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お気に入り小説6

私のウエディングドレスを踏みつけた王女を庇う婚約者とは結婚できません。私を幸せにしてくれる人と結婚します。

作者: ユミヨシ
掲載日:2026/10/31

「何よ。このドレスっ。わたくしがあの方の妻になるの。わたくしの方がふさわしいのよ」


そう言うと、レイラ王女は、ディアーナ・フィレ公爵令嬢が手に持っている真っ白のドレスを奪い取って、床に叩きつけヒールの先で踏みつけた。


ディアーナはぼろぼろにされたドレスを手に取り、あまりの出来事に、涙がこぼれる。

この真っ白なドレスは、ロイド・バルデ公爵令息の元へ嫁ぐ時に、最高のウエディングドレスを着たいと、わざわざ店でオーダーメイドして作ったドレスだ。


細かい花の模様を重ねて、豪華に見えるように、店と相談に相談を重ねて作ったドレスだ。

そして、このドレスを作るのに使ったデリチュラの糸。


その糸には皆の友情が込められていた。

だから余計に悲しかった。




ロイド・バルデ公爵令息はそれはもう、美しい金髪碧眼の美男である。

ディアーナはロイドと婚約すると聞いた時、天に舞い上がる程に嬉しかった。


憧れの令息だ。

王立学園でも皆から人気のある、美しいロイド。

だから、婚約者になれると聞いた時に耳を疑った。

だが、家格も釣り合い、年頃も同い年。

考えてみれば、当然といえるこの婚約。


ディアーナは緊張しながら、両親に連れられて、バルデ公爵家に挨拶に行った。


ロイドとその両親は、嬉しそうに、


バルデ公爵は、

「婚約の申し込みを受けてくれて有難う。可愛らしいお嬢さんだ」


公爵夫人も、

「我が公爵家に来るのに、ふさわしい令嬢と縁が結べて嬉しいわ」


ロイドはディアーナに向かって、


「私もこの縁を嬉しく思う。よろしく頼むよ」


そう言って手を差し出してくれた。

嬉しかった。

王立学園ではクラスが違っていたから、あまり交流はなかったけれども。

婚約者として沢山交流が出来る。

それも憧れの人と。


今、16歳。二年後には18歳になり学園を卒業する。

きっと卒業したら結婚になるだろう。


だから、ドレスを作ろうと思った。

結婚式のドレスを。


この王国では花嫁のドレスは凝れば凝る程、幸せが来ると言われている。

だから、店で相談に相談を重ね、凝ったウエディングドレスを作ろうとそう思ったのだ。


沢山、花を縫い込んで、生地を重ねて美しくして。

わたくしは幸せになるの。

幸せに。


ああ、その前に、布を織る糸を用意しなくてはならないわね。

糸は最高級の糸にしたいわ。


今から、結婚するのが楽しみで仕方ない。

ロイドはとても優しくて紳士的で。


幸せになると信じて疑わなかった。


それなのに、レイラ王女が、学園でもディアーナに何かと突っかかってくるようになった。


レイラ王女も、ロイドがお気に入りで、王女とロイドは同じクラスである。

ロイドの傍にいつもレイラ王女が共にいた。


レイラ王女はそれはもう黒髪碧眼の美しい王女だ。

それに比べてディアーナは茶色の髪に緑の瞳の大人しめの令嬢である。


レイラ王女と教室で話をするロイドはそれはもう楽しそうで。


ロイドに会いにロイドのクラスに行けば、必ずレイラ王女とロイドが話をしていた。


相手は王族、強く言う事が出来ない。


なんでロイドと王女様がいつも一緒にいるの?

