9・黒い花弁
久しぶりに・・・。
ほとり
何かが頭上から落ちてきた。
ほとり、ほとり
赤い赤いなにかが。
ほとり、ほちり、ほとり
手に落ちて、赤い花弁は黒く、
ほとり、ほとり、
捻じ曲がり、消えた。
存在が消えた。
「ねぇ、弓薇。綺麗でしょ。」
「!??」
夢を、見た気がした。
何かが落ちてきていた。誰かが振り向いた。
その誰かが私を呼んだ。
「弓薇」と
弓薇と呼んだ
「うちの所有物何してるの?」
ふと、現実に戻る。
見上げると前髪を上に縛り上げた少女が仁王立ちしている。
「・・・・?」
疑問符を浮かべると
「だ か ら!何暢気に、こんなとこで寝そべってんの?って聞いてるの!」
この人、誰だろう・・・しばらく私は少女の幼顔に大きな輝きをもたらせている双眼を見ていた。
だんだん目線が下がって、鎖骨に目が行ったところで、その痣らしきものを見つけた。
鎖骨、というより、首筋だ。
小さく、ポツっと誰にでもあるような痣。気になったが、問いはしなかった。
「ねぇ?何?無視してんの!?あっ、うちのこと、小さいからって!」
なんだかわからないけど、お怒りの様子・・・。
「うちの名前、知らないとは言わせないよ!うちはね、紀霧の一人娘なんだよ!学園の姫!」
姫って・・・普通自分で言うかな・・・あ、普通じゃないんだこのコ。
「なっ!まだ無視してんの!?うちの何が無視する原因!?小さいから?小さいから!?」
どんだけ、 小さい に根を持ってるの?このコ・・・えっと、紀霧・・・なんだっけ。
「紀霧榎香だよ!かーか!!」
んと・・・このコ、いや、榎香ちゃんは人の心、読めるみたいです。はい。
「もう!うちは忙しいの!だから、じゃあね!」
一人で降りかかって一人で去る、榎香。
随分な自己中だな。とずっと無視し続けたくせに呟く。
だって、眠かったんだもん。いくらなんでも、無理。
また、ごろっと寝そべったら空が紅かった。