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Twist And Break  作者: 弥月
7/20

007

「いやー、悠麻ってば見た目によらず良い食べっぷりだったね。見ててこっちがすっきりしたよ」


 出された物を食べ終えて手を合わせたら、マティアスがそう言った。


「そんなに食ったつもりはねーんだけど……それに俺よりティアの方が食うの早かったんじゃねーか?」

「そこは気にしない。体格の差だろうし」

「ふーん……」


 何だこの結局俺が納得しないまま頷かざるを得ない会話。さっきからずっとそうな気がする。


「さてと。やっと本題に入れるかな」

「“零式”か」

「そうだね」


 マティアスの目が、いきなり真剣なものに変わる。まるで人が変わったかのように。


「何度も言ったけど、零式は“魔力を使わずに魔術を使える人物”だ」

「でも魔術が使える事に変わりは無いんだろ?」

「うん。んでもね、僕は悠麻、君がもしかして“始まりの3人”なんじゃないかとまで思ってしまう訳だ」

「始まりの3人?」

「詳しくは順を追って説明しよう。長くなる覚悟はしといてね」

「ん、大丈夫」


 頷くと、マティアスの表情が緩んだ。こいつはやっぱりこっちの表情をしてる方が落ち着く。なぜか、彼の真剣な表情には畏怖してしまう。


「まず、現存する魔術は例外無く“零式”が元になってる。それ故に、“零式”は“魔術”より構造が厄介なんだ」

「ちと待て。おかしくないか?」


 それを聞いてマティアスは首を捻るが、俺は納得いかない。ベースが“零式”なら、そっちの方がシンプルなんじゃないかと思ったからだ。


「おかしいのは君でしょ……“改良されてシンプルになる”事だって有るんだよ?」

「あ、そっか……」


 無駄を無くしてよりシンプルで使いやすいものに、ってところなのか。なるほど、そういやそういうパターンも有った。


「そう。で、魔術は己の中に有る魔力を使うのに対して、零式は大気中に有る魔力を使う」

「大気にも魔力って有るのかよ!?」

「万物の源は皆マナなり、って言葉が有るんだけどね。マナっていうのは魔力の元になるもので、つまりは“全てはマナから出来ていますよ。だから魔力が有るんですよ”って事」

「そしたら零式の存在が矛盾する」

「零式だって元と糾せばマナで構築されてるさ。体内でマナを魔力に変換出来ないだけ」

「体内でマナを魔力に変換して、それを源に魔術を使う…?」


 確認するようにマティアスに尋ねる。恐る恐るそれを聞くと、彼はにこやかに続けた。


「そう。飲み込み早いね。で、零式は、魔術師が体内で行う事……マナの変換とか、魔力の属性化とかだね。それを全て体外で行うんだ」

「そこが、1番大きな違いなのか?」

「うん。ただ、そこが1番の違いで、1番の難関さ。体内と体外じゃ、コントロールのしやすさが違う」

「そりゃ、体ん中のもん使うか外のもん使うかって言ったら……」

「中が断然楽だね。あとは、“始まりの3人”かな」


 俺は黙って頷いた。


 “始まりの3人”

 何やらややこしい事に関係させられそうな予感のする響きなのだ。こっちはただでさえ“零式”で遮二無二になりそうだってのに、出来ればこれ以上の面倒は御免被りたい。


 マティアスはそんな俺の心情を知ってか知らずか、表情も口調も変えずに言った。


「簡単に言えば、“最初の零式”だよ」

「ホントに簡単に言ったな。つかなんでそれが俺って繋がるんだよ」

「否定出来る要素が有るのかい?」


 言葉に詰まった。


 確かに彼の言う通りなのである。俺はそれを否定出来るだけの理由を持っていない。


「あんまり難しい顔しないの。さぁ、行こうか。どうせ長い説明は嫌いだろう?」

「行くって……どこに」


 マティアスはニヤリと口元を歪めて、予想していた中で1番げんなりする、微妙に答えになっていない事を言いやがった。


「実戦練習しに、さ」



 とりあえず俺はこの時、マティアスが何か企んでるようにしか見えなかった。


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