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旅は商売・世は使役  作者: 黎明
出逢い編
5/7

長と波動使い

ユース視点



ーー俺が長に


“フィリアというわしの孫娘に逢ってみないか”


と頼み込まれた日が、

ちょうど俺が証を獲得し、俺の住処を街の中央にある神殿に移して

ものの数日経ったその日であった。

まだ生活にも慣れず仕事におわれるばかりであった。

が、それなりに楽しめていた。

しかし、そこに長が押しかけてきたのである。



「ユース!頼む!この通りじゃ。

どうかわしのかわいい孫娘の旅をサポートしてはくれぬか!?」


しかも相手は融合使いだと長から聞いていた。

俺のことを幼い頃から良く知る人物が

俺が嫌悪している対象である人間に会ってほしいなどよくいえたものだ。


「断わる」


ただ一言、俺は最初に言った。

反吐が出る。俺は旅を終えたばかりだというのに

次は子守り相手(足手まとい)がいるとは・・、だれがするか。


長の頼みだ、きいてやるか・・などという気持ちは一切湧かなかった。

ただ嫌悪だけが残った。


そう、最初は、ただただ感情的に、そう気持ちをぶつけていた。


「すぐに答えをだすでない、わしが頼んでるのじゃぞ!

ユース、おぬしはまた旅に出ると神父様に言ったそうじゃないか、

なら相手がいても良いじゃろう」


「ーーー」


俺が旅に出る気でいたことがばれていた。

そのことに、一瞬言葉に詰まる。


確かに旅に出る気でいる。

証は取れたが、俺はまだまだ弱い。

強くなること、それに探し出したいものもある。

そのためには旅を・・そう思っていた。


「俺じゃなくていい」


足手まといはいらない。そんなのほかの暇人にやらせればいい。

融合使いと波動使いは間逆の存在だ、

仲良く旅などできない。求めるものがまず違う。


「ユース以外に適任者などいない!ユースしかいないのじゃ!

頼む!!わしがみこんだ孫娘じゃ、弱くはない」


「」


あしでまといではないと、長のお墨付きだと暗に長はそう言っている。

同じ里にいていまだ会った事はない年下の融合使い。

融合使いは嫌いだ、不純物には魅力がない。無価値だ。

だが・・長がそこまで頼み込むのは何故だろう


「ユース・・、何故そこまで拒む?

わしは信頼できぬ男か?わしが、保証する。

フィリアは・・孫娘は使い手のセンスが十分にある。弱くはない。

ユースならそれがわかるはずじゃ、それ以上にユースにとってデメリットは少ない。

孫娘が旅で求めるものにユースの求めるものもある。決して無駄な一年にはさせない。

それに、これを受けてくれたら報酬をやろう、何でもいいなさい」


「何故」


「な、なんじゃ?」


「何故、そうまでして俺に頼む?」


長は信頼している。

だから融合使いの孫娘と旅を、なんて最初は裏切られたのかとさえ思った。

長とあろうものがナニモカモ投げ捨てて俺に頼み込むほどの用件ではないと。


「ユースとフィリアは似ているんじゃよ。

それぞれの使い手に対する興味が爆発的に強いところが。

その分、危うい点が多い。

フィリアはユース以上に危なっかしくてな、思い込みも激しい。

ユースならそれに歯止めをかけられるじゃろうと、思うた」


「過大評価だ」


それは長の感情論だ。

そんな理由で頼まれるなら躊躇なく断わる。


・・だがそこまで俺と似ているのだろうか、その女は。


「まあジジイなりの親心じゃと思うておくれ。

いや、長としても頼んでおるんじゃ。

ユース、おぬしは数日前、証を手に入れたな。

しかし、苦戦したと聞いたぞ?」


「・・・」


ああ、苦戦した。難しいどころじゃない。

ほとんどの波動使いが挫折するような地獄絵図だ。


「ユースこそ、己を過大評価しているようじゃ。

融合使いを嫌悪しているのもそこあるのじゃろう?

俺のほうが強い、とな。じゃがそれは甘い。

間違いないと思い込んでいるなら、お前はいつまでたっても成長できないぞ?

戦闘になったとき、てだれの者ならお前は瞬殺じゃ。」


「」


「対極にある使い手同士が旅をする。

そこで自分が固定観念にとらわれていることに気づくじゃろう。

それがお前の成長の鍵だ。ただ波動を区別するだけが波動使いじゃないのじゃ。

波動の心理をお前はまだ知らぬ。波動の心理・・極意を知れ」


「極意・・」


「そうじゃ。それにその手助けがフィリアにはできるとわしは踏んだ。

お前の研究目的は強くなる以上に、サガシモノがあるじゃろう。

融合使いは波動使いとは違う街を旅することが多い。

中でも、本と鉱石の街はお前にとっても興味深いじゃろう、

あそこであるメガネを入手または精製すると、もっと興味深いらしいしの」


「!・・」


聞いたことがある。図書館が分野ごとに別れて多く点在している

別名、知識の街とよばれている場所だ。

メガネ?・・初めて聴く。気になる・・


「ユースの目的は果たせる。フィリアは役に立つ。

どうじゃ、少しは行く気になってくれたか?」


「そいつに会う」


長の問いかけに、気付いたら俺はそう応えていた。

長がそこまで推薦する女と、街だ。

たしかに目的が果たされるなら利用するのもいい。

だが、


「おお!」


長はそれだけで喜び始めた。

そうかそうか、ようやく・・!

ワシよくやった!!などと自画自賛している。



「会ってからだ」


「おお、ありがとう!

大丈夫じゃ、ゼッタイ、気に入る!!」


「褒美は」


「もちろん、旅をした後、

ユースの欲しいもの、すべてやろう!!」



そうして長に丸め込まれた俺はむすっとしながら、

街の商店街で商う長の孫娘をみつけた。


俺に威嚇する猫と、歯向かう女。

そして、店を目にして一番気になった融合物。


「そこの宝石、何を混ぜた」


融合したにしてはひどくあいまいでわざとらしく、

一見、下手に見えるそれには、ひきつけられた。

そしてそれ以上に、彼女の融合センスに惹かれた。


だが融合使いだ、そんなもの認めない。

長の固定観念うんぬんの話は忘れて否定していた。


ーーー


「融合し切れていないな、俺には視える」


「!?なに言って・・」


「魔力の欠片が中で散らばっている。

魔力効果も曖昧になるだろう、役立たずだな。

それにも鮮やかではない、そんな失敗作にその値段をつけるのか??

道理で売れ残るはずだ」


「確かに貴方の目には見えるみたいね!

でもこれは・わ・ざ・と・散らばらせているの、色は鮮やかだけがすべてじゃない!

魔力の効果は はっきり!明確に!でるわっっ実証済みだもの!!

それと失敗作じゃない!最高傑作よ!」


「ほう・・どんな効果があるというんだ?

その最高傑作失敗作に」



ーーー


その後、口論した後、ハッと気付いた。


俺はいつからこんな饒舌になった?



ユース視点まだ続きます。


「俺はおしゃべりじゃない」

「その口のどこがおしゃべりじゃないの!?

毒舌で饒舌で最低な男だよ、ユースは!!」


「うるさい、

お前のほうこそ、おしゃべりだ」

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