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番外短編  作者: 黒藤紫音
8/12

皆でお茶会!【前篇】

十位さん(OriginalVision:http://nanos.jp/originalvision/)宅の青希緋蓮ちゃんと、相互お気に入りユーザーの霧崎 邪駒さん(http://mypage.syosetu.com/37712/)の「たとえ凍てついてたとしても(http://ncode.syosetu.com/n4022bk/)」からルグレさんとマナちゃんをお借りして書かせていただきました!

十位さん、霧崎 邪駆さん、ありがとうございます!

コラボ小説です

 乙梨涼護は憤慨していた。

 師匠の無茶ぶりはいつものことだし、いい加減慣れてもきたが、かといって怒りが沸いてこないわけではない。

 それに今回は自分だけでなく、お客さんまでも巻き込んでいるのだから、容姿に似合わず真面目な一面もある涼護は憤慨していた。

 心のままに、叫ぶ。


「なんで俺らがお茶会用のデザート作らないといけないんだよ!」

「涼護、落ち着いて」

「そうだぞ、涼護。落ち着け」


 叫んだ涼護を、未央とルグレ=トレートルが宥めた。

 深理もいたが、我関せずといった感じで料理をしている。


「ルグレさんは嫌じゃないんですか」

「どうしてだ? 私が作ったケーキでマナや詩歩たちが喜んでくれるなら、私はとても嬉しいぞ」

「……ルグレさんすげえ……」


 心の底からそう思う。

 堕天使というのが信じられないくらいに、眼前の男性は懐が広い。

 これは詩歩も気に入るはずだ。


「ルグレさん、本当にケーキ作るの上手なんですね。すごく参考になります」

「未央もすごく上手だと思うぞ。これはコーヒーを使っているのか?」

「はい。涼護とか男性は甘いもの苦手な人多いですから、コーヒーを使ってみました。最近のインスタントって水に溶けやすいから使いやすいんですよ」

「そうなのか。勉強になるよ」


 和気藹々とした感じで調理を進める未央とルグレ。

 なんとも和む光景だ。


「……チッ」

「舌打ちすんな。男の嫉妬は見苦しいぞ深理」

「わかっている」


 そしてその和む光景を見て、深理は舌打ちしていた。

 好きな女性が他の男と和やかに話しているところなど、見ていて楽しいものではないだろう。


「つか未央。俺は甘いもの苦手ってわけじゃないぞ。出されれば普通に食べるし、たまに食いたくなる時もある。ただ詩歩さん並みに好きってわけじゃないだけで」

「1ホールとか普通に食うものなあの人は」

「緋蓮が標準的甘党で助かった……」


 緋蓮は緋蓮で、甘いものを持ち帰ろうとする少し困った癖があるようだが、まあそれなら少々余るくらいの数を作ってしまえばいい。幸い四人もいるし、多少作るデザートの数が増えてもさほど苦にはならないだろう。


