EP 9
本州帰還! 立ち往生した山車と、親方の掛け声! 極み出汁のきりたんぽ鍋
「うおおおっ! 本州だ! 帰ってきたぜ!」
北海道の釧路港からフェリーに揺られること十数時間。佐藤家のエスティマは、再び本州の大地——秋田県・秋田港へと降り立った。
広大な北の大地を完全制覇し、現在ジャパンカップの暫定ランキングトップを独走中の佐藤家。西園寺夫妻のキャンピングカーも、完全にエスティマの金魚のフン……もとい、心強いファンとして後ろにピタリとついている。
第19のチェックポイントに指定されているのは、秋田県内陸部のとある歴史ある村だった。
エスティマが山あいの村に到着すると、村中から威勢の良いお囃子の音と、太鼓の音が鳴り響いていた。
「おおっ、祭りか! こりゃあ縁起がいいぜ!」
根っからの祭り好きである鷹人が、窓から身を乗り出して目を輝かせる。
しかし、村の中心部にある広場へ近づくと、お囃子の音がピタリと止み、不穏な空気が漂っていた。
「どうしたんだべ! まったく動かねえ!」
「昨日の雨で地面がぬかるんでるんだ! 引っ張れ、引っ張れぇ!」
見れば、高さ数メートルにも及ぶ巨大で豪華な『山車』の車輪が、広場の深いぬかるみにガッチリとハマり込み、完全に立ち往生してしまっていた。
地元の若衆たちが必死に綱を引いているが、巨大な山車はビクともしない。このままでは祭りのメインイベントである『町内巡行』が中止になってしまう。
「あちゃー……完全にハマっちまってるな」
エスティマを停めた鷹人が、腕組みをして山車を見上げる。
「運営からのミッションはどうなってるの?」
恵がナビの画面を確認するが、本来ここで行われるはずだった「郷土料理のおもてなしミッション」も、村人たちが山車にかかりきりになっていて完全にストップしていた。
「親父、手伝おうぜ! 俺、力なら有り余ってるし!」
信長がウズウズした様子でジャージの袖をまくり上げる。
「おう! 現場の遅れは職人の恥だ! 行くぞ信長!!」
鷹人はエスティマから愛用の巨大な木槌と、木材の端材(バール代わり)を持ち出すと、山車の周りで困り果てている村の長老たちに声をかけた。
「じっちゃん! ちょっと手伝わせてもらうぜ!」
「なんだあんたたちは? ジャパンカップの参加者か? ありがてえが、素人の力じゃどうにも……」
「素人じゃねえ! 俺は土建屋の親方だ! 重たいモンを動かすのは本職よ!」
鷹人は素早くぬかるみの状態を確認すると、持ってきた木材を車輪の下に滑り込ませ、テコの原理で山車の重心をわずかに浮かせた。
「よし、車輪の底に石を噛ませた! あとはタイミングを合わせて一気に引くだけだ!」
鷹人は山車の先頭に立つと、ねじり鉢巻を締め直し、肺の底から凄まじい大声を張り上げた。
「いいか若衆!! 俺の掛け声に合わせろ! バラバラに引いても力は逃げる! 一点にパワーを集中させるんだ!!」
親方の圧倒的な声量とオーラに、村の若衆たちが思わず「お、おうっ!」と背筋を伸ばす。
その若衆たちの先頭に、身長180センチを超える筋肉ダルマ・四番打者の信長がガシィッ! と綱を握りしめて陣取った。
「行くぞ!! そぉーーーれっ!!」
「「「うおおおおおおっっっ!!!」」」
鷹人の絶妙な掛け声に合わせて、信長の凄まじい筋力と、村人たちの力が完全に一つになる。
ミシミシミシッ……!
先ほどまでビクともしなかった数トンの巨大な山車が、泥を跳ね上げながら動き始めた。
「まだまだァ!! 気を抜くな!! そぉーーーれっ!!」
「「「うおおおおおおっっっ!!!」」」
ズポォォォンッ!!
という音と共に、見事に山車がぬかるみから抜け出し、乾いたアスファルトの上へと躍り出た。
「「「おおおおおおおおっっっ!!!」」」
村中から、地響きのような大歓声と拍手が沸き起こる。
「兄ちゃん、すっげえ馬鹿力だな! 助かったべ!!」
「親方さんの声、鳥肌が立ったよ! さすがプロだべさ!」
泥だらけになった鷹人と信長が、村の若衆たちと熱いハイタッチを交わす。
西園寺夫妻もキャンピングカーの窓から「ブラボー! 佐藤のご主人、最高にクールです!」とハンカチを振って涙ぐんでいた。
「いやあ、助かった! これで無事に祭りが続けられる! ジャパンカップのおもてなし、たっぷりさせてもらうべ!」
長老が深々と頭を下げ、村のお母さんたちが特設の鍋に火を入れた。
「秋田の心、『きりたんぽ鍋』だ! 地鶏のスープがたっぷり染み込んでるど!」
グツグツと煮え立つ大鍋。そこに、すり潰したお米を棒に巻き付けて焼いた『きりたんぽ』と、たっぷりのセリ、ネギ、鶏肉が投入される。
「ちょっと待って! その鍋に、北海道のパワーを足させて!」
恵がトランクから持ってきたのは、前回の釧路でもらった『極上コンブ』だ。
恵はコンロでサッとコンブを炙って香りを出し、それをきりたんぽ鍋のスープの中へと豪快に投入した。
「完成! 恵特製『北の大地の極上コンブと、秋田地鶏の最強きりたんぽ鍋』よ!」
「うおおおおおっ!!」
信長が、スープをたっぷり吸って熱々のきりたんぽを口に放り込む。
「ハフッ! ハフッ! んんんんんんっっっ!! 鶏の脂の旨味と、釧路のコンブの凄まじい出汁が、きりたんぽの米の粒一つ一つに染み込んでる!! 噛めば噛むほどジュワッとスープが溢れてきて、止まんねええ!!」
「ガッハッハ! 汗をかいた後の塩分補給に最高だ! セリのシャキシャキ感もたまんねえな!」
鷹人と信長が、祭り囃子をBGMに何杯も鍋をおかわりしていく。
「ちーちゃんは、これー!」
熱い鍋が苦手な千姫の前には、釧路でもらった『阿寒湖のマリモ(ゼリー)』に、秋田の甘いリンゴ果汁を合わせた特製『マリモのリンゴゼリー・ポンチ』が用意された。
「あむっ……! ん〜〜〜っ! まりもさん、ぷるぷるー! りんご、あまーい! ちーちゃん、これしゅき!」
緑色の丸いゼリーをスプーンでつついて遊んだ後、嬉しそうに食べる千姫。その姿に、村のお母さんたちも「めんこいごどー!」とデレデレになっていた。
ピロンッ♪
『佐藤家:地域伝統行事の存続における絶大な貢献。特別おもてなしポイント+2000pt! 第2章のクリア条件を完全に満たし、独走状態!』
「佐藤さん、これ秋田からの手土産だ! 『稲庭うどん』と『いぶりがっこ』だ! 腹が減ったら食ってけろ!」
トランクに新たな食材と、秋田の人々の熱い感謝を積み込んで。
佐藤家のエスティマは、第2章の最終ゴール地点である山形県へと向けて、意気揚々と走り出した!
ジャパンカップ・第19チェックポイント、秋田県。
佐藤家、親方と四番打者の物理無双と、極み出汁のきりたんぽ鍋で、無事クリア!!




