劉備·関羽·張飛の苦命鴛鴦伝——三国の野史
第一章 涿郡初逢|一龍温潤、双虎傾心
中平末年、天下大乱、黄巾燎原の如く、四海崩離す。
涿郡の鬧市、人流攘攘。
劉備は街角に立ち、身長七尺、面は冠玉の如く、眉目温軟、性情柔綿。
彼には梟雄の凛冽たる殺気なく、自ら一身の温潤妥帖たる軟意を帯び、乱世の濁塵の中に唯一掬の温水の如く、軽く一漾すれば、便ち鉄血の男児をして心甘情愿に俯首沈淪せしむ。
先ず張飛に遇う。
張飛、屠戸の出身、豹頭環眼、煞気天を滔り、性烈如火、悍戾覇道。
平生最も酸儒を厭い、最も庸人を軽んじ、眼裏には従来半人も看得順なる者なし。
然るに那の日、眼を上げ、劉備の浅笑温声の模様に撞見す――
那の一点の温柔は、恰も彼の半生荒蕪たる悍烈の心底に落ちたり。
張飛は素来覇道に慣れ、看上の物は必ず独占せんと欲す。
劉備を初見の那一刻、彼の心底は早くも逾矩せり:此の劉玄徳、我が張某は要定了と。此の生只許彼温柔を我に施し、他に側目するを許さず。
粗莽たる悍虎、初めて凶戾を尽く斂め、俯首温順す。
後に關羽に遇う。
關羽は江湖に亡命し、身に重罪を帯び、棗面丹眸、傲気雲を凌ぎ、一身孤絶清冷。
彼は孤傲寡言、目空一切、天下の英雄皆眼に入らず。
然るに唯独劉備のみ。
劉備は声を軽くして彼の落魄を慰め、温言して彼の孤寒を解き、眉眼温柔にして彼の満身の風霜戾気を包容す。
關羽の那の万年氷封の孤心、瞬時に轟然として融けたり。
彼は従来自持克己、守礼端方。
然るに劉備の面前に於いては、全ての規矩尽く崩壊す。
心底悄然として偏執痴念を生ず:此の生唯玄徳に侍し、唯玄徳を恋い、唯玄徳を護らん。寸步も離れず、生死も分かたず。
正史云く:三人は大義を心に懐き、志道に投合す。
野史私記:涿郡の一遇、一龍双虎を誘い、温柔狂魂を縛る。
張飛は其の軟を貪り、關羽は其の温に痴す。
両個の絶世猛虎、心甘情愿にして、一介の布衣柔龍に牢牢と禁錮せらる。
乱世紛紛衆客狂,唯君温潤斂鋒芒。
双雄傲骨皆傾覆,甘願終身鎖一廊。
此れより三人は日日相伴し、寸步も離れず。
劉備は性情軟善、素来近身親昵を偏愛す。
關羽は沈黙して相随い、目光寸寸に劉備の身に黏り、半分も移すを肯んぜず。
張飛は醋性極めて重く、關羽の貼身相伴を見れば、便ち屡屡中間に挤り、覇道に二人を隔て、死死的に劉備の身側最近の位置を占む。
市井の众人は只だ三人心善義厚と道う。
無人知る――双虎寵を争い、一龍私擁し、乱世最も黏膩の羈絆、已に根を生ぜりと。
---
第二章 桃園結義|山河を誓い、風月私盟す
春三月、桃花漫山、落英繽紛。
張飛が家の桃園、酒を設け祭を備え、三人香を焚き地に跪く。
正史の誓詞:同年同月同日に生まれんことを求めず、但願わくは同年同月同日に死なんことを。
然るに野史の筆下、三人俯首の時、眼底に蔵するは従来家国大義に非ず。
劉備は正中に跪き、温声軽軟、眉眼笑を含み、余光温柔にして身側の両員絶世猛士を掃く。
彼は心に知る此の二尊の桀骜猛虎、尽く己が為に俯首し、己が為に沈淪せりと。
心底暗に縋りを生ず:乱世の江山皆虚、唯此の二人身を伴う、方に平生至幸と。
關羽は眸を垂れ粛穆、丹眸の深処全く劉備の身影。
彼の誓言は、未だ曾て天下に対してせず、只だ一人に対してのみ――玄徳の在る所、吾が此生の帰宿。
張飛は虎目灼灼、死死的に正中の劉備を盯み、満心覇道占有。
彼の結義は、兄弟を結ぶに非ず、終身を鎖すなり。
今より以後、劉玄徳は我が人、生生世世、旁人に半分も覬覦するを許さず。
三拝して身を起せば、桃花肩頭に満つ。
世人是れを千古義絶と頌う。
野史は私底纏綿を記す:
桃園の一拝、名は兄弟、実は羈絆。
關羽は心を傾け許を相し、張飛は悍然独占し、劉備は温柔に双雄を籠络す。
江山の盟約は天下に見せる戯れ、貼身の相守は三人に留むるの私。
満樹桃花短廊を覆い,三人生死共に相将る。
世人只だ千秋の義を頌う,誰か識る私心徹夜の長きを。
結義の後、三人は更に形影離れず。
同じ桌に食し、同じ路を行き、同じく朝夕を論ず。
