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運転歴20年以上!農道給食オカンがエスティマで日本横断! 〜佐藤家のご当地グルメ満期家族旅行〜  作者: 月神世一


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EP 5

試される大地とオカンの「カルガモ走行」! 函館の活イカ踊り食いとりんご醤油

「うおおおおおっ! でっけえええええ!!」

フェリーから函館港へと降り立った瞬間、信長がエスティマの窓から身を乗り出して叫んだ。

見渡す限りの青い空と、どこまでも真っ直ぐに伸びる道路。

本州とは明らかにスケールが違う「北の大地・北海道」の空気を胸いっぱいに吸い込み、佐藤家はいよいよ第15チェックポイントである函館朝市へと向けて走り出した。

「おばちゃーん! スープのお礼はまた後でな! 先に行くぜ!」

ブァァァァァンッ!!

フェリーで恵のスープに救われたスポーツカー勢が、手を振りながら猛スピードでエスティマを追い抜いていく。彼らの車はスピードこそ出るが、燃費は最悪だ。

「あらあら、元気になったのは良いけど、あんなに飛ばして大丈夫かしら……」

カーナビの広域マップを確認していた恵が、ふと眉をひそめた。

「どうした、母さん?」

「この先のルート、次のガソリンスタンドまで100キロ以上ないのよ。うちのエスティマもガソリンが半分切ってるから、普通に走ったらギリギリね」

北海道の恐ろしさ、それは「町と町の間が果てしなく遠い」ことである。

案の定、30分も走ると、道端でハザードランプを点滅させてノロノロと走る先ほどのスポーツカー勢の姿が見えてきた。

「あっ! おばちゃんの車だ!」

「ヤバい、調子に乗って飛ばしすぎた……このままだとガス欠で止まっちまう……!」

青ざめるレーサーたちを横目に、恵の目の色が「家計を握る主婦」のそれへとスッと切り替わった。

「仕方ないわね。燃費を極限まで節約する『究極のエコドライブ』で行くわよ。鷹人さん、前の大型トラックとの車間距離、見ててちょうだい」

「おう! 任せとけ!」

恵は前方を走っていた地元の巨大な長距離輸送トラックの後ろにピタリとつけ、アクセルを一定に保った。

「母ちゃん、そんなにトラックに近づいてどうすんだよ?」

「ふふっ。信長、自転車に乗ってる時、強い向かい風だと疲れるでしょ? 車も同じなの。こうやって大きな車が風を切り裂いた直後の『真空地帯』に入り込めば、空気抵抗がゼロになって、ほとんどアクセルを踏まなくても進むのよ」

「ス、スリップストリーム……! プロのレーサーがサーキットで使う大技を、公道で完璧にやりのけてるだと!?」

ノロノロ運転のスポーツカーのドライバーが、エスティマの滑らかな走りに驚愕の声を上げた。

「名付けて『オカンのカルガモ走行』よ。これでガソリン消費はいつもの半分以下ね!」

恵の絶妙なアクセルワークと、鷹人の安全確認による完璧な連携プレイ。

燃費の悪化という「試される大地」の洗礼をあっさりとクリアし、エスティマはガソリンに余裕を残したまま、見事トップ集団として函館朝市へと滑り込んだ。

「ようこそ函館へ! さあ、北海道最初のミッションは、朝市名物『活イカの踊り食い』だべさ!」

威勢の良い掛け声とともに、大きな水槽から生きたばかりの透明なイカがすくい上げられる。

板前さんが目にも止まらぬ包丁さばきでイカを細切りにし、皿の上に盛り付ける。しかし、イカのゲソ(足)はまだウネウネと元気に動いていた。

「うおおっ! マジで動いてる! これを食うのか!?」

「信長、ちょっと待って! 醤油の前に、これを使わせて!」

恵がクーラーボックスから取り出したのは、青森県でもらっていた『青森りんご』だ。

恵は持参のおろし金でリンゴを素早くすりおろし、そこに生姜と、函館特製の昆布醤油を混ぜ合わせた。

「完成! 恵特製『フルーティーりんご生姜醤油』よ! これをゲソにかけてみて!」

信長が言われた通り、特製醤油をゲソに垂らす。

その瞬間、醤油の塩分に反応してゲソがバチンッ!と大きく跳ね上がった。

「うおっ! 暴れんな! ……いただきまーす!!」

信長が動くゲソを箸で掴み、豪快に口に放り込む。

「コリッコリだ!! 噛んだ瞬間、イカの濃厚な甘みがブワッと広がる! そこにリンゴの爽やかな酸味と生姜の香りが合わさって、いくらでも食えるぞこれ!! 普通の醤油より、リンゴの甘みがイカの旨さを10倍に引き出してる!!」

「ガッハッハ! 活きの良さとフルーティーさの相乗効果だな!」

鷹人も身を乗り出し、透明なイカ刺しをたっぷりのりんご醤油に絡めてかき込む。

「ちーちゃんは、これー!」

生きたイカに少しビビッて鷹人の背中に隠れていた千姫には、函館の朝市で売られていた『北海道産・極濃ミルクソフトクリーム』に、すりおろした青森りんごの果肉をたっぷり乗せた特製デザートが用意された。

「あむっ……! ん〜〜〜っ! あまーい! しゃりしゃりりんごと、つめたいミルク! ちーちゃん、ほっかいどう、だいしゅきー!」

口の周りを真っ白にしながら、天使の笑顔を振りまく千姫。AIカメラの癒やしポイントは、北海道上陸直後からすでに限界突破していた。

「佐藤さん、素晴らしい走りっぷりと食べっぷりだ! これ、北海道からの最初の手土産『男爵いも』と『手作りの極上トラピストバター』だ! 持ってけ!」

見事に青森のリンゴを使い切り、新たに北海道の『じゃがいも』と『バター』という最強の組み合わせを手に入れた佐藤家。

広大な大地を制したエスティマは、次なる目的地・札幌へと向かって、意気揚々と走り出した。

ジャパンカップ・第15チェックポイント、北海道(函館)。

佐藤家、オカンのスリップストリームと、活イカのりんご醤油踊り食いで、無事クリア!!

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