ロイドはわたくしの婚約者よ。


教室の中にいるロイドになかなか声をかけられないディアーナ。


「ロイドに用があるのなら、呼んでこようか?」


背後から声をかけてきたのは、黒髪碧眼の整った顔立ちのアレス・ライト公爵令息である。

ディアーナは慌てて、


「いえ、王女様とお話をしているのですから、わたくしが呼び出す訳にもいきませんわ」


「それならいいんだが。ああ、そうだ。放課後の魔物研究会の集まり、君も出るだろう?」


「勿論、出席しますわ」


「それならばいい。君がデリチュラの糸を集めているって言うから……力になりたいと思ってさ」


「よくわたくしがデリチュラの糸を集めているって知っていますわね」


「デリチュラの糸は貴重だ」


デリチュラとはクモの魔物である。

真っ白な糸で巣をつくるのだが、その糸から粘着物質を取り、織ると最高級の白い布になるのだ。


アレスはディアーナに向かって、


「会の皆に、協力を頼むがいい。私も協力したい」


「何故ですの?」


「それはその、同じ魔物研究会の君が副会長だから。会長としては当然だろう」


そうそっけなくアレスは言うと、


「放課後待っている」


教室に入って行ってしまった。


魔物研究会の会員は20名。アレスが会長で、ディアーナが副会長である。

週に一回、放課後集まって、魔物の事を勉強するのだ。


デリチュラの糸についてはその時に知った。

そして思った。

デリチュラの糸で織った布でウエディングドレスを作りたいと。


その事を会の女性達には話をしたことがあったが、まさかアレスが知っているとは思わなかった。


放課後、研究会の会合が行われた時に、アレスから、


「ディアーナがデリチュラの糸を探している。協力してくれないか?」


ドレスの事を話してある会員の女性が、


「ウエディングドレスを作りたいそうです。ですから、皆で協力しましょう」


嬉しかった。

共に探してくれるだなんて。


デリチュラの糸で作ったドレスを着たら、きっと幸せになれるだろう。


皆に向かって、


「有難う。とても嬉しいわ。ロイドと結婚する時にその糸で織ったドレスを着たいの。

真っ白に輝いてとても美しいはずよ」


アレスが頷いて、


「皆で、探して集めて来るから。私もその美しい布で出来上がったドレスを見てみたい」


会員達も口々に、

「私も見たい」

「どれだけ白く輝くんだろうな」

「楽しみだわ」


ディアーナは皆に向かって、


「有難う。皆さんが協力して下さるなんて嬉しいわ。わたくしそのドレスを着て幸せになります」


胸が熱くなった。



その話をロイドにしたら、


ロイドは呆れたように、


「たった一回、着るだけのドレスにどれだけ金をかけるんだ?まぁいい。君の家の金の使い道に文句は言わない。だが嫁いで来たら贅沢は許さない。いいね?」


そう注意された。

確かにデリチュラの糸は高額だ。

だけれども、一生に一回の最高のドレスをディアーナは着てみたいと思ったから。


ロイドに向かって、


「わたくし、デリチュラの糸のドレスを着たいのです。結婚式に。真っ白に輝くドレスを」


「解った解った。仕方が無いな」


ディアーナの夢を解ってくれなかったのが、悲しい。

確かにお金がかかる。


でも、どうしてもその糸のドレスが着たいのよ。



魔物を研究する会の会員達の協力のお陰で、デリチュラの糸は集まり、ドレスも着々と作られて行く。

会員達にはデリチュラの糸の金はきちっと支払った。

高額なのだから当然である。


やっと出来上がったドレス。

箱に大切に入れて、協力してくれた仲間達に、着る前に見せたかった。


だから、ドレスを王立学園に持って行ったのだ。


放課後、皆に見せようと、御者に命じて、箱を馬車から降ろした。そして、学園の教室に持ち込んで、魔物研究会の会員達を集めて、箱からドレスを出して見せた。


アレスが


「なんて見事な。デリチュラの糸の輝きが、それ以上にデザインも凝っている」


他の会員達も、近くで眺めながら、


「素晴らしい。それになんて美しい」

「これを着て、結婚式を挙げるのね。なんて素敵な」


ディアーナは、「もっとボリュームを持たせるつもりよ。とりあえず、元になるドレスが出来たから」


そこへレイラ王女が突然、入って来て。


「なに、このドレス」


「レイラ王女様。このドレスは……」


「これを着てロイドと結婚する気なのねっ」


いきなり怒り出したレイラ王女はディアーナからドレスを奪い取ると、


「何よ。このドレスっ。わたくしがあの方の妻になるの。わたくしの方がふさわしいのよ」


床に叩きつけてヒールの先でゲシゲシと踏みつけたのだ。

ディアーナは驚くと同時に、悲しくなった。


踏みつけられたドレスは汚れてしまって。

あの美しき真っ白な輝きが……凝って入れた花の模様が……


相手は王族だ。皆、誰も文句を言えず、固まっていた。