「未央」

「はいこれ。あ、涼護」

「ほらよ」

「ありがと」


 材料に余裕があるか確認しつつ作業を進める涼護。

 呼んだだけで何が欲しいか察してくれる相方がいると、非常に作業がスムーズだ。


「二人は本当に仲が良いんだな。何も言わなくても伝わっている」

「……そうですね」


 その光景を見ていた二人がそう話している。

 もっとも、ルグレはほのぼのと笑っているが、深理は殺意すらこもっていそうな顔つきという、なんとも対照的な図になっていたが。


 リビング。


「ルグレのケーキも、ミオおねえちゃんのケーキも、リョウゴおにいちゃんのケーキも、シンリおにいちゃんのケーキも、ぜんぶたのしみ!」

「そうねー、マナちゃん。私も楽しみよー」

「わーい」


 テーブルの椅子に座っている詩歩は、マナを膝に乗せ、頬をぷにぷにとつついて感触を楽しんでいる。

 つつかれて、マナは嬉しそうにきゃっきゃっと笑っている。


「お姉さんと幼女……和むねー」

「緋蓮。ちょっと落ち着かない?」

「えー、可愛くない?」

「いや可愛いしすっごい和むしむしろ詩歩さん代われと言いたくなるけど」


 欲望に正直な発言だ。

 一息で言い切った後、ごほん、と汐那は咳払いをし、真面目な顔つきになって言う。


「でもなんか、いろんな意味で危ない気がする」

「失敬な。どういう意味よ汐那ちゃん」


 今度はふにふにとマナの頬をつまんで遊んでいる詩歩が、不服そうな目でじっと汐那を見る。

 汐那はそんな詩歩からにこにこと笑っているマナに視線をずらした。


「シホおねえさん、やわらかーい」


 そして当のマナは、詩歩にもたれかかるように座っていた。

 身長差から、マナの後頭部には詩歩の爆乳がちょうど当たっているので、ぽよぽよとその感触を楽しみながら遊んでいる。


「ふふ、マナちゃん楽しい?」

「うん!」

「可愛い。もっと遊んでいいわよ」

「わーい!」


 詩歩の言葉に、マナは心の底から嬉しそうな声をあげた。

 そしてぽよぽよと感触を楽しみ始め、詩歩はその可愛らしい様子に喜びを隠しきれずにいた。


「……やばい、いたたまれねぇ……」


 そんな楽しげな女性陣のじゃれ合いを見て、夏木は縮こまっていた。

 ただでさえ周囲に見目麗しい女性に囲まれている上にそんな光景を見せられ、ずいぶんと余裕がない。

 そうでなくとも、夏木以外の男性陣は全員キッチンで調理中なので、リビングに男は一人だけなのだからいたたまれない。

 そんな夏木を見て、緋蓮がにやりと意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「夏木ー、どうしたのー?」

「いや、なんでもねぇよ緋蓮ちゃん」

「本当に?」


 そう言って、緋蓮の視線から夏木は目を逸らす。

 その判断は賢明だと思う。

この面白いこと大好きな賑やかし娘に目をつけられたら、遊ばれまくるに決まっているのだから。

 ……もっとも、目を逸らした時点ですでに手遅れなのだが。


「ねえねえ詩歩さん! また一緒にお風呂入っていい?」


 夏木から詩歩に声をかけた緋蓮は、パチンとウィンクして詩歩に合図を送る。

 その意図を、詩歩は明確に読み取ったらしい。


「いいわよ、また入りましょう。あ、またおっぱい揉んでもいい?」


 ブッ、という噴き出す音がリビングに響き渡った。

 キッチンからもそんな音が聞こえてきたような気がしたが、そんなことはお構いなしに二人のギリギリな会話は続く。


「うん、いいよー! その代わり私も詩歩さんのおっぱい揉んでいい?」

「全然いいわよ」

「やった、詩歩さんのおっぱい柔らかくて揉み心地いいから大好き! あ、マナちゃんも一緒に入る?」

「シホおねえさんやヒレンおねえちゃんといっしょにおふろ? はいる! シオナおねえちゃんやミオおねえちゃんも!」

「え、私も?」

「ええ!?」


 マナの誘いに、自分を指差しながら意外そうに汐那が声をあげ、キッチンからは未央の戸惑った声が聞こえてきた。


「五人かぁ……さすがに全員一度はちょっと無理かな?」

「そうねェ、未央ちゃんや緋蓮ちゃん、マナちゃんは小さいけど……それでもさすがに四人が限度かしら。私や汐那ちゃんは大きいしね」

「おっぱいが?」

「おっぱいも含めて」


 ゴッ、と夏木がテーブルに頭を打ち付けた。

 キッチンからも、同じようにゴッという音がした。


「詩歩さんほどじゃないけど、汐那も大きいよねー」

「お願いだから詩歩さんと比べないで。もう別次元だからこの人」

「あっはは、確かに!」

「べつじげん?」

「んー、あのね、おっぱいが」

「もうやめろください!」


 テーブルに頭をこすりつけるようにしながら、夏木がそう懇願する。

 ドタドタとキッチンから誰かが走ってくる音がした。


「いい加減にしろよ詩歩さんも緋蓮も! 子供がいるんですけど!? 蜜都も止めろ!」

「この二人のコンビにそれはすごい難しいことだと思うよ? 一人でも手がつけられないのに」

「というか涼護声大きい。マナが怖がるからやめなさい」


 トレーを持って、未央がリビングに入ってきた。

 そのトレーの上には、まるで花畑のように色鮮やかなデザートがたくさん乗っていた。

 ショートケーキやチョコレートケーキはもちろん、ミルフィーユにガトーショコラもある。


「元気なのはいいことだ。……マナ、お待たせ」

「少し多めに作ったから、持って帰りたければ申し出ろ。包む」


 ルグレや深理も入って来た。

 ルグレの持つトレーの上には 苺やブドウをたっぷり乗せたタルトにプリンや小さなシュークリーム、深理のトレーには湯気を立てている暖かそうな紅茶のカップが人数分置かれている。


「うわあ、ぜんぶおいしそう! ルグレ、おねえちゃん、おにいちゃん! これ食べていいの!?」

「ええ、もちろん。マナや皆のために作ったんだから」

「たくさん食べてくれ、マナ」

「美味しそう! 持って帰っていいんだよね?」

「数はあるからな。好きにしろ」

「これは……腕上げたわね、涼護」

「女子力高ぇー」

「歯ァ食いしばれ夏木。あと詩歩さん、これ俺だけじゃないですからね?」


 四人全員の共同作業の作品である。

 さて。


「じゃ……お茶会、始めましょうか」

「「「はーい!」」」


 楽しい楽しいお茶会(ティータイム)の始まりだ。


長くなったので前後篇にしました。

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