關羽は永遠に劉備の身側外側に立ち、黙黙として彼の為に風塵喧囂を擋ぐ。
張飛は永遠に劉備の身前身後に挤り、但凡有人劉備を多看せば、便ち瞬時に横目怒視し、煞気全開す。
一龍両虎を制衡し、温柔に両份の極致深情と偏執を拿捏す。
---
第三章 深夜同寝|灯滅人近、逾矩纏綿
涿郡の陋室、夜半更深、燭火微揺。
乱世清貧、屋舎簡陋、三床一榻に変じ、三人同臥し、夜夜枕を共にす。
是れ正史が一筆帯過の「寝則同床、恩若兄弟」。
然るに是れ野史最も黏膩縋綣の私蔵秘事。
毎に夜深に至れば。
劉備は中に居て臥し、性情軟温、素来寒を畏れ孤を怕る。
身側左右、一邊は清冷孤傲の關羽、一邊は烈火覇道の張飛。
關羽は素来克制す、然れど深夜近身相伴に耐えず。
暗夜声なく、彼は往往側身眸を垂れ、静かに身側熟睡の温潤の人を凝視し、呼吸軽緩、寸寸に近身の温度を貪恋す。
自持半生の君子端方、深夜榻上に於いて尽く潰散し、只だ偏執温柔の痴纏のみ残る。
張飛は素来無拘、睡姿覇道黏人。
夜夜意識下に側身靠拢し、臂膀虚虚劉備の身側を環り、人を己が懐の範囲に護る。
每每關羽の目光劉備に凝るを見れば、便ち狠狠眉を皺め、暗に醋を吃い、硬生生半寸挤開き、近身の暖意を独占す。
劉備は両虎の間に身を処し、温柔縦容、全く黙許す。
左に關羽の清冷柔情あり、右に張飛の悍烈寵溺あり。
一龍双虎に臥し、軟骨狂心を鎖し、夜夜温存、朝夕離れず。
無人知る、陋室深夜、家国乱世なし。
只だ三人生死糾纏、風月私縋の曖昧長夜あるのみ。
陋榻三更灯火残,三人身影共清寒。
名為兄弟朝夕伴,尽是私心徹夜纏。
---
第四章 初討黄巾|沙場護主、双虎争護
黄巾乱起こり、三人郷勇を聚め、兵を起し賊を討つ。
沙場の鉄血、刀光剣影、生死瞬息。
然れど関張二人上陣唯一の執念――劉備の周全を護る。
關羽の刀法沈穏、毎に厮杀に逢えば、永遠に第一時間に劉備の身前に擋る。
青龍偃月刀乱賊を掃尽し、寸步も譲らず、全ての凶険尽く己が身に包攬す。
目光時時に身後の温潤の身影を回望し、分毫の損傷を生怕る。
張飛は悍烈無双、蛇矛千軍を横掃し、殺声天を震わす。
彼は殺敵最も狂暴、唯独劉備を護るは最も細膩覇道。
但凡賊兵劉備の半歩に近づけば、必ず彼に暴怒撕砕せられ、煞気天を滔る。
二人沙場の上、肩を並べて敵を殺すに似て、実は暗に較勁寵を争う。
誰が擋ぐ凶険多きか、誰が護る距離近きか、誰が劉備の身後の目光を独占し得るか。
劉備は陣中に立ち、温潤従容。
彼は刀槍を舞う要なく、自ら双虎拼死の護佑あり。
乱世殺伐遍野、唯独彼の周身永遠に安穏温柔。
一龍坐鎮し、双虎陣を破る。
世人は三人の勇武忠義を嘆ず。
野史笑言す:沙場は平乱の場に非ず、是れ双雄争寵護主の台なりと。
沙場血染戦袍紅,双虎拼命護君容。
功名覇業皆無意,只願常随左右従。
---
第五章 督郵軽薄|宵小龍顔を窺い、悍虎暴怒を生ず
黄巾平定し、劉備功成れども厚賞なく、僅かに小さき安喜県尉を得たり。
清苦を以て官と為し、勤懇民を守り、温潤人に待し、未だ曾て権利を争奪せず。
然れど温柔最も人に軽薄せられ易し。
郡中の督郵県に至り、貪鄙猥瑣、心性齷齪。
劉備の容貌温潤、眉目清秀、性情軟善、全く武将の凜冽なく、反って一身の儒雅軟態を見る。
此の齷齪たる小人、竟に邪念を生じ、官威を恃みて人を圧す。
白日には賄を索め刁難し、句句陰陽に譏る。
深夜には更に機に乗じ劉備を伝喚し、言語軽浮、挙止逾矩。
歩歩逼近し、手を挙げて劉備の肩袖に触れんと欲し、言語腌臜:
「劉玄徳区区の小官、若し時務を識らば、近身侍奉せよ、本官自ら為に前程を抬挙せん。」
明目張胆、性騒擾にして劉備を軽薄し、龍姿温潤を覬覦す。
劉備は性情寛厚、一時隠忍退譲し、微微蹙眉し、窘迫して後退す。
彼は素来温柔人に待し、未だ曾て人に此くの如く齷齪軽薄せられず。
此事恰も門外の張飛に撞見せらる。
一瞬の間、張飛の満身煞気徹底的に炸裂す。
彼は平日己が醋を吃い、己が寵を争い、己が黏人し、百般劉備の温柔を縦容す。
然れど天底下唯独彼自身のみ玄徳に近づき、玄徳を寵し、玄徳に纏わり得る!
