第18話 永正3年(1506)里帰り
この作品は歴史的な史実とは別次元の話ですので、
全て私の妄想・非常識・変態の展開ですが今後ともよろしくお願いいたします。
数日後、芳のお腹もかなり目立ってきて、実家の春さんのもとへ出産の為に移動した。良い環境で元気な赤子を生んでくれよ~と送り出した。
永正4年5月21日夜に女の子が生まれた。18歳で親父か~と外を見ると、サツキの花が咲いている今月は皐月だし、皐という名前を候補に入れた。
芳と赤子の様子を見たくて薄暗い中、八十八さんとパン・うどんを土産に松田屋へ向かった。松田屋に到着すると太陽が顔を出し眩しさを感じながら店から母屋の方に向かい、春さんに挨拶をして、芳のいる所に案内された。芳や寝ている赤子も元気そうで一安心した。
「芳、がんばったね。……ありがとう……俺たちの子として生まれてありがとう~」と言って芳と赤子も頭を撫でた。自分も含め皆お腹空いているはずだから、松田屋の料理番と、うどんを作り、醤油ベースに味醂と鰹節と昆布で簡単出汁を加え少し濃い麺つゆを作り、一番に芳に食べさせた。
後は自分も含め全員に「新作のうどんです。」と言って試食をした。春さんが何か言いたげだが気づかないふりして芳と会話する。
又平さんにパンと焼酎と娘が生まれた事を実家に伝えるお願いした。それと、下総の、けみ川 に有る泥炭の調査と採取だ。採取用折り畳みスコップと金属の弁当箱サイズを持たせた。
春さんの所では今年から本物の清酒と麦焼酎を作り、酒粕で消毒アルコールも生産している。後は、醤油の生産を開始した。醤油は高級品だが、金持ちは挙って買ってくれる。その結果、蔵の床が抜けるくらい銭が有る。
北条領内の価格は管理されているが、武蔵や上野、下総と上総に安房、甲斐と駿河では価格を上げている。堺では10倍でも売れるらしい。
10月になり鰻の油がのり美味しい時期になった。醬油の完成から瓶に鰻のタレを作り甘みを出すため蜂蜜を使った味が整ったので早速、予告もなく鰻の蒲焼を焼きはじめた、回りに煙と匂いを拡散させながら焼いていると自然に人が引き寄せられて遠巻に注目される。
時刻は3時過ぎあたりで夕食準備前の時間帯で、小腹も空く3時のおやつの時間だ。
タレに付けて2度目の焼きに入り、煙の匂いも2倍に広がり、醤油の匂いがプラスになり焼いている俺の腹がグゥ~と鳴り、俺の周りの遠巻連中が一歩近づいている。
そんな注目のなか4人前の蒲焼きが完成した。前回、又平さんが食べた鰻の蒲焼きより美味いはずだ。
試食は八十八さん、友蔵一家と源三親子、俺の家族と春さんだ、源三さんは純米酒持参でやってきた。皿に鰻を乗せ試食開始だ。
「「「美味い・・・・・・・」」」
我々の反応を見たギャラリーは、今から一揆でも起こしそうな目になってきたので、
「これから~・・・試食分を焼きますから、少しお待ち下さい。」と大声
で伝え用意した鰻を素早くおろし、タミさんや春さん芳と夕ちゃんの助っ人を頼み、炭火で焼きはじめ出来上がりを集まったみんなにふるまった。
試食の輪の中に氏綱さんも混ざっていて、特別な鼻の持ち主な事は解った。
八十八さんが「鰻屋を長屋の近くでやったら儲かるな~」と言って頷いていた。
相模屋でやるのか松田屋でやるのかは知らないが、鰻屋が有れば外で気軽に食べれるし、俺は食えれば良いから賛成だ。
試食が終わり内輪で、炊いていたご飯の上に鰻をのせ特製タレをかけた鰻丼を配り山椒を軽くふりかけて俺も食べた。「鰻丼・・・・」久々に感動した。
まわりを見ると皆満足な表情で、無言で完食していた。単品で酒のつまみとしても最高だが、やっぱり鰻丼が最高だ~~
氏綱さんがまだ食べたそうにしていたけど、「御代りは有りませんから。」と春さんが厳しく伝えていた。
俺はレシピを八十八さんに渡しその後を楽しみに待つだけだ・・・・
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