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運転歴20年以上!農道給食オカンがエスティマで日本横断! 〜佐藤家のご当地グルメ満期家族旅行〜  作者: 月神世一


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EP 6

氷点下の夜と親方のガムテープ修理! 極上ジンギスカンと、罪深きじゃがバター

函館から長距離ドライブを制し、佐藤家のエスティマは札幌市郊外にある広大なオートキャンプ場へと到着した。

今日のジャパンカップのミッションは「北海道の大自然でのキャンプ泊」。

しかし、季節は春とはいえ、ここは北の大地。日が沈むと同時に急激に気温が下がり始め、吐く息が真っ白に染まるほどの冷え込みとなっていた。

「う〜、さっむ! 北海道の夜、なめてたぜ……」

信長がジャージのジッパーを首まで上げ、身をすくめる。

鷹人と恵は手慣れた様子で防寒着を着込み、エスティマの車内をフラットにして、冬用の寝袋を広げて快適な車中泊の準備を整えていた。

その時だ。

キャンプ場の奥に停まっていた、西園寺夫妻の超高級キャンピングカーから、慌てた様子の旦那さんが飛び出してきた。

「た、大変だ! 暖房が……FFヒーターが動かない!」

「ええっ!? 西園寺さん、どうしたんですか!」

恵が駆け寄ると、西園寺夫妻は分厚い毛布にくるまりながらガタガタと震えていた。

数千万円もする海外製の最新キャンピングカーだが、どうやら悪路の振動でヒーターの配管か基盤にトラブルが起きたらしい。外の気温はすでに氷点下近く。このままでは凍死の危険すらある。

「運営に連絡しましたが、修理業者が来るのは明日の朝になると……」

「そんな! お父さん、私もう足の感覚が……」

夫人が青ざめた顔で震えるのを見て、鷹人がエスティマから愛用の工具箱を提げてドスドスと歩み寄ってきた。

「おうおう、現場の冷え込みは命取りだぞ! ちょっと失礼して、床下を見せてもらうぜ!」

「さ、佐藤のご主人! しかし、この車は特殊な構造で……」

「機械なんてのはな、熱を出して風を送る。基本はどれも同じだ!」

鷹人は作業着の袖をまくり、キャンピングカーの床下点検口をパカッと開けた。ヘッドライトで照らすと、温風を車内に送るメインダクトのジョイント部分が完全に外れ、熱が外に逃げてしまっているのが見えた。

「なるほど、悪路の振動で抜け落ちたか。おまけにプラスチックの留め具が割れちまってるな」

鷹人はニヤリと笑うと、工具箱から『耐熱アルミテープ』と『強力ガムテープ』、そして太めの『番線(針金)』を取り出した。

「信長、そこ押さえてろ! 恵、ちょっと排気口の周りを綺麗にしてくれ!」

「おう!」

「はいはい、任せて」

鷹人は外れたダクトを力技で元の位置にねじ込むと、番線をペンチで器用に締め上げてガッチリと固定。さらにその上から耐熱アルミテープを何重にも巻きつけ、最後に強力ガムテープで隙間を完全に塞ぎ切った。

その手際の良さは、まさに熟練の土建屋の親方。迷いが一切ない。

「よし! エンジンかけてヒーターのスイッチ入れてみろ!」

西園寺の旦那さんが震える手でスイッチを入れる。

ブゥゥゥン……!

ゴォォォォォッ!!

数秒後、キャンピングカーの吹き出し口から、勢いよく熱風が吹き出し始めた。

「おおおおおっ!! 暖か〜〜い!!」

「直った……! 佐藤さん、あなたは魔法使いですか!?」

「ガッハッハ! 魔法じゃねえ、ただの『現場の応急処置』だ! これで朝までは余裕で持つぜ!」

工具箱をポンッと叩く鷹人の姿は、数千万の車をホームセンターの道具でねじ伏せた、最高に格好良い大黒柱だった。

「命の恩人です! さあ、冷えた体を温めるために、我々が用意した最高の夕食をご一緒しましょう!」

完全に佐藤家を崇拝しきっている西園寺夫妻が、キャンピングカーの備え付けグリルに火を入れた。

ジュウウウウウッ!!

鉄板の上に乗せられたのは、北海道名物『サフォーク種(顔の黒い羊)』の、分厚い最高級・生ラム肉だ。

「うおおおおっ! ジンギスカン! 羊の肉って臭いのかと思ってたけど、すっげえ良い匂いだ!」

信長がヨダレを垂らす。

「ちょっと待って! その鉄板の端っこ、使わせて!」

恵がエスティマから持ってきたのは、函館でもらった『男爵いも』と『トラピストバター』だ。

恵はあらかじめ車内でホクホクに茹でておいた男爵いもを半分に割り、ジンギスカン鍋の縁、羊の肉汁が流れ落ちる一番美味しい溝の部分にズラリと並べた。

そして、そのアツアツのじゃがいもの上に、黄金色に輝く極上トラピストバターを惜しげもなくドカン! と乗せる。

「完成! 恵特製『羊の旨味を全部吸い込んだ、罪深きじゃがバター・ジンギスカン』よ!」

とろけ出したバターが鉄板でジュワァァと泡立ち、羊肉の香ばしい脂と混ざり合って、暴力的なまでの良い匂いを周囲に撒き散らす。

「いただきまーす!!」

信長が、分厚いラム肉と、バターまみれのじゃがいもを一緒に口に放り込んだ。

「ハフッ、ハフッ……! んんんんんんんっっっ!!」

信長が目をひん剥いて天を仰ぐ。

「ラム肉がめちゃくちゃ柔らかくて甘い! そこに、羊の脂と濃厚なバターを限界まで吸い込んだ男爵いもが、ホクホクに崩れて肉汁と絡み合う! なんだこれ、悪魔の食い物か!! 麦飯が無限に食えるぞ!!」

「うむ! このトラピストバターのコクが、ラム肉の野性味をまろやかに包み込んでいる! 素晴らしいアレンジだ!」

鷹人と西園寺の旦那さんも、ビールを片手に箸が止まらない。

「ちーちゃんは、これー!」

辛いタレが食べられない千姫には、ラム肉の代わりに、バターをたっぷり吸った熱々の男爵いもをマッシュして、少しだけお砂糖をかけた特製『あまじょっぱポテト』だ。

「あむっ……! ん〜〜〜っ! おイモ、ほくほくー! バター、とろとろー! ちーちゃん、おイモしゅきー!」

モグモグと幸せそうに頬張る千姫の姿に、西園寺夫人もすっかり癒やされて寒さを忘れていた。

ピロンッ♪

『佐藤家:他参加者の重大な車両トラブルを解決。おもてなし・人命救助特別ポイント+1500pt! 圧倒的スコアで暫定1位を独走中!』

「ガッハッハ! 腹も膨れたし、車内もポカポカだ! 明日も気合い入れて走るぞ!」

北の大地の寒さも、佐藤家の家族の温かさとDIYスキル、そして極上グルメの前には敵わなかった。

西園寺夫妻という最強のスポンサー(?)を引き連れ、佐藤家のエスティマは次なるチェックポイント、美しい花畑が広がる富良野へと向かっていく!

ジャパンカップ・第16チェックポイント、北海道(札幌)。

佐藤家、親方のガムテープ修理と、罪深きじゃがバタージンギスカンで、無事クリア!!

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