俺と僕
俺と僕
僕は大学三年生の友達の少ない男だ、特に目立つこともなく、勉強は講義についていくだけで精一杯でテストの順位は、下から数えた方が早い。
僕には勿体無いぐらい優しくて明るい彼女がいる。自分でも不思議だ。でも、それが嬉しくもある。僕を選んでくれたんだから。
僕は、のうのうと生き、彼女と遊び、家に帰りバイトに行くというルーティンを送っている。バイトが終わり「あー、今日も疲れたわ」と彼女にメッセージを送る。彼女は「お疲れ様」と返す。いつもぶっきらぼうだが、なにか嬉しい気持ちになった。
家に着きシャワーを浴び、換気扇の下でタバコ吸う。部屋に響くライターのジュッという音と換気扇の回る音。いつまでも、こんな生活なのかなと少し焦りも感じ始めていた。そして、動画を見ながら眠りにつく。
「すげぇー、めっちゃ綺麗だね」と俺は言う。「そうだね!みてみて、ここめっちゃ高い!」と彼女は話す。すごい高い崖の上で俺と彼女は立って海を見ていた。波の音と彼女の声、少し肌寒く感じる風を浴びながら、眺めていた。「ごめんね」と悲しそうな声が聞こえた。彼女はそこにはもういなく、岩にどっっとぶつかる鈍い音がした。
「え、何してるの?なんで?」と俺は言った。するはずもない彼女の匂いと鉄の混じった海水の匂い。俺は悲しい気持ちよりも、焦りがでた。少しの喜びもあった。
いつも通り目を覚ます。「あ、夢か、まあ当たり前か。」と僕は言う。なぜ、少し嬉しい気持ちが出たのかは謎だった。
着信音が鬱陶しく、腹が立った。彼女からの電話で起こされた。今日みた夢をありのまま話した。彼女は「怖いね」と言いながら笑っていた。安堵と悲しみが出てきた。今日は大学が昼からだったので、昼までは動画を見ながらゴロゴロと家で過ごしていた。ふと、今日みた夢を思い出した。夢の中では嬉しかったが現実だと悲しいことだと思った。僕は、夢では嬉しく現実では悲しい理由に見当もつかなかった。
彼女に会い、近くの居酒屋で少し飲むことになった。彼女はカシスで、僕はハイボールを飲んだ。話が盛り上がり、テンションが上がってしまった僕は机にゴツっと膝をぶつけハイボールを倒してしまった。慌てて拭いたが、少し袖が酒臭かった。終電も逃し、タクシーで彼女と家に向かい泊まることになった。
タクシーを降りてコンビニで「酒でも買って帰るか。」と話し家に向かった。道中に路上供花があり、白い菊が供えられていた。彼女は「綺麗な花だね」と。家に帰り二人で飲み直した。彼女は「ありがとね」と言って僕は曖昧な意識の中寝た。
「ここのパスタ美味しいんだよ」「ここの店員さんとても可愛いおばあちゃんなんだよ!」「これ美味しくて大好きなんだ!」「そんなことしたらダメだよ!」と俺の記憶の中の彼女が出てくる。俺も彼女も笑いながら話していた。彼女と白い花が咲いてるところにきた。「綺麗なとこだね」と俺は話した。でも彼女は少し悲しそうな顔しながら「ありがとうね!」ってと言われ、彼女を置いて先に僕は夢から覚めた。悲しい気持ちはなかった。
朝から大学だったため、急いで僕は大学に向かった。またいつも通りの毎日だ。何も変わらない。夢の中だけは自分の行きたいように行きたいと誰もが思ってる。またバイトに行く。今日は早上がりでき、気持ちも楽で楽しかった。家に着き夜ごはんを食べ、今日は寝た。彼女が死んでた。血を流し、顔だけは綺麗で、体も原型を留めていなかった。周りは白い菊の花で埋まっていた。彼女は何を伝えたいのか、何がしたかったのか、なんで死んだのか。理由ばかりを俺は求めてしまう。悲しみよりも現実ばかりを求めてしまう。俺は彼女に何を求めていたのか、好きだったのか、何もわからない。
目が覚めた。彼女は生きてるし、いつも通り話していた。彼女をみた僕は何も安心もできず、悲しくなった。
彼女が僕を変えた。彼女は僕にとって大切な人じゃないのか。彼女の死を体感してみたい。彼女がわからない、自分がわからない、彼女を知りたい。
大学が終わり、バイトも休みだったから彼女を家に呼び話した。「君を知りたい」と言った。彼女は何言ってるの?」と笑いながら話した。
俺はもう何が正解かわからず、衝動的に彼女の首を絞めた。死ぬとは思わなかった。体震え、顔が赤くなり、嗚咽音。俺は楽しくなり、手に力を込めた。跡がつかないように、長く息ができるように。震えも止まり、力が抜けた。
「あぁ、これが好きだったって気持ちか」初めてわかった。嬉しかった。彼女に伝えたいけど彼女は寝てる。生きがいを感じた。殺したくて殺したんじゃない。好きだから殺したんだ。殺すことによりその人のことを好きだとわかる。それが答えだったんだ。
僕は友達から車を借り、彼女を布で覆い、岸から海に彼女と白い菊の花を落とした。どっっとぶつかる彼女の音。静かな波の音。肌寒い潮風。またいつもの日常に戻る。何もない日常に。




