4月 2日(雨)昼ごろ
雨。
自宅のガレージで、モペットをなんとなく拭いている。
別に、そんなに汚れてるわけでもないけど。
「今日も、雨だね」
「せやな」
「ワイの自慢のメタルブラックボディーや」
「ぴかぴかにしといてや」
「いや、グリーンなんだけど」
「ライトグリーン」
「なんだったら、ちょっと色褪せてるし……抹茶寄りだよ?」
「そんなジジくさいの、あかんで」
「かわいいじゃん」
「いや、ワイのマッチョなボディがやな」
「郵便局のバイク小さくした感じで、かわいいと思うけど……」
少し古いデザインだけど、
実はちょっと気に入っている。
「……まぁええわ」
「気分の問題や」
「自慢の高感度センサーで、わかるんじゃないの?」
「せやな。ばっちりやで」
「……。」
「そんな目しても、ええことないで」
「ほれ。しっかり拭いてや」
「ねぇ、ずっと喋ってるよね」
「電源オフとか、ないの?」
中古で買ったものだから、取扱説明書はない。
前の持ち主がいろいろ改造してるらしくて、型番もよく分からない。
「ワイは、知らんなーーー」
「……たぶん」
しらじらしい。
ふと、顔を上げる。
「あ、猫」
住宅地の小さな道路の向こう。
玄関の軒下に、黒い猫が座っている。
黒といっても、少し色あせた感じで。
ちょこん、というよりは。
ふてぶてしく、こちらを見ている。
目を細めて、じっと。
「かわいいね……猫」
「やな」
「しらんけど」
「なんだか、ペットショップの子より、こういう子の方が好きかも」
「飼われてるかもしれんやん」
「わかるよ」
「あんな顔、しないもん」
「なんや、辛辣やな」
「てか、手止まってるで」
「ほれ、そこ」
「白いロゴの横、ちょい汚れてるやろ」
ハンドルとシートの間。
普通のバイクなら、ガソリンタンクのあたり。
ここはバッテリーらしい。
抹茶色に、白いロゴ。
丸の中に、横線みたいなマーク。
なんとなく、余白が気になる。
その横に、少しだけ汚れ。
「これね」
すぐに拭き取る。
少しだけ、顔を上げる。
「ねこ、今夜どうするんだろうね」
「あの顔やったら、大丈夫やろ」