そこへロイドが駆け込んできて、ディアーナは涙を流しながら、


「ドレスを汚されてしまったの。貴方との結婚式で着たかったドレスを」


ロイドはレイラ王女の前で頭を下げて、


「申し訳ございません。学園にドレスなんぞ持ち込んで。お許し下さい」


レイラ王女は微笑みながら、


「本当よ。学園にドレスを持ち込むなんてね。わたくしが踏みつけてあげたわ。ロイド。わたくしを送って頂戴。王宮まで」


「かしこまりました」


ロイドは背を向けてレイラ王女と共に行ってしまった。


あああ……わたくしの真っ白なドレスが……

ロイドとの結婚式に着たかった真っ白なドレスが汚れてしまった。


なんて悲しい……なんて辛い。


涙が零れる。


アレスが肩に手を置いて、


「作り直せばいい。君がまたデリチュラの糸が欲しいと望むのなら、私が集める」


他の会員達も、


「諦めるのはまだ早い。私達も手伝おう」

「だから、泣かないで下さいませ。ディアーナ様」

「そうよ。私達、協力しますから」


嬉しかった。

皆の心が……

でも……


「わたくし、ロイドとこのまま結婚していいかどうか。勿論、政略なのはわかっております。

あの人は王女様の機嫌を取りながら行ってしまった。床で踏みつけられたドレスなんて見向きもせずに。ロイドと結婚する為に幸せになる為にドレスを作ったのよ。真っ白な美しいドレスを。それなのに」


アレスがディアーナの肩に手を置いて、


「結婚は幸せになるゴールじゃない。幸せに足掻くスタートだ。だから、ロイドと今日の事を話し合うがいい。ロイドがどう思ったのか。これから先、似たような事が起きた時、話し合えないでどうするんだ?」


と真摯に言われた。

もっともだと思った。


ロイドに聞いてみよう。

そう思えた。




その夜、王都にあるバルデ公爵家を訪ねた。

ロイドに面会を求めたら、客間で会ってくれた。


ロイドはディアーナに向かって、


「今日の事は王女様を怒らせる君が悪い。ドレスを学園に持ち込むなんて非常識にも程がある」


「でも、あのドレスを会の皆に見せたかったのよ。デリチュラの糸を集めるのに、皆が力になってくれたわ。だから、見せてあげたかったの。それなのに王女様が」


「王家を怒らせたらまずいだろう。だから私が機嫌取りをしているのに、君が王女様を怒らせてどうするんだ」


「だって、わたくしのドレスをあの王女様が踏んだわ。ボロボロにされたわ。だからわたくし」


「ドレスの一つや二つくらいで、煩く言わないでくれないか。また作り直せばいい」


「でも、あのドレスを着てわたくし、結婚式に」


「たった一度、着るだけのドレスに金をかける事、私は反対だったんだ。前もそう言っただろう」


「わたくしにとっては大切な、一生に一度の結婚式なのよ」


「それにいくらかけていると思っている」


「公爵家同士の式にみっともない恰好は出来ないわ」


「だからってデリチュラの糸は高額だろうに。そんなものに金をかけるなんて。私とて公爵家の息子だ。必要な事で飾り立てるのに文句は言わない。デリチュラの糸は必要か?単なる贅沢だろう。王女様が怒るのも無理はない」


「王女様は貴方の妻になりたいとはっきり言ったわ」


「ばかばかしい。私は君と婚約しているんだ。王女様と結婚する事はないだろうよ」


ディアーナはロイドに向かって、


「わたくし、貴方と考え方が違う事が良く解りましたわ。ですから婚約解消致しましょう」


「どうしてだ?私は当然の事を言ったまでだ」


「わたくしはデリチュラの糸で織ったドレスを着たかったのです。一生に一度の結婚式ですもの。愛する貴方にそのドレスを着て嫁ぎたかった。それを解って貰えないだなんて。王女様を庇うだなんて。あんまりだわ」


「だから、たった一度の結婚式でデリチュラの糸なんて贅沢な。王女様を庇っている訳ではなく王家を怒らせる訳には……」


立ち上がって、帰り支度をした。


心が砕けてしまって、婚約を続けたくない。そう思った。





家に戻ると両親に、


「わたくし、ロイドと結婚したくありません。わたくしの作ったドレスを今日、レイラ王女様に台無しにされましたの。踏みつけられて。ロイドは庇ってくれなかったわ。わたくしのドレスを……わたくしが結婚式で着る為に一生懸命、用意したドレスを台無しに」


父フィレ公爵は、


「王女様の機嫌を取りたかったのだろう。バルデ公爵令息として当然の判断だ。王家を怒らせたくはないからな。そもそも学園にドレスを持っていくとはどういうことだ?」


父に叱られた。


母、フィレ公爵夫人は、


「女性に取って一生に一度の晴れ舞台なのよ。そのウエディングドレスを踏みつけるなんて、いかに王族とはいえ、酷すぎますわ。わたくし、今回の事を教会に訴えたいと思います。常識外れの行動をする王家を教会は糾弾するでしょう。わたくしだって、ディアーナのウエディングドレス姿を楽しみにしていたのよ。それなのに。まったく男って女心を解っていないのだわ」


