狐と狐の話じゃ
『まだ終わっていない』
その言葉を聞き、ふくの表情は険しくなる。
ただでさえ処理に面倒だと感じる魔物が再び来ることを示唆された為である。
ライラやガルドを頼らず倒せるようになったとはいえ、ふく個人で倒す事のできる数も想定できる。
問題は山積するのであったが、気になることを聞くことにした。
「この世界の【太陽】とやらは、ぼるふの【心臓】を使っておると知った。やはりそれは取り出してはならぬのか?」
「どのような手段を用いてもそれは勧めない。氷狼の心臓はこの世界を作った創世の力そのもの。今、それを抜き出すとこの世界は愚か、この星そのものが破壊される。この星の心臓とこの世界の心臓は融合してしまったのだから」
「星……?あの空に浮かび上がる光る点の事かの?」
「その星と我々の住んでいるこの大地は似たようなものだ。空に浮かび上がる星はまだ別の大地が広がる。世界はそのようにできている」
ふくの顔が段々と難しい表情になっていく。
ふくのいた時代では他の惑星のことは知る術がない。
狐はそんなふくを見て、説明することをやめた。
今必要な知識では無い為、話を元に戻す。
「その事は今は関係ない。今のお前たちのやろうとしていることは氷狼を救う一つの選択肢でもある。今このまま過ごしたところで氷狼はあと五百年持つかどうかといったところだ」
「それはなぜじゃ?彼奴は神じゃろう?神に寿命があるのかの?」
「……魔素が足りないのだ。お前が来るまでの間に魔素は急激に減少している。それが、我の魔法が弱まっている原因でもある」
「……魔物が……関係するのじゃな?」
狐は深く頷く。
ポチおの実験での失敗作と不適合者の事が声に出た。
どす黒い靄やドロドロは【暗黒】の魔法である事を思い出し、それを聞く。
「わしの魔法や魔物の魔法がこの世界の魔素を失わせておるのか……?」
「お前の魔法は魔素を喰うことがない。それは直接氷狼から血を分け与えてもらったおかげで、自らの身体の一部分を使って魔力を生み出して魔法を使っているからだ。しかし、お前の言う魔物とやらは別だ。魔障石の中に入っているのは【蓄積】の魔法。これは……本を見せてやったほうが良いだろうな」
狐は人差し指を本棚に向け、一冊の本を取り出す。
お馴染みの『魔法大全』の本である。
直接触れず、魔力でページを捲っていき、目的の項目を開くとふくに渡す。
「……【蓄積】魔力や魔素などを魔石に貯める、空間に液体や気体を一定時間、定量集める魔法。これが、あの黒い石の中に入っておったのか?」
狐は頷くと、ふくは口に手を当てて考える。
「あの石に魔力を貯めたとして、悍ましいものになるものなのかの……?いや……魔素を貯めていく……怨念や呪詛……か……。そうじゃ……!冥骸獣はここ最近生まれておるのか?」
「生まれてはいないな。なぜそう思ったのだ?」
「鳥の者たち、竜の者たちがそれぞれ滅んだと聴いておる。そして、その惨状を見てきた。本来ならば誰も弔うものがおらぬあの地に、冥骸獣が蔓延っておるはずじゃ……。あの地におったのは、魔物ではない……ポチおの言う新人類に近しい者しかおらんかった。そして彼奴は今までに無いほどの禍々しい魔障石と魔力を持っておった。姿形が安定せぬのは……彼奴らも魔素が足りないと言うこと……。」
ふくは腕を組んで首を垂れる。
「地上の発展のためにわしらの世界の魔素は奪われておる。そして、魔素を大量に得るためには、この世界の住人を滅ぼす必要がある……。ポチおの言っておった【命令】はおそらくそう言うことなのじゃろう……」
「では……秩序が保たれなくなったこの星の命を壊し、全てを滅ぼす道を選ぶか?」
「たわけ!わしは別に世界を滅ぼすつもりはないのじゃ!……嫌なこともたくさんあった……。じゃが、わしを愛してくれる者……信じてくれる者……協力してくれる者たちの事がおるこの世界が好きなのじゃ……。地上はわしを求めておらぬ……。ならば、このぼるふの世界を護り、繁栄させるのがわしの役目じゃ。二度と玉藻のような者を出さぬよう、子供たちも護るのも使命……と言うものかもしれぬ」
狐はふくの決意を聴き、フフンと笑い、姿が揺らぎ始める。
「お前の征く道は険しいものだ。今以上に魔法に磨きをかけておく事だな……。もう、其方と話すことはないだろう。氷狼を頼んだぞ……」
白い靄となって姿を消した狐のいた所をジッと見つめたふく。
眉を上げ、困ったような表情をしながら口を開く。
「当たり前じゃ……。地の底でジッとしておれ……」
そう独り言を呟いて書庫を後にする。
『九尾の狐となった者よ……氷狼を……この世界を救ってくれ……』
そのような声が聞こえ、目を開けるとヴォルフの上に寝転んでいた。
起き上がり、背伸びをするとヴォルフも釣られて起き上がる。
「ふあぁぁあ……。ふく……おはよ……」
「おはよう、なのじゃ。よく眠れたのかの?」
「うん……。久しぶりにたくさん眠ったと思う……。ふくはどうだった?」
「わしはいっぱい交わり過ぎて、腰が痛いのじゃ。もっと手加減して欲しいのじゃ」
そう言いお腹を摩りながら愛おしそうな顔をしているふくを見て、ヴォルフはドキッと心が躍ったのだった。
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