5・探れ
弥澄が行動!します
お姉ちゃん今日は来てくれるかな???
んんんん!!駄目です!そんなこと考えちゃ。お姉ちゃんにはできるだけ迷惑かけないようにするです!
それが優里にできる唯一のことです!!
ベットの上で苦悶する少女・・・美杉優里、優夜の妹である。
弱冠12才の少女だが体はあちこちからチューブに繋がれ、痛々しい傷が丸見えだ。
もともと体が弱く、もっとも心臓を患っていた。
両親が殺されたショックからか、失ったその日から病院から出れなくなってしまっている。
お姉ちゃんと一緒に病気なんてない所に、お父さんもお母さんも生きている、幸福しかない世界に旅立ちたい。
それが最近の優里の夢だ。そんな儚い夢も壊してしまう、優里にとって悪魔のような人がもうすぐ此処に来る。
”令乗 弥澄”という悪魔が。
悪魔が最後の肉親を優里の元から奪っていく。
(・・・ここかな・・・??)
かなりの方向音痴な弥澄が3時間掛けて、紀霧学院より1㌔の道のりの俣岬記念病院に来ていた。
裏から進入するのも簡単だが、榎香の時のように不法侵入者と見なされるのも苦なので、
一般と同じように正面から入ることにした。
自動ドアがウィーーンと音を立てて開く。
受付でナース服のお姉さんが微笑んでいた。胸元に”相楽”の文字。
サガラ というらしい。
「何方の面会を御希望でしょうか?」
サガラが最初と変わらぬ笑顔で問いかける。
よくできたもんだとおもう。
「美杉 優里さんは何号室でしょう?」
僕は美杉妹の部屋を聞く。
サガラは一瞬顔を顰めたが、直にもとの笑顔に戻る。
「309号室でございます。南エレベーター3階、直左です。」
サガラが初めと同じ笑顔で送る。
サガラが顔を顰めた原因はわからなかったが、とりあえず309号室を目指すことにした。
南エレベーターが開く。
コンコン。
病室のドアを叩く音。
自室は一人部屋で見舞いにくるのも姉以外いない。ナースが来るのにはおかしい時間だし、誰だろうと
不審に思ったが、返事をする。
「はい??」
「失礼します。」
ガラッと言う音も立てず入ってきた一人の好青年。
好青年なはずなのに、背筋がゾッとしてきた。
「どなたですか?」
気配に怖じながらも訪ねる。
「・・・。令乗 弥澄です。」
全く知らない文字が彼の口から自分の脳裏にこびり付く。
レイジョウヤスミ・・??
「失礼します。」
僕は一歩進める。
病室にいたのは、朝あった少女にそっくりな幼女。
「どなたですか?」
明らかに怯えが入っている声。
当たり前だ。いきなりこんな男に入ってこられて不安じゃない奴がいるまい。
「・・・。令乗 弥澄です。」
こんな幼女に仕事名を言う必要もなく、本名で答える。
珍しい名前だから、頭で漢字変換ができず困ってることだろう。
幼女の口から次の言葉が生まれる。
「お姉ちゃんになにかありましたか?」
僕と美杉妹の奇妙な会話の始まりだった。
すすすすっすすまない・・・。