第二十八話 大永四年、きな臭さが増す
この作品は、歴史的な史実とは別次元の物語です。
妄想的で非常識、そして変態的な展開ではありますが、
今後ともよろしくお願いいたします。
北条軍に危機感を抱いた両上杉家は和睦し、氏綱に対抗しようとする。しかし正月、氏綱は一万を超える軍勢で武蔵に攻め込み、権現山城、世田谷城などを次々と攻略し、荒川を渡った。そして目黒川を渡った高輪原で両軍は激突する(高輪原の戦い)。
関東で小競り合いを繰り返す未熟な指導者たちを、今すぐ叩き潰しに行きたいところだが、歴史の修正を加えすぎてイレギュラーな事態を招くのは避けたい。史実に近い流れで進めたいと思っているのだが……今更、どうなるものでもないか。
兵力と軍備で勝る北条軍は扇谷勢を撃破した。敗走した朝興は居城の江戸城へと逃げ帰るが、氏綱は一月下旬には江戸城を包囲した。当時の江戸城は改修前とはいえ堅牢な造りで、容易に攻略することは難しいと思われた。しかし、北条軍に敗れて兵力が少なく、さらに以前から朝興の政策に不満を抱いていた太田資高が北条方に寝返ったため、総攻めによって江戸城は攻略されることとなる。
その後、武田信虎、扇谷上杉朝興、山内上杉憲房が和睦を結び、北条氏綱包囲網に加わったことで、情勢はきな臭さを増していった。
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俺は、皆が戦をしている最中でも午前中は作業をし、お茶とおやつで昼休憩をとり、子供たちと遊ぶ。その後は工房を見回り、風呂に入って夕食と酒を飲みながら芳と夕と会話をし、就寝するという日々を繰り返している。戦前は忙しかったが、いざ戦が始まると平穏な生活に戻っていた。
黒鍬隊や常備軍の編成も充実してきている。将来は北条軍五十万も夢ではないだろう。軍には規律が必要だ。その基本は行進から始まる。そして楽団だ。初めは和楽器をベースに太鼓などを揃えよう。この時代に楽団を伴う行進をされたら、さぞかし度肝を抜かれるだろうな、と妄想していた。
楽器が得意な者たちを集めて教育し、三曲ほど演奏できるようになれば完成だ。ドラムメジャーも必要だろう。陸軍分列行進曲や君が代行進曲、帝国のマーチ。行進曲「威風堂々」も捨てがたい。それと、君が代は別に国歌として練習させよう、などと構想を練っていた。
後日、洋風ドラムの大中小を数日で作り、和太鼓が得意な者に一定のリズムで叩いてもらった。陸軍分列行進曲を笛でメロディーを奏でてみたが、どうにもボリューム感がない。そこで他の楽器を作ることにした。「やっぱ、ラッパかねー」
数ヶ月後、音符を読むことから始め、演奏の練習を重ね、何とか形になった。後はまとめ役に丸投げし、彼らの演奏を楽しむことにした。
彼らには、いずれ大通りを兵士たちと行進し、観衆の度肝を抜く演奏を披露することを伝えている。彼らもまんざらでもない表情をしているから、良い目標になるだろう。
ドラムや笛、その他の練習だけでは給金が発生しないし、「芸事は人前で披露してなんぼである」。小遣い稼ぎに食堂でBGMを提供し、技能向上と給金を得ることを提案した。元々プロの演奏家たちであり、まさに渡りに船であった。
弦楽器や管楽器、ピアノも欲しいところだが、今は余裕がないので諦めた。今ある楽器で対処する。笛系は良いのでドラムセットを作り、ポピュラーな十曲を覚えてもらい、行進曲に加えて数ヶ月練習させた。
食堂で、おとなしい曲が流れる、話し声の邪魔にならない距離のテーブルで、小太郎の話を聞いていた。幻庵(高橋是清)の指示で有望な人材を集めているらしい。小太郎の業界(伊賀・甲賀)にも仕事を回したり、売り込みもあるそうだ。信濃国小県郡の滋野氏三家の者(真田・望月・根津)や京都妙覚寺の法蓮房(斎藤道三)など、様々とのことだった。
今は寺子屋だけでなく、さらに上の職業専門学校もできている。そのうち、大学や士官学校でも作りそうだ。無名の英雄が出てくる可能性も十分にあるだろう。
幼稚で語彙力が乏しいことは自覚しておりますので、
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