてペットとしてみてくれ。

 スキンシップ?コレは一方的なものだぞ、私はちっとも楽しくないぞ。Mじゃねぇーし。



「……それにしてもアイツ遅いな…」

「きゅ…きゅふぅぅ~?(ん?弟君?…そう言えば居なかったよね…どこ行ったの?)」




 決して影が薄いとかじゃないよ。君が居ないのに気が付かなかったのはこの兄の仕打ちが頭に来てて頭に血がのぼってたからだよ。

 それにしても遅いよね?もう夕方になるよ。



 海の底は昼間でも暗めだ。太陽の光が底まで届かないから。けど、珊瑚や海草が光っているので暗くて見えないことはない。

 夜になるとあのブドウ擬きが光るのだ。その光景は幻想的で是非とも恋人と見ることをおすすめする。写真にも撮りたいね…出来ないけどさ。



 とはいえ、海草も珊瑚も無い岩場はたまに剥き出しの水晶が有るが殆んど何もないので真っ暗だ…。

 夜になれば月明かりだけで泳ぐのは危ない。特にブドウ擬きの蔓に引っ掛かったら大怪我だ。

 実がついていれば天然の灯りになるけれど、岩場のブドウ擬きは実をつけたことは無いみたい……私が見た限りだけど栄養が不足してるからなのかな?岩ばっかりで栄養無さそうだし。



「今日は新月だ。夜になれば月明かりも無い……海の酸激も食べて数が減ったしな」

「きゅ!(え、ごめん……今度から自重します)」



 今更だけどブドウ擬きって海の酸激って言うのね……。すごい名前だね。人魚って肌が弱いからあの激酸っぱいのも痛いのかな?棘があるし……だから厄介だとか言って手袋して棘がついた蔓を除去してたのね。納得。



「いや違うぞ、お前のお陰でアイツも怪我をせずにすんだ。毎年棘と強酸で怪我をするんだアイツ……食い尽くされれば困るが増えすぎても困る。ブランのお陰で俺も棘を刺さずに済んだよ」

「きゅぅぅ…?(ホントに?)」



 膝に鎮座させていた私をソファに置いて外に向かう兄を見送る……私が行ったところでお荷物になる。だから一緒には行かない……


 と、いうのは建て前で、本当はお風呂上がりでウトウトしているので動きたくないのだ。ネムネム……明日は蔓が酷く繁ってる場所のブドウ擬きを食べようかな?



 ムニャムニャ……そう言えば兄と弟君の名前ってなんだろ?







 下半身魚でも恥ずかしいブランちゃん。まぁそうだよね。



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