EP 2
わんこそば大決戦! 親方の即席DIYレーンと、三陸わかめの「味変」スープ
宮城の牛タンで英気を養い、仙台を出発する際にお土産として『三陸産の極上生わかめ』をトランクに積み込んだエスティマは、次なるチェックポイント・岩手県へと突入した。
「腹減ったー……」
「ちょっと信長、あんた数時間前に特大牛タン食べたばっかりじゃないの」
後部座席で腹の虫を鳴らす信長に、恵が呆れたようにツッコミを入れる。
しかし、育ち盛りの高校球児の胃袋は底なしだ。ましてや、次のミッションが自分の土俵であると知っている信長のモチベーションは最高潮に達していた。
到着したのは、岩手県盛岡市にある老舗の蕎麦屋。
店の前には『ジャパンカップ特別おもてなしミッション:わんこそば大食い決戦!』というのぼりがはためいている。
「ルールは簡単だ! 制限時間内に、チームで合計100杯を食べ切ればミッションクリアで100ポイント! 以降、10杯ごとにボーナスポイントが加算されるどー!」
ハッピを着た大会スタッフがマイクで煽ると、参加者たちからどよめきが起きた。
「よし、俺の出番だな! 親父、母ちゃん、ここは俺に任せろ!」
信長が腕まくりをして、座敷のど真ん中にドカッとあぐらをかいた。隣の席では、前回の宮城で仲良くなった西園寺夫妻が「信長君、頑張って!」と黄色い(?)声援を送っている。
「はい、じゃんじゃん! はい、どんどん!」
お給仕のおばちゃんの掛け声とともに、お椀に入った一口分の蕎麦が、信長の手元の器に次々と放り込まれる。
「ズズッ! ズズズッ! 美味えっ! 喉越し最高!」
信長は噛むことすら放棄し、飲み物のように蕎麦を胃袋へ流し込んでいく。
あっという間に50杯、80杯、100杯を突破。
お給仕のおばちゃんも「こりゃあ、すげえ食べっぷりだべ!」と驚きながら、リズミカルに蕎麦を放り込み続ける。
しかし、ここで予期せぬトラブルが発生した。
信長の食べるスピードがあまりにも速すぎるため、空になったお椀を片付けるのが全く間に合わなくなってしまったのだ。
信長の横には、空のお椀がジェンガのように高く積み上がり、今にも崩れ落ちそうにグラグラと揺れている。
「あわわっ! ちょっとお兄ちゃん、ペース落として! お椀が崩れるべ!」
お給仕のおばちゃんが悲鳴を上げる。
お椀が崩れて床を汚せば、タイムロスになるだけでなく「おもてなしポイント」の減点対象になりかねない。
「ええっ!? でも、まだまだ食えるのに……!」
信長が箸を止めてペースダウンを余儀なくされた、その時。
「おう、任せとけ! 現場の滞りは、親方の責任だ!!」
ドガンッ! と、鷹人が愛用の工具箱を持って立ち上がった。
鷹人は店の裏手に積んであった雨樋用の塩ビ管の端材と、ビールケースを素早く見つけると、店主に「親父さん、これちょっと借りるぞ!」と声をかけた。
「何をする気だ……?」
周囲の参加者が固唾を飲んで見守る中、鷹人の『土建屋無双』が始まった。
鷹人はメジャーも使わず目分量で塩ビ管をカットすると、持参したガムテープと番線(金属のワイヤー)を使い、あっという間に信長の座席から厨房の洗い場へと直結する『スライダー(滑り台)』を組み上げた。
「信長! 空いたお椀は重ねずに、このレーンに放り投げろ! 厨房まで一直線に滑っていくぞ!」
「マジかよ親父! すっげえ、逆流しそうめんみたいだ!」
鷹人が計算し尽くした絶妙な傾斜角により、空のお椀は「シャーッ!」と小気味良い音を立ててレーンを滑り降り、厨房の巨大なタライの中へスポスポと綺麗に収まっていく。
これで、お椀の回収問題は完全にクリアされた。
「よっしゃあああ!! これで全力で食える!!」
信長が再び猛烈な勢いで蕎麦を吸い込み始める。200杯を優に超えた。
しかし、さすがに同じ味の連続で、信長の箸の動きがわずかに鈍り始めた。
「……うう、腹は減ってないけど、ちょっと味が単調になってきたな……」
「はい、お待たせ! ここで『味変』よ!」
恵が、コンロで温めていた鍋をドンッと置いた。
中に入っていたのは、宮城でもらったばかりの『三陸産生わかめ』をたっぷり使った、熱々の和風生姜スープだった。
「わかめのミネラルと生姜の香りが、胃袋をスッキリさせてくれるわよ。さあ、スープを一口飲んで、もうひと踏ん張り!」
「おおっ! 磯の香りがすっげえ爽やかだ! 胃袋がリセットされたぜ!!」
恵の完璧なサポート(給食のおばちゃんの栄養学)を受け、信長は限界を突破。
最終的に、なんと一人で「350杯」という大会前人未到の大記録を打ち立てたのだった。
「ちーちゃんは、これ!」
一方、千姫の小さなテーブルには、わんこそばの器に入れられた『一口サイズの白玉ミルクぜんざい』が並べられていた。店側の粋な計らいだ。
「わぁい! ちーちゃんも、じゃんじゃん! どんどん!」
お給仕のおばちゃんの真似をしながら、小さな口で白玉をモギュモギュと頬張る千姫。その可愛すぎる姿に、AIカメラは「おもてなし癒やしポイント」をカンスト(上限突破)させていた。
「佐藤家、ミッションクリア! さらにボーナスポイント250追加で、ぶっちぎりの暫定1位キープだどー!!」
店内に割れんばかりの歓声と拍手が響き渡る。
鷹人のDIYスキルと、恵の料理サポート、そして信長の胃袋が見事に噛み合った完全勝利だった。
「佐藤さん、これ岩手からの手土産だ! 盛岡名物の『冷麺』と、最高級の『前沢牛の切り落とし』だ! 道中、焼いて食ってけろ!」
「ありがとうございます! 明日の朝ごはんは豪華な焼き肉ドッグに決まりね!」
トランクに最高級の牛肉を積み込み、佐藤家のエスティマは次なる難所へ。
北の大地へ渡る前、本州最北端の地・青森県へと向かって、爆走を続けるのだった。
ジャパンカップ・第12チェックポイント、岩手県。
佐藤家、親方の即席DIYレーンとわんこそば350杯で、無事クリア!!




