EP 10
常夏のフラガールと、納豆とろける極上・喜多方ラーメン!
茨城の海沿いを北上し、エスティマはいよいよ第1章の最終チェックポイントである福島県へと入った。
山あいの道を抜けた先、いわき市にそびえ立つ巨大なドーム状の建物が見えてくると、車内のテンションは最高潮に達した。
「おおおっ! 見えたぞ! 日本のハワイだ!!」
助手席の鷹人が前のめりになって叫ぶ。
エスティマが『スパリゾートハワイアンズ』の特別ゲートをくぐると、そこには常夏の楽園が広がっていた。
アロハシャツを着たスタッフたちと、色鮮やかな衣装をまとったフラガールたちがズラリと並び、南国の陽気な音楽とともに佐藤家を大歓迎で出迎えたのだ。
「アロハ~! ジャパンカップ参加者の皆様、福島県へようこそ!」
「うおっ、すっげえ! ほんのり暖かいし、マジで南国だ!」
車から降りた信長の首に、フラガールのお姉さんが花のレイ(首飾り)をかけてウインクする。純情な高校球児の顔が、一瞬で茹でダコのように真っ赤に染まった。
「のぶにぃ、おはな、かわいいねー!」
「お、おうっ! サンキュ、千姫……って、親父も何デレデレしてんだよ!」
「ガッハッハ! こりゃあ本物のハワイに行く前に、前哨戦としてバッチリだな!」
佐藤家は水着に着替え、巨大な温水プールで思い切り羽を伸ばした。
ウォータースライダーで鷹人と信長が絶叫し、恵は浅瀬で千姫とパチャパチャと水を掛け合って笑う。
「……信長、少しは気が晴れたか?」
プールサイドでジュースを飲みながら、鷹人がポツリと聞いた。
「ああ。なんかさ、日本中回って美味いもん食って、みんなに応援してもらってたら、ウジウジ悩んでるのがバカらしくなってきた」
信長は、水面を真っ直ぐに見つめて力強く頷いた。
「俺、ハワイ行くぞ。このレースで絶対優勝して、来年は甲子園にも行く!」
「その意気だ、バカ息子!」
鷹人が信長の濡れた坊主頭をガシガシと撫で回す。傷心の野球少年は、この数日間の「おもてなしの旅」で、完全に以前の輝きを取り戻していた。
「さあ! たっぷり遊んでお腹も空いたでしょう! 福島からのおもてなしグルメよ!」
特設の食事会場に案内された一家の前に、福島の料理人たちが満面の笑みで巨大な丼を運んできた。
「福島が誇る『喜多方ラーメン』です! 豚骨と魚介のあっさり醤油スープに、特製の平打ちちぢれ麺。そして、息子さんのためにチャーシューを丼からハミ出るまで乗せました!」
「うおおおおっ!! 肉の華が咲いてる!!」
信長が箸を割ろうとしたその時、恵がトランクから茨城県でもらった『わら納豆』を持ってきた。
「すみません! この納豆、給食の裏技で『フワフワの泡状』になるまで全力でかき混ぜたんですけど、ラーメンに乗せてもいいですか?」
「おっ!? 納豆ラーメン! 東北地方では納豆とラーメンの相性は抜群とされています。ぜひ乗せましょう!」
あっさりとした醤油スープの真ん中に、空気を含んでメレンゲのようにフワフワになった納豆がドサリと乗せられる。
「いただきまーす!!」
信長が、チャーシューと納豆を絡めた極太のちぢれ麺を一気に啜り込んだ。
「ズズズッ……うわっ! なんだこれ!!」
信長が目を丸くする。
「あっさりしたスープに、納豆の旨味ととろみが加わって、めちゃくちゃ濃厚なスープに進化してる! しかも、ちぢれ麺の隙間にフワフワの納豆が完璧に絡みついて、啜るたびに美味えっ! チャーシューで巻いて食ったら飛ぶぞこれ!!」
「納豆のネバネバは喉越しを良くするし、スタミナ回復には最強の組み合わせよ」
恵がドヤ顔で解説する横で、鷹人も汗だくになってスープまで飲み干した。
「ちーちゃんは、これー!」
ラーメンの熱気に顔を赤くしている千姫には、特別なデザートが用意されていた。茨城県でもらった『干し芋』を鉄板で軽く炙り、そこに福島産の濃厚なジャージー牛乳アイスを乗せた『熱冷や・干し芋アイス』だ。
「あむっ……んん~~~っ! おイモ、あまーい! アイス、つめたーい!」
温かくてねっとりとした干し芋の自然な甘さと、冷たいミルクアイスのハーモニー。千姫はすっかり虜になり、ピンクの唇にアイスをつけながらご機嫌で足をパタパタさせた。
心も体も、そして胃袋も限界まで満たされた佐藤家。
ハワイアンズのスタッフたちと固い握手を交わし、エスティマへと戻る。
「佐藤さん、これ福島からの手土産です! 今が旬の『暁ピーチ』と、福島のソウルフード『いかにんじん』です! 次はいよいよ東北の北部、そして北海道ですね。気をつけて!」
「ありがとうございます! 桃は冷やして、いかにんじんは鷹人さんの晩酌のお供にしますね!」
トランクに甘い桃の香りを満たして、エスティマのエンジンが力強く唸りを上げる。
愛知を出発し、東京のコンクリートジャングルを抜け、関東から福島までを「おもてなしと食欲」で駆け抜けた第1章。
「よし! 次はフェリーに乗って、北の大地へ上陸だ!」
「海鮮丼! ジンギスカン! 待ってろよー!!」
信長の元気な雄叫びとともに、佐藤家のエスティマは次なるステージ——果てしなく続く直線の試練と、さらなる絶品グルメが待つ「第2章:北の大地・爆走編」へと向かって、力強く走り出した。
ジャパンカップ・第10チェックポイント、福島県。
佐藤家、常夏のおもてなしと納豆喜多方ラーメンで、無事クリア!!