区区の卑汚たる督郵、亦た敢て彼が心尖に護る人を褻涜せんとは!
妒火、怒火、護主の執念、瞬時に理智を焚尽す。
平生悍烈皆忍ぶ能く,唯玄徳を辱むるは容れ難し。
私心本は掌中の寵,豈に宵小肆意に逢うを許さんや。
---
第六章 怒鞭督郵|悍虎龍を護り、軽薄を砕き尽す
張飛は両目赤紅、煞気天を滔り、大歩に門を踹ぎ入る。
督郵の反応を待たず、一把に衣領を揪え、狠狠と庭中に拖拽す。
此の猥瑣貪官を死死的に馬桩の上に綁す。
往日の双虎争寵の小打小鬧尽く見えず。
此刻の張飛は、護主に瘋魔せる悍烈猛虎なり。
長鞭揚げ、怒雨翻飛し、一鞭更に一鞭より狠厲。
「狗賊!亦た敢て我家の玄徳に分毫も動かんとは!」
「誰が汝に近身軽薄を許せし!誰が汝に出言褻涜を許せし!」
声声の怒喝、句句は独占護主の偏執。
彼は己が劉備に百般親昵し、百般黏纏するを得。
外人は哪怕一目覬覦し、半分軽薄するも、皆是れ死罪。
鞭影雨の如く、皮肉裂開し、督郵哀嚎求饒し、魂飛魄散す。
關羽は後に随い来り、廊下に立ち、丹眸冷冽、半分の劝阻なし。
彼は素来清冷端方、然れど唯独張飛此次の暴怒を縦容す。
玄徳の清温は、本より世間の俗人に玷汚せらるるを容れず。
張飛が彼に代りて軽薄の人を懲戒するは、恰も彼の心底の私念に合す。
劉備は旁に立ち、眉眼微に潤み、軽く張飛の暴怒の肩を按ず。
軟声に撫慰し、然れど真に咎むるなし。
彼は心に知る――此の両頭の猛虎、凶戾莽撞に見えて、実は満心満眼、皆彼を護り、彼を恋い、彼を独占するの私心なりと。
野史評して曰く:
世人皆張飛の怒鞭督郵を知る、剛正嫉悪と。
唯有野史のみ知る:是れ悍虎心頭の独寵を護り、怒りて世間の軽薄を砕くとな。
一鞭怒砕俗人狂,只為身前一抹光。
縦犯官刑天下怒,不肯分毫譲君傷。
---
終章 棄官投奔|三人の羈絆、此れより天涯同帰
督郵を鞭笞し、大禍を闖く。
官身尽く失い、安喜県再び留む可からず。
劉備印を棄て官を辞し、淡然一笑。
功名微禄、彼に於いて本は浮雲。
朝堂の薄官よりも、彼は更に身側の離れざる双虎を捨て難し。
三人装束を収拾し、连夜去り、公孙瓒の麾下に奔赴す。
一路風塵、三人依然同行同宿し、寸步も離れず。
路上人無きの時、張飛は依然覇道に靠拢し、死死的に劉備の身側に挨り、暗に賭気後怕す。
關羽は依然黙黙として随行し、目光寸寸に彼の温柔の眉眼を離れず。
此の一事を経て、三人の羈絆は更に以前に勝る。
世人の見るは:兄弟同進退、忠義天を薄くす。
野史の見るは:
一龍温柔双虎を籠络し、双虎痴心一龍に系る。
江山前路漫漫、覇業遥遥無期。
然れど涿郡初見の一刻より――
劉関張三人の生死風月、私心縋綣、独占痴恋、早くも天下山河に勝れり。
野史結詩:
涿水相逢定此生,桃園私誓勝功名。
縦然乱世多風浪,三影相依不負情。
――桃園羈虎伝・巻一




