第五十四話 天正九年、馬揃え
この作品は、歴史的な史実とは別次元の物語です。
妄想的で非常識、そして変態的な展開ではありますが、
今後ともよろしくお願いいたします。
京都で催された馬揃えは、信長の奇抜な発想から始まった。
元旦から数日後、「京都で馬揃えをするゆえ、何か奇抜な装いはなかろうか」と、信長から連絡が入った。私はこれに応え、刃先を黒く塗った長槍200組と、上下が黒と銀で統一された洋風の鎧兜、そして同色の丸盾を贈呈した。
あいにく、二月の馬揃えには鎧が間に合わないことが判明したため、代わりに音楽隊を派遣することにした。演奏する楽曲は「帝国のマーチ」である。ダース・ベイダーのテーマを主軸とし、東側の陣中では「君が代行進曲」を取り入れた。楽隊の軍服は、アメリカ独立戦争当時の植民地時代の赤い制服と三角帽子を模したものを用意した。これは事前に信長や摂家にも披露し、珍しいものが大好きな信長は大変喜んだようで、感謝の文まで送ってきたほどだ。
歌詞は詠み人知らずの和歌に曲をつけ、歌を実演する形をとった。要は、前世の「君が代」を披露したのである。行進曲は歌名無しの曲に編曲されたものを太鼓に合わせ行進すると説明し、実演を見せたが、家臣たちの行進が揃わないと見栄えが良くない。そのため、参加者は早速太鼓に合わせて行進の練習を行い、二月末の馬揃えに間に合わせたのだった。
信長は前代未聞の馬揃えと評判になり、三月に黒の洋風鎧兜200領と大型の馬3頭を追加した馬揃えも大好評で、機嫌はすこぶる良かった。音楽隊を寄越せと言ってきたが、私はそれを断った。「20名ほど預けていただければ、仕上げて戻しましょう」と返答した。
その年の八月には能登国を前田利家に与え、九月には伊賀を平定し、十月には鳥取城を落城させるという、まさにハイペースな進撃であった。
天正十年、武田氏が滅亡した年である。北条家では念願の越後トンネルが開通し、江戸から新発田まで車や鉄道で数時間での到着が可能となった。九十歳を超えてようやく完成したこのトンネルにより、三国峠は名所として残るものの、冬は越えられない難所ではなくなった。完成記念に越後へと出かけた私は、信濃川の河川工事が完成し、農地の整備も見事なものだと感嘆した。「流石米どころ越後、自然と人の技が織りなす景観は誇らしい。」
はじめに高田へ向かい、最後に村上を視察して鮭をお土産に買い、新発田のホテルで一泊。翌日は佐渡へ向かう予定だ。金の生産も順調で、遷都用の記念金貨には佐渡産の金を使うことになっている。二条家からは雅な絵柄が良いと絵を送ってきたので、裏面はそれを使用し、表面は菊のご紋とする予定だ。
信長の高速進撃により、歴史はほぼ史実の通りに進み、本能寺のその日を迎えることとなる。
天正十年六月二日、明智光秀が本能寺を囲み、信長を急襲した。織田信長は自ら弓や槍をもって防戦するが、やがて自刃して果てるのが史実である。しかし、今から十五年前、我らは三条通りの寺の地下から本能寺と二条新御所へ続く地下道を、この日のために完成させていた。騒ぎに合わせ、いつもの連絡役の者が地下へと信長を誘導した。電動扉を開き、信長やお付きの者が全員地下道に入ると、厚さ一メートルのコンクリートの扉が締まり、明るい地下道を拠点まで案内する。
信長は「いつの間にこんな物を……!」と連絡役を見たが、追及はしなかった。
拠点地下の応接室で、もう一組を待つこと三十分。二条新御所から信忠と誠仁親王が合流した。本能寺と二条新御所が全焼し、明智軍が周辺を捜索していると報告が入る。そこに幻庵(高橋是清)がやってきた。
「これから、どうなるか見ものだ。儂も含め、今出るのは危険である。幸いここは三ヶ月も暮らせる。潜伏することをおすすめする。」
幻庵は、この種の施設が重要人物のために数ヶ所点在すると伝えた。信長の気性からすれば怒りが爆発寸前のはずだが、達磨のように落ち着いた幻庵を見て、冷静になっていくのが見て取れた。
寺の別室に移動し、それぞれ部屋を割り振った。応接室で甘味とお茶を楽しみながら数日を過ごし、後日の状況を報告する。ちなみにこの部屋はカラオケボックスのように防音が施されているが、信長には伝えていない。潜伏状況ゆえか、ここ数日は皆、小声で話すことを心掛けているようだった。
信長一行は、幻庵の言葉である「秀吉の行動が気になる」という点に信長も興味を持ち、あの男の野心の行方を見守る方向へと気持ちを切り替えたようだ。殿下は、少し狭いながらも快適な住環境と食事を大変気に入り、「ここで一生暮らしても良い」と冗談を言う余裕すら出てきたようである。二条家には内密に連絡を入れ、地下通路から殿下に対面させ、お付きを数名増やした。
信忠は殿下が無事保護されたことで余裕が生まれ、信長と共に新しいものに興味津々でここ数日学習している。トレーニングルームで体を鍛えることにハマり、いずれマッチョになって「パワー~」とか言ったら笑えるが、ありえん……。
ここの食事は前世と同じである。寿司、ステーキ、ラーメン、鰻重、懐石、中華、フレンチ、イタリアンと、デザートも和洋各種、酒も全て揃えている。要人用だからこそ、全てを揃えたのだ。信長の甘味好きは当然のことだが、この時代、甘味は少なく高価であるため数もない。食後、毎回違う甘味を試しているようだった。
本能寺の変から二十日後の報告で、「秀吉が十三日の山崎の戦いで明智軍を破り、逃走中の光秀は落ち武者狩りで負傷し自害。十七日には京都の粟田口に晒された」と、一応の決着がついたと伝えられた。
静かに聞いていた信長は、「フン」と鼻息を漏らして考え事をしていた。それから数日して落ち着いてきた頃、脱出を提案された。信長は「お前の腰の物はなんだ?」と聞いてきたので、風魔の者は「九式小銃と言い、鉄砲です」と答えた。「何だとっ!」と大声を上げ、見せろと迫ったので、風魔の者はケースから取り出して信長に手渡した。
「火縄が無い……なんだこれは?」
「これは、このまま撃てる銃です。地下の射撃場で試しますか?」
信忠と共に射撃場で一通り撃ち終え、信長はつぶやいた。
「北条家はここまで進んでいるのか……あの……もののけ爺か?」
幼稚で語彙力が乏しいことは自覚しておりますので、
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