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運転歴20年以上!農道給食オカンがエスティマで日本横断! 〜佐藤家のご当地グルメ満期家族旅行〜  作者: 月神世一


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18/21

EP 8

霧の釧路とオカン・センサー! 鹿の神回避と最強・勝手丼

富良野の美しい丘に別れを告げ、究極の苺ミルクでエネルギーをチャージした佐藤家のエスティマは、北海道東部の霧の街、釧路くしろへと向かっていた。

日が沈みかける頃、エスティマの窓の外は一変した。

太平洋から這い上がってきた真っ白な海霧うみぎりが、あっという間に道路を包み込んだのだ。

「うわぁ……マジで何も見えねえ! 映画のサイレントヒルみたいだ!」

後部座席で信長が窓の外を見て顔を引きつらせる。

ヘッドライトの光が霧に反射し、視界はわずか数メートル。ハザードランプを点滅させてノロノロと走る他の参加車両が、幽霊のように現れては消えていく。

「佐藤さん! これ以上進むのは危険ですわ! 一度、どこかに車を停めませんか!?」

西園寺夫妻のキャンピングカーから無線で焦った声が届く。最新のレーダーを持つ高級車ですら、この濃霧の前では手も足も出ない。

「あら、西園寺さん。大丈夫よ。私、こういう道、得意だから」

恵はハンドルを握りながら、クスクスと笑った。

その目は、いつもの優しいオカンの目ではない。給食センターの朝、豪雨と濃霧の中で細い農道を走り、通学路の自転車を避けてきた、百戦錬磨のドライバーの目だった。

「恵のオカン・センサーが発動したな。現場の危険予知活動(KY活動)と同じだ。母さん、頼んだぞ!」

「ええ。千姫も苺ミルク飲んで寝ちゃったし、起こさないように滑らかに走るわね」

恵はアクセルを一定に保ったまま、まるで霧の中に見えない道が見えているかのように、滑らかにエスティマを走らせる。

20年間、毎日の送迎で培われた『第六感』。道路の白線のわずかな擦れや、アスファルトの振動の違いだけで、恵はカーブの角度と速度を完璧に読み切っていた。

その時だ。

「……ッ!! 左から飛び出してくるわ!」

恵がそう叫んだ瞬間。

霧の中から突然、巨大なツノを持った『エゾシカ』のオスが、道路のど真ん中に飛び出してきた。

助手席の鷹人が「うわっ!」と声を上げ、西園寺夫妻が無線で悲鳴を上げる。

普通のドライバーなら、パニックブレーキを踏んでスリップするか、激突するかの二択しかない絶望的な状況。

だが、恵の動きは驚くほど冷静だった。

恵はブレーキを踏まず、逆にアクセルをほんの少し踏み込んで車体の体勢を安定させると、最小限のハンドル操作でエスティマをスッと右へとスライドさせた。

エスティマのバンパーと、エゾシカの巨体が、わずか数センチですれ違う。

「うおおおおおっっ!! 神回避!!」

信長が絶叫する。

驚くべきことに、恵はその直後、何事もなかったかのように滑らかに左へハンドルを戻し、霧の中へと再び消えていったのだ。

後部座席のチャイルドシートでは、千姫が一度も目を覚ますことなく、すやすやと眠り続けている。

車体のロール(傾き)を極限まで抑えた、まさに『寸胴鍋のスープをこぼさない』神ドラテクの極致だった。

「あ、あの……佐藤の奥様……? あなたは一体……?」

無線から聞こえる西園寺の旦那さんの声は、恐怖すら通り越して、完全に恵を崇拝していた。

恵の神回避により、佐藤家と西園寺夫妻は、他の参加者が立ち往生する中でぶっちぎりのトップで釧路市内に到着。

向かったのは、第18チェックポイントである釧路の台所、『和商市場わしょういちば』だ。

「ようこそ釧路へ! 霧の中の神回避、運営から聞いてるべ! さあ、冷えた体を釧路名物『勝手丼』で温めてけろ!」

市場の中に一歩足を踏み入れると、そこは海鮮のパラダイスだった。

佐藤家はまず、ご飯が盛られた丼を受け取る。そして、市場内の鮮魚店を回り、自分の好きな具材を好きなだけ乗せていくのだ。

「うおおおおおっ!! 俺の四番打者の夢が、今ここで叶う!!」

信長が、丼を持って鮮魚店へ猛ダッシュする。

「おっちゃん、大トロ! あと中トロ! サーモンと、このブリッブリのボタンエビも乗せて! ……ああっ、いくらも! いくらも山盛りぶっ掛けて!!」

信長の丼は、あっという間にご飯が見えなくなるほどの海鮮のタワーと化した。

鹰人も、脂の乗った釧路産のサンマやカニ、ウニをこれでもかと乗せ、贅沢極まりない自分だけの丼を作り上げる。

「ちょっと待って! 最高の海鮮丼に、さらに極上のデザートを添えさせて!」

恵がエスティマから持ってきたのは、富良野でもらっていた『ふらのメロン』だ。

恵はメロンを素早く半分に割ると、種をくり抜き、そこに釧路の冷たい牛乳をたっぷりと注ぎ入れた。

「完成! 恵特製『和商海鮮タワー勝手丼』と、『ふらのメロンの丸ごと牛乳パンチ』よ!」

「いただきまーす!!」

信長が、大トロといくらが山盛りの丼をかき込む。

「んんんんんんっっっ!!! 釧路の海の幸が口の中で弾ける! マグロが溶けて、いくらがプチプチ弾けて……最高に美味え!! 霧の中の恐怖が一瞬で吹き飛んだぜ!!」

「ガッハッハ! この富良野メロンの牛乳パンチも最高だ! メロンの甘みと釧路の濃厚な牛乳が合わさって、冷たくてサッパリする!」

鷹人が自分の勝手丼を平らげ、メロン牛乳を豪快に飲み干す。

「ちーちゃんは、これー!」

生魚が食べられない千姫の前には、恵が市場の魚屋さんに頼んで作ってもらった『釧路産カニのほぐし身と、甘い玉子焼きの特製・お子様勝手丼』が用意された。

「あむっ……! ん~~~っ! カニさん、ふわふわー! たまご、あまーい! ちーちゃん、これしゅき!」

小さな口で幸せそうに頬張る千姫の姿に、西園寺夫妻も「なんと尊い……!」と手を合わせ、自分たちの上品な海鮮丼を堪能していた。

ピロンッ♪

『佐藤家:濃霧における神がかり的な回避行動と、地元食材を活かした最高のおもてなし。特別おもてなしポイント+2000pt! 圧倒的スコアで北海道ステージを完全制覇!』

「っしゃあああああ!! 北海道ぶっちぎりの1位だ!!」

広大な北の大地を、神ドラテクと胃袋で完全に制圧した佐藤家。

「佐藤さん、見事な食べっぷりだべ! これ、釧路からの手土産だ! 伝統の『極上コンブ』と、名物の『阿寒湖のマリモ(ゼリー)』! 本州に帰っても美味いもん作ってけろ!」

トランクに釧路の極上食材を積み込み、佐藤家のエスティマは、次なるステージへと向かう。

北海道から本州へ帰還するフェリーを待つのは、北の大地の想いをエスティマに詰め込んだ、佐藤家の新たな旅の始まりだった。

佐藤家、霧のエゾシカ回避と勝手丼の海鮮飯テロで、圧倒的勝利にてクリア!!

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