母が怒ってくれて嬉しかった。

父は呆れたように、


「婚約解消は認めん。教会に訴えるのは勝手にするがいい」


母は、


「バルデ公爵夫人に会いに行ってきます。今回の事を訴えて、婚約解消をもぎ取りますわ」


「お前っ。これは両家が結びつく事による政略っ」


「いいですわね」



母に連れられて、バルデ公爵家を訪れた。

母とバルデ公爵夫人は仲がいい。


バルデ公爵夫人は、ドレスが台無しになった件を聞いて、猛烈に怒り、


「ロイドを呼びなさい」


侍女にロイドを呼びに行かせた。

ロイドが客間に入って来ると、バルデ公爵夫人は、


「婚約は解消します。ディアーナ。本当にごめんなさい。息子が申し訳なかったわね」


ロイドは慌てたように、


「ドレスの件か?私は悪くない。王女様の機嫌を損ねる訳にはいかないだろう」


バルデ公爵夫人は、


「ドレスを踏みつけられたということは、フィレ公爵家を王家が馬鹿にしているという事になります。そして我がバルデ公爵家も。結婚式に着るドレス。それは両家を結びつける象徴なのよ。それなのに。それを踏みつけにされて、貴方、怒りもしなかった。今回はわたくしの権限を持って婚約解消を致します」


ロイドは真っ青になりながら、


「ディアーナ。なんとか言ってくれ。たかがドレスだろう?」


ディアーナは、


「一生に一度の結婚式のドレスですわ。それを貴方は、踏みつけにされても、王女様の味方を。わたくしは悲しかった。ですから婚約解消致します。今まで有難うございました」


胸が痛い。

ロイドの事が好きだったのだ。


でも、ドレスを踏みつけにされて王女様の味方をされた時、もう、この人と結婚したくないと強く思ってしまった。


後悔なんて絶対にしない。

ああ、でも、真っ白なドレスを着て、ロイドと結婚したかったわ。

結婚したかった……




婚約解消をした事はあっという間に学園全体に広がった。


魔物を研究する会の会長アレスが、ディアーナに向かって、


「大丈夫じゃないよな。今度、誰かと結婚する時は、デリチュラの糸をまた私達で集めるから気を落とすな」


他の会員達も、

「そうそう、男はロイド様だけじゃない」

「そうよ。ディアーナ様」

「ディアーナ様なら引く手数多よ」


アレスが顔を赤くして、


「そう、ディアーナなら引く手数多なんだよな」


ディアーナは聞いてみる。


「そういえば、アレスは婚約者が、なんでいないのかしら」


「うちは名門だけど、裕福じゃないから、結んでも得が全くない」


そう言って、アレスはディアーナや会員達に、


「さぁ、今日の会を始めるぞ」


その時、バンとドアが開いてロイドが立っていた。


ディアーナに向かって、


「どうか、考え直してくれないか。私は王家の機嫌を損ねたくなかっただけだ。決して、君をないがしろにしたかった訳ではない。そこは誤解だ。だから、再び婚約を結んでくれないか」


