EP 6
レッドカーペットと埼玉の熱気! 巨大わらじカツと極上の天然氷
千葉の海鮮BBQで満腹になった佐藤家のエスティマは、次なる目的地・埼玉県へと向かっていた。
「ジャパンカップって、ただ走るだけじゃないんだな。さっきの千葉のハマグリも、県の人たちがタダで振る舞ってくれたしよ」
助手席で爪楊枝をくわえながら、鷹人が感心したように呟く。
「ええ。町おこしの一環だから、各都道府県が『ウチの県が一番参加者をもてなした!』ってアピール合戦をしてるみたいね。……あ、見えてきたわよ。埼玉のチェックポイント!」
恵がハンドルを切り、埼玉県秩父市の指定された広場へと入っていく。
そこには、信長が思わず「うおっ!?」と声を上げるほどの光景が広がっていた。
『歓迎! ジャパンカップ参加者の皆様! 彩の国さいたまへようこそ!』
巨大な横断幕が掲げられ、地元のブラスバンドが軽快なマーチを演奏している。沿道には小旗を振る地元住民たちがズラリと並び、まるで豪華寝台列車『ななつ星』が駅に到着したかのような、熱烈な大歓迎モードだった。
「すっげえ……オリンピック選手にでもなった気分だ」
信長が窓を開けると、地元のおばちゃんたちが「よく来たねえ!」「お疲れ様!」と次々に声をかけてくる。
エスティマが所定の位置に停車すると、タスキをかけた地元の観光大使と、コック帽を被った料理人たちが満面の笑みで駆け寄ってきた。
「佐藤家の皆様、長旅お疲れ様です! 埼玉県のチェックポイントへようこそ!」
「おおっ、すげえ歓迎だな! ありがとよ!」
鷹人が照れくさそうに頭を掻きながら降りると、料理人たちがワゴンを押して登場した。
「まずは腹ごしらえです! 埼玉が誇る秩父名物、『わらじカツ丼』をご用意しました!」
ドンッ! とテーブルに置かれたのは、丼のフタが全く閉まっていない、規格外の巨大カツ丼だった。わらじのように巨大で薄めのトンカツが、甘辛い醤油ダレをたっぷりと吸い込み、ご飯の上に2枚も鎮座している。
「うおおおおっ!! 肉だあああ!!」
信長のテンションが限界を突破した。四番打者のスイングスピードで箸を割り、巨大なカツに齧り付く。
「美味えっ!! 衣に甘辛いタレが染み込んでて、肉がスッと噛み切れる! ご飯が無限に食えるぞこれ!!」
「ゆっくり食べなさいよ、信長。……あら、こっちの豚肉の味噌漬け焼きも美味しいわねえ。給食のメニューの参考にさせてもらおうかしら」
恵も、用意されたご当地グルメを堪能しながら、料理人たちと「このタレの隠し味は?」と主婦トーク(プロ目線)で盛り上がっている。
「ちーちゃん、あついー。おにく、いらないー」
しかし、夏の埼玉の盆地特有の厳しい暑さに、千姫だけは少しご機嫌斜めだった。チャイルドシートから降りたものの、額に汗をかいて鷹人の足にしがみついている。
「おおっと、お姫様にはこちらをご用意しております!」
観光大使のお姉さんがウインクすると、今度は涼しげなガラスの器が運ばれてきた。
こんもりと盛られた雪のような氷に、真っ赤なシロップがたっぷりとかかっている。
「長瀞名物、阿左美冷蔵の『天然氷のかき氷』です! シロップは埼玉産の完熟イチゴを使った特製イチゴミルク味ですよ!」
「いちごみるく!!!」
千姫の目が、パァァッ! と輝いた。
小さなスプーンで一口食べると、冬の間に自然の寒さだけでじっくり凍らせた天然氷が、口の中でフワッと一瞬で溶けて消える。
「ちーちゃん、これしゅき! つめたくて、あまーい!」
「ガッハッハ! よかったな、千姫! 暑さも吹っ飛ぶ美味さだ!」
家族全員が極上の「埼玉のおもてなし」に大満足していると、地元の人たちがエスティマのトランクに何やら運び込み始めた。
「佐藤さん、これ、お土産の『深谷ねぎ』と『狭山茶』です! 道中のスタミナ源にしてくださいね!」
「あらやだ、こんなにたくさん!? ありがとうございます! 今夜のキャンプ飯でさっそくネギ焼きにするわ!」
トランクには、参加賞という名目でどっさりと積まれた新鮮なご当地野菜の数々。
ライバルとの殺伐としたレースではなく、行く先々で地元の人々の温かさと美味しいご飯に触れる旅。
「最高だな、ジャパンカップ。次はどこだ?」
「ええと、次は群馬県ね。温泉とお肉が待ってるわよ!」
沿道の人々の盛大な拍手と「気をつけてねー!」という声援に見送られながら、佐藤家のエスティマは、トランクにネギの香りを少しだけ漂わせて、次なるおもてなしの地・群馬へと出発した。
ジャパンカップ・第5チェックポイント、埼玉県。
佐藤家、わらじカツと極上の天然氷のおもてなしに大感動でクリア!




