第十六話 永正三年、戦と発明
この作品は、歴史的な史実とは別次元の物語です。
妄想的で非常識、そして変態的な展開ではありますが、
今後ともよろしくお願いいたします。
早朝、突然早雲さんがやってきた。何かあるに違いない。永正五年(1508年)には井田野の戦いがあるはず。たしか早雲さんが総大将を務める一万余りの今川氏親軍が、三河の松平長親が率いる五百の兵に撃退されたはずだ。……負け戦だったよな……。
「近いうちに戦があるから、何か策はないか」
「飛び道具ですか?……早く大量生産できて、少し練習すれば使えるものですか。」
提案は、昔からあるスリング、アトラトル、そしてクロスボウと、簡単に作れる順だ。芳に、早雲さんにお茶とお菓子をお出ししてお話をするように伝え、俺はスリングとアトラトルを二十分くらいで作り、三十分かけてクロスボウを作った。その後、催涙矢も制作した。また、一番簡単ではあるが飛距離の短い火炎瓶も作った。今回の矢の中身は小麦粉だ。本来は山椒や和からしなどを混ぜる予定だったが、栽培が簡単な唐辛子がないのが残念だ。空いている警備員を二人、待機させた。
早雲さんを呼びに行き、実演を開始した。まずは見本だ。少し紐が長いスリングを的に向かって当てる。二回ほど行い、次にアトラトルを連続で三回。小型のクロスボウを二回ほど放ち、最後に催涙矢を放つと、的に当たり辺りが白く靄がかかった。最後は火炎瓶だ。中身がガソリンではないから爆発はしないが、対象物が勢い良く燃えた。屋根や室内、人など、使い方次第で怖い兵器になる。実験は全て成功だ。
警備員に説明をして交代でテストしてもらい、後は早雲さんの感想を聞き、今後の方針を決めることになった。
結果、全て採用で、スリング三割、アトラトル二割、クロスボウ一割、催涙矢五割。これはアトラトル用がメインだ。追加説明として、クロスボウは機動性に優れ狭い所でも使えることを伝えた。但し、火炎瓶は却下された。作り方も使用も問題ないが、火種の携帯が困難であることを挙げて却下されたのだ。
俺は懐からマッチを取り出して簡単に火を着けて見せると、冷静な早雲さんが「なんじゃ~」と声を上げ、歩み寄ってマッチを凝視する。もう一度マッチを擦ると、シュッと音と共に火が付き、棒を振って火を消した。早雲さんに使い方を教え試してもらうと、簡単に火が付くことに感動していた。俺はこの時代の火に関して認識がずれていることを忘れていた。原始的なマッチの重要性を軽視していたのだ。早雲さんは、
「これは、外には出せない。」
と断言して、一部の者が管理するように指示した。そして、これより便利なものもあるのかと聞いてきたので、雨の日でも消えないものもあるが原料が無いため今は無理だと伝えたが、劣化版ならば作れると伝えた。要するに、オイルライターだ。軍では誰しもが携帯できるような一世代前の製品。試しに作ってみるか。
それと刀についての説明だ。豪の者が上級品の刀を使用すれば、普通の刀を折ることができ、普通の鎧ならば切ることができる。今は三本だけだが、高級品を豪の者が持つと一騎当千の力を発揮することなど、本当の刀の秘密を伝えた。
また、新しい部品工房ができ、人が増えた。俺の仕事は仕事の立ち上げだけで、普段は食べたいものを作り、満足の鍛冶仕事をして、やりたいことだけをしているスローライフを楽しんでいるようだ。……?
工房の管理は相模屋の八十八さんに任せている。八十八さんは町に移住して、工業団地の管理者になった。町の管理は友蔵さんだ。
朝夕と寒くなってきた。ダルマストーブでも作ろうか。とりあえず自宅用に一台と、食堂に一台だ。鋳物で作りたいが、高炉を作っていないので今は無理だ。
朝から集中力極モードで、二台と煙突とカバーを夜までに完成させた。次の日には設置と試運転を行った。
幼稚で語彙力が乏しいことは自覚しておりますので、
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