ディアーナは立ち上がり、


「貴方とは価値観が違いますわ。わたくしのドレスを重く見て下さらなかった。ですからわたくしは貴方と復縁することはありません」


アレスがディアーナの隣に立ち、


「しつこい男は嫌われる。諦めたらどうだ。ロイド」


ロイドはアレスに向かって、


「はぁ?諦めろだと。貧乏公爵家の息子が。お前だったらディアーナの結婚式に着る高価なドレスを許すと言うのか?」


「一生に一度だろう。貴族全体にお披露目する式なのだから。ディアーナが望めば叶えてやるのが男だと思う」


「それじゃお前がディアーナを娶るというのか?貧乏公爵家のお前が」


「うちの公爵家ではディアーナと結婚しても苦労させるだけだし、結婚式のお金も捻出出来ないと思うし」


「ハハハハハ。貧乏人が。ほら、ディアーナ。私しか家格が釣り合う相手はいない。だから復縁して欲しい」


ディアーナはブチ切れた。


「わたくし、アレスのライト公爵家に嫁ぎます」


皆が驚いた。


アレス自体が驚いた。


「えええっ?うちは貧乏で、ディアーナが喜ぶ式を挙げる金もっ」


「ロイドと結婚する位なら、アレスと結婚した方がマシよ」



ロイドの言葉に頭に来た。

貧乏だって罵しられたアレスが気の毒だと思った。

彼はイイ人だ。

色々と親身になってくれた。


だから、勢いで言ってしまった。

アレスと結婚すると。


ロイドは笑いながら、


「後悔するぞ。貧乏人との結婚なんて。あああ、笑いものにしてやる。ざまぁみろだ」


そう言いながら、背を向けて行ってしまった。



アレスは言い含めるように、


「私との結婚は無理だ。結婚は結婚してからが、スタートだ。私とでは苦労する。だから、ディアーナ。君に相応しい家に嫁ぐがいい。いいね」


ディアーナは頷くしかなかった。

両親もライト公爵家との婚約を反対するのが目に見えていたからだ。




その後、ディアーナは、新しい婚約話が出たが乗り気ではなくて。

どうしても、会でアレスと顔を合わせると、なんとも言えない気持ちになってしまう。


貴方はわたくしの事をどう思っているの?


痺れを切らして、二人きりの時にディアーナは、


「貴方、わたくしの事をどう思っているの?このままわたくしを諦めてしまうの?」


「いやだから、うちは貧乏で」


「お金持ちになりなさいよ。わたくしに一緒に苦労してと言いなさいよ。貴方はわたくしの事を好きなの?どうなの?」


イラついた。


普段、話をしていても、好意を感じて仕方が無い。

だが、彼はただ優しいだけの男だ。


自分は公爵令嬢。利のある婚約を結婚相手を探さなくてはならない。


でも、わたくしはアレスが好き。いつの間にかアレスが好き。


だから、アレス、貴方はわたくしの為に動きなさいよ。


そう叫びたかった。

アレスはディアーナの手の甲にキスをして、


「苦労させるよだなんて言わない。結婚は結婚してからが勝負だ。私は貧乏から脱出してみせる。君を必ず幸せにしてみせる。だから私と婚約をしてくれないか」


そして、アレスは言い切った。


「デリチュラの養殖を始めようと思っている。必ず成功させてみせる。デリチュラの糸のドレスを結婚式で着て欲しい。ただ、今は豪華な結婚式を挙げる事が我が公爵家では出来ない」


「わたくしの持っているお金で結婚式は挙げます。名門公爵家同士の結婚、この式だけは手抜き出来ないわ」


「解った。そのお金は必ず君に返すから」


強引にアレスとの婚約を決めた。


その後の事は両親に頭を下げて、ライト公爵家に話を持って行って、大変だった。

父は難色を示したが、母が味方になってくれた。


「いいじゃない。名だけは名門だから、これからライト公爵家の事業を成功させてお金を稼げばいいのよ」



二人の婚約が結ばれた頃、ロイドがレイラ王女と婚約したと伝え聞いた。


とある日、レイラ王女が、


「わたくし、ロイドと結婚することになったのよ。とても幸せだわ」


ロイドはにこやかに笑って、レイラ王女の機嫌を取っている。

王女は我儘で散財が酷いので、苦労しているとの事。


レイラ王女は我儘で出来が悪いと有名で、どこの家でも結婚したがらなかった。

強引に婚約解消でフリーになったロイドに王家は押し付けたのだろう。


ロイドは意味ありげにちらりとこちらを見たが、思い切り無視をした。

過去の恋なんていらない。



本当に今、幸せ……


デリチュラの糸で結婚式のドレスを作る。

アレスと共に店に行き、出来を確認する日々。


魔物を研究する会の会員達も皆、祝ってくれて、ドレスを着る結婚式を楽しみにしてくれている。


わたくしはアレスと共に歩むわ。


苦労するかもしれない。

でも、わたくしの選択に後悔はない。



アレスと共に出来を確認するドレスは真っ白に輝いていて、結婚式でドレスを着る日を楽しみにするディアーナであった。


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― 新着の感想 ―
珍しい物で高価なドレスだけど、キチンと王家に弁償して 貰ったのでしょうか。嘆くだけだったので、恋愛脳主人公 なのかな?と。 それと、アレスが主人公を好きだと言ってもいないのに、 主人公が結婚すると宣言…
公爵家と王家って大体が親戚だったりするからか、王女と主人公ってなんか似てるなと思いました。 感情で突っ走るところが特にw 視点を変えて王女側から見てみると、想い人と婚約した令嬢がドレス見せつけて煽って…
ドレスを見せたい……家に招待するのではいけなかったのでしょうか? 絶対に学園じゃないと駄目だったの? 王女が踏みつけなくても事故で台無しになる可能性だってあったので、ちょっと浅はかすぎかなぁと。 私に…
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