第四十七話 弘治二年、信長
堺に納品する火縄銃を1000丁と、朝廷や将軍への品を横浜港から、海軍に警備された貨物船が出航していく。代わりに安宅船が入ってきた。
港周辺は海軍の迷彩服に帽子をかぶり、防弾ベストに九式小銃(VP9)と短剣を装備した兵士で警備されていた。海軍兵の5人が安宅船に向かい、船籍と要件を訪ねると、尾張から商船で、織田信長が氏康(石原莞爾)に会いにきたとの無線連絡が入った。
氏康(石原莞爾)は安房方面で待機しているため、幻庵(高橋是清)と、ミーハーな俺がついて行くことになった。港から20名を乗せた一台のリムジンと一台の大型バスは、横浜ホテルの海と美しい洋風庭園が見えるVIP用会議室で待機していた。
今回、俺たちは高級セダンで横浜に向かっている。約60分で到着だ。幻庵(高橋是清)も信長に興味があるらしく、二人であーだこーだと話しているうちに、あっという間に到着した。玄関前に車を乗り捨てて、フロントに到着を知らせてから会議室に向かった。
その人はオーラを纏っていた。信長は幻庵(高橋是清)と向き合い、互いに挨拶を交わすと、本題に入る。お付きの俺は蚊帳の外だ。
「北条の鉄砲が欲しい」
ここで幻庵(高橋是清)は言った。
「わからないようにしていたのですが、意外と早く辿り着きましたね!直接の取引は、配下以外には売れません。」
それに対して、信長は返す。
「身内ならどうだ」
「御身分の高い方、市姫……そうそう、土田御前と弟君の信行殿もこちらへ……その方が、後々憂いがなくなりますよ」
「むぅ……何故……」
重苦しい雰囲気を察したか、ホテル客室係がコーヒーとザッハトルテ、シフォンケーキに生クリーム添えを持ってきた。信長はポルトガル人メイドに仰天し、甘味の説明を聞いてケーキの味にも仰天、さらにコーヒーの器の美しさに興味を覚えたようだった。
ポルトガル人メイドは、ジョアンの所から日本語習得のため、男女10名ほど雇っている者たちだ。彼は趣味で北欧の奴隷を所有している関係で、労働者階級には金髪の青い目が多い。
若い信長の度肝を抜き、交渉の主導権を握る幻庵(高橋是清)は続けた。
「ホテルも含めて、この北条の地は別世界です。リムジンや大型バス、2000人も運べる鉄道もあり、ここには争いのない未来の国があるのです。……」
「…………」
「我々は、このような世界を緩やかに拡大させ、いずれこの世から戦を無くすつもりです。織田殿はいかがお考えですか。」
「……生きることが第一で、…………」
「今の周りの環境では、そうなるでしょう。以前、殿が信秀殿に宛てた書にあったように、同盟の義元殿からの疑心が止まないような隣国は難しい。ただ、このまま国内で争っては日ノ本のためになりません。南蛮では一年かけ侵攻し、日ノ本の近くまで植民地になっています。この絵を見てください。これは世界の地図です。赤色で縁取りがスペイン、緑がポルトガルです。そして、日ノ本がここです。」
「なんと……」
信長を含む連れは青くなっていた。
「織田殿は何を望むのですか。婚姻や人質のことで、たとえ良い鉄砲を手に入れても何も変わらない、戦に戦を重ねるだけです。今回、何か運命の糸が手繰り寄せたのか、会うことのない両家の縁だからこそ、ここまで話しました。よく考えてご回答ください。今日は別室に食事を用意しています。」
それから、スイートルームに信長を案内して、バスルーム、トイレ、ベッドルームの説明を信長と小姓にした。信長は、回せばお湯が出る蛇口やシャワーに感心し、 水洗トイレやトイレットペーパーには仰天していた。
トイレは言うまでもないが、紙をロール状にして使い、 そのまま捨てるという発想は、彼の常識には存在しなかったに違いない。
「高価な紙を勿体ない」と思うだろうが、俺は紙製造の目的はトイレットペーパーを作ることを目標とし、その他の紙はついでに作ったにすぎない。俺のお尻がデリケートだからだ。20年前は「勿体ない!」と言っていた芳達が、今や一番喜んでいる。
それと、ベッドの快適さに「売ってくれ」と言ったらしい。
羽毛布団の快適さは折り紙付きだ。近年の冬は、ロングのダウンコートが北条の御夫人達に人気を博している。巷でも金持ちには普及してきた。まだ庶民には無理でも、我が家は開発者特権で妻や子供達も着ている。金持ち達は是が非でも欲しい一品だろう。
布団とダウンはお土産でいいが、ベッドは受注生産になるので今は無理!
信長の周りの部屋を連れの者に手配し、同じく各部屋で同じ説明をした。各部屋には用意している洋風ガウンがあり、スイートルームは絹製だ。これも、お土産コースかな?
部屋でしばし休憩し、その後、100名入る富士の間に案内して宴会を始めた。こちら側も織田家と関わりがある公家からと、北条事務方幹部含め10名ほどが参加した。簡単な挨拶をして、余興として俺が管理している楽団が派手な演奏を披露した。それから優雅なBGMに変え、会話の邪魔にならない演奏にした。食事とお酒を楽しみながら、幻庵(高橋是清)は鉄砲のランクの話をし始めたところで、俺の登場だ。
誤字修正しました。




