いつまでも傍におってくれ……
大穴もかなり深いところまで到達し、身体にのしかかる空気の重さがふくとヴォルフの動きを鈍らせる。
幸い、道中に現れる魔物もその重力に耐えるので精一杯な為、衝撃波と聖なる光の複合魔法とヴォルフの【絶対】を使えばさほど苦労をせずに、葬ることができる。
しかし、段々と血の巡りが悪くなり、視界がぼやけてくる。
二人は横穴に入り、魔物がいない事を確認すると、横穴の入り口に向かい、詠唱をする。
「『我らに安息の守りを与えよ』」
「『この地を守護せよ』」
二つの魔法は【安息】と【守護】の魔法であり、どちらも付与魔法の類で、護りの魔法だった。
【安息】の魔法は空間を毒や瘴気、熱から護り、【守護】は入り口に対して、何人たりとも入ることができないバリアのような魔法である。
【安息】では大穴の重力に対して効果は殆どなかったが、どす黒い靄に対しては少しだけ時間が稼げるので、安心して眠ることが出来た。
しかし、横になっていなければ頭痛が起きるほどの血流不足で正直ふくの気分は参っていた。
二人は結界の中で、保存食を食べ、横になって眠っていた。
すると、ふくの髪飾りが二つとも輝きだす。
あまりの眩しさに、ふくは目を細めると、ぼんやりと白い影が見えた。
『ふく様、ボクの魔法を使いなよ。少なくとも、この【重力】はなんとかなる筈だろうよ』
『一人ではこの大仕事、達成できないですよ?魔法の維持は私が受け持つので安心してください』
「忠太郎……小麦……!……すまぬの。お前たちの力使わせてもらうのじゃ……!」
白い影が消えていくとふくは髪飾りの石をギュッと握りしめる。
「『星の圧力よ、我らの身体からその力を解放せよ』」
右の髪飾りがふくの詠唱に反応し、それに左の髪飾りが共鳴し、淡い輝きを放つ。
二人の重力が緩和され、ふくの呼吸が楽になり、深呼吸する。
「……ふぅ。……お前たちがおらねば、わしは何もできなかったじゃろうの……。ありがとうなのじゃ」
「ネズミの力か……。種族、性別関係なく接してきたふくのおかげだね」
「強き者は弱き者を助け、弱き者は強き者を支えるのじゃ……。それがヒトというものじゃ。……元の世界では実現できなかったがの……」
「それじゃあ、この仕事が終わったら、ふくの理想を再現した国にしていこうよ!」
「そうじゃの……!ぼるふよ。まだ、行けるかの?」
「もちろん!」
ふくは再びヴォルフの背中に跨がり、【安息】の魔法を解く。
ヴォルフは立ち上がり、【守護】の魔法を解き、横穴から出て、再び大穴の奥底に向かって飛び降りた。
ふくの髪飾りが淡く光ることでふくたちの周りを優しく照らす。
しかし、壁と呼べるものがどこにも見えず、不思議に思う。
「【暗黒】で大地が蝕まれているみたいだ……!」
「そうか。じゃから光を反射せぬのか……。このまま降りて、わしらが【暗黒】に捕らわれても面白くないのじゃ。」
ふくはヴォルフの背中の上に立ち、精神統一する。
親指と人差し指を立てて、【梓弓】を作り出す。
大穴の深さはわからない為、大弓の形にする。
そして、聖なる光を込めた矢を穴の底に向けて放つ。
大穴の壁を浄化しながら突き進む矢は重力の恩恵を受けてどんどん加速していく。
三十秒ほど経つと、底に到達したのか光が最下層から溢れ出し、大穴は聖なる光に包まれた。
その光はふくたちには何も影響を及ぶことがなく、邪な心や力を持つ魔物に対してのみ効果があった。
「そこが見えたのじゃ!」
「急ぐよ!」
「ま、待つの――ぬううぅぁぁ!!?」
ヴォルフは壁を足場にせず、そのまま大穴の底に向かって自由落下するのである。
そこを落ちていくと、地表が見えることのない空間であり、ヴォルフは本能で危険を感じ、壁から氷の足場を作り出して着氷する。
衝撃で氷の足場が欠け、穴へと吸い込まれていく。
すると、氷が突然何かの圧力を受け、ギュッと潰れて消えた。
「な、何じゃ……!?お前の氷は普通の魔法や自然の力では消せぬ筈では……!?」
「凄い強力な力を感じる。魔物はこのヤバいのを潜ってくるのか……!?……ふく!?どうしたの!?」
ふくはヴォルフ背中の上で意識を失った。
§
ふくが目を覚ますと書庫だった。
そして、もう二度と会うことはないだろうと思っていた九尾の狐が座っていた。
「お主が、わしを読んだのじゃな?」
「いかにも。ついに世界の境界まで来たのだな」
「……あの、何でも潰す場所のことじゃな?」
九尾の狐が頷くと、ふくはある事を思い出す。
「……あれが……お主じゃの?」
「そうだ。見ての通り、此方からも彼方からも通ることができない魔法で、本来は誰も通さないものだった。しかし、魔素が急激に消費されたことで結界の意味をなさなくなった。それが、お前がこの世界に来ることができた理由だ」
「どうすれば良いのじゃ……?」
「この大穴に対して魔法的に、物理的に障壁を作ってくれ。そして、氷狼の時と同じく、魔素を欲する」
ふくは頷き、九尾の狐に背を向ける。
そして、目を瞑り書庫を後にする。
――ヒトの子よ。妖狐は尾が九本で終わりではない。全身をある時は金色に、またある時は白銀に輝かせる。お前はそこまで到達できる器である事を願うぞ……。
(分かっておる……。お主は志半ばで魔法になるしかなかった……。じゃから、この魔法をわしに与えたのじゃという事を……)
§
ふくは心の中でそう答えると、ヴォルフの背中の上だった。
「ふく、大丈夫?」
「……書庫の主が、あの【何でも押し潰す空間】の魔法のようじゃ。そして、魔素が足りない事で力を失いつつあると言っておった」
「そうか……なら、竜騎士と犬っころに頼むしかないな」
ふくは難しそうな顔をして悩む。
すると、穴の奥から強大な魔力を感じ、二人は臨戦態勢に入った。
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