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運転歴20年以上!農道給食オカンがエスティマで日本横断! 〜佐藤家のご当地グルメ満期家族旅行〜  作者: 月神世一


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22/23

EP 12

立山の急勾配とオカンの「トルク維持」! 宝石・白エビのかんずり天丼

新潟の豪雨を「水たまり回避」で鮮やかにくぐり抜けた佐藤家のエスティマは、次なるチェックポイントである富山県へと入った。

富山湾沿いを走るルートから一転、コースは巨大な壁のようにそびえ立つ「立山連峰」のふもとを越える、連続した急勾配のワインディングロード(峠道)へと差し掛かった。

「うおっ、すっげえ上り坂! エンジンが唸ってるぜ!」

後部座席で信長が声を上げる。

ここはパワーと車重のバランスが問われる難所だ。

前方を走るスポーツカー勢は、高回転型のエンジン特性が仇となり、低速の急勾配ヘアピンカーブで失速。慌ててギアを落としてはタイヤを空転させ、最悪の場合はエンジンをオーバーヒート気味にさせてハザードを焚いていた。

『佐藤さん、キャンピングカーが重すぎて、坂を登りきれませんわ!』

無線から西園寺夫妻の悲鳴が聞こえる。

「あらあら。みんな、アクセルを踏むことばっかり考えてるからよ」

恵は涼しい顔で、エスティマのシフトレバーをマニュアルモード(手動変速)に切り替えた。

「鷹人さん、ちょっと車体のバランス見ててね。信長、重たい荷物は少し前に寄せて」

「おう! 荷重移動だな!」

恵の目は、タコメーター(エンジンの回転数)に一点集中していた。

「給食センターの4トントラックに、500リットルのスープと食器を満載して山の中学校に向かう時。アクセルを踏みすぎればスープが波打ち、回転数が落ちればエンストする。一番力が出る『トルクバンド(おいしい回転数)』をキープし続けるのが、重い車を坂道で走らせる鉄則よ!」

ブゥゥゥゥゥン……!

恵の足先がミリ単位でアクセルを調整し、エンジン回転数を常に最もトルクが太い「3000回転」にピタリと張り付かせる。

ブレーキは極力使わず、コーナーの手前では絶妙なエンジンブレーキで減速。車体の重さを推進力へと変換する、まさに『オカンの満載トラック・ヒルクライム』だった。

エスティマは、まるでエスカレーターに乗っているかのような滑らかさで、苦戦するスポーツカーたちを次々とパスしていく。

「お父さん、佐藤さんの車のラインをトレース(真似)するんです!」

後ろを走る西園寺の旦那さんも、恵の走りを真似て一定のペースを保つことで、なんとか巨大なキャンピングカーで難所をクリアすることができた。

「いやあ、おばちゃん、また助けられたぜ!」

「エスティマで登坂車線を使わないなんて、バケモンかよ……」

峠を越えた休憩所で、スポーツカーの若者たちがすっかり恵のファンボーイと化して手を振っていた。

急勾配を制した佐藤家は、富山湾を一望できる第22チェックポイント・氷見ひみの漁港へと到着した。

「ようこそ富山へ! 山越えお疲れ様! さあ、富山湾の宝石で腹ごしらえだ!」

ねじり鉢巻の漁師たちが用意してくれたのは、透き通るような美しい小さなエビ、『白エビ』だった。

ジュワァァァァァッ!!

特設の巨大な鍋で、大量の白エビと玉ねぎが、サクサクの『かき揚げ』にされていく。

香ばしい油の匂いとエビの香りが広場を包み込み、信長の胃袋がグゥゥと盛大に鳴った。

「ちょっと待って! そのかき揚げ丼のタレ、これを入れさせて!」

恵がトランクから持ってきたのは、新潟県でもらった雪国の辛味調味料『かんずり』だ。唐辛子、柚子、麹を雪に晒して発酵させた、奥深い辛味と爽やかな香りが特徴の逸品である。

恵は、甘辛い天丼のタレに、この『かんずり』をたっぷりと溶かし込んだ。

「完成! 恵特製『富山白エビのサクサクかき揚げ・かんずり柚子ダレ天丼』よ!」

「うおおおおおっ!! 匂いだけで唾液が止まらねえ!!」

信長が、丼からはみ出るほどの巨大な白エビのかき揚げにガブリと噛み付いた。

「サクッ! バリィッ!! ……んんんんんんんっっっ!!!」

「白エビの甘みがハンパねえ! 殻の香ばしさと身の甘さが口の中で爆発する! なのに、天丼のタレに溶け込んだ『かんずり』の柚子の香りとピリッとした辛さが、油のくどさを完全に消し去ってくれる! これ、どんぶり三杯は余裕でいけるぞ!!」

「ガッハッハ! 麹の旨味がタレの深みを増してるな! こりゃあビールが……いや、冷たいお茶が止まらん!」

鷹人も豪快に天丼をかき込み、西園寺夫妻も「なんと上品かつ鮮烈なお味……!」と夢中で箸を進めている。

「ちーちゃんは、これー!」

辛いタレが食べられない千姫と、お腹いっぱいの大人たちの食後のデザートとして、恵は新潟でもらった『笹だんご』を網の上で軽く炙り始めた。

「あむっ……! ん〜〜〜っ! おだんご、あったかい! あまーい!」

炙ることで笹の香りが極限まで引き出され、中のよもぎ餅はトロトロに、あんこは熱々に。千姫は冷たい牛乳と一緒に、ホクホク顔で笹だんごを頬張っていた。

ピロンッ♪

『佐藤家:急勾配における完璧なトルク管理エコドライブと、ご当地コラボ飯。おもてなしポイント+1200pt! 暫定1位をさらに引き離す!』

「佐藤さん、これ富山からの手土産です! 伝統の『氷見ひみうどん』と、可愛い『渦巻きかまぼこ』! 次の石川県でも美味いもん食べてくださいね!」

トランクに富山の特産品を積み込み、お腹もポイントもパンパンになった佐藤家。

立山連峰を越え、富山湾の海の幸を堪能したエスティマは、次なるチェックポイント、加賀百万石の城下町・石川県へと向けて走り出した!

ジャパンカップ・第22チェックポイント、富山県。

佐藤家、オカンのトルク維持ヒルクライムと、白エビのかんずり天丼で、無事クリア!!

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