梓弓は凄いのじゃ
「すごい魔力だね……!」
「まだ、完成ではないのじゃ。それにのせ――ぼるふ!そこを離れるのじゃ!」
ふくが指を指した先から飛び退くと、どす黒い槍が突然飛び出てくる。
「くそっ!モヤモヤとドロドロだけじゃなくなった……!ごめんふく!もう、足止めできそうにない……!」
「……っ!ぼるふ!聖なる力とは何か分からぬか!?」
「……わかんないよ!そんなの使ったヒトいないはずだもん!」
「……そうか。お前でも分からぬか……。ぼるふ……わしはお前を信じて今から彼奴に矢を打ち込む。余程魔力が多いのであれば多少なりと傷を与えられるはずじゃ。そこを狙って倒して欲しいのじゃ」
「……うん!オレもふくを信じるよ!だって、初めてヒトを好きになって、初めてヒトから選んでもらえたんだから!」
「な、何を……!?今言うことではないであろう!?そりゃ、勿論嫌じゃないが……。時と場所を選ぶのじゃ!」
ふくがヴォルフに対し焦ったような、嬉しそうな感情をしていると、ふくの持っていた二つの石とヴォルフの持っていた石が輝きはじめる。
採掘場の中を眩い光が支配し、【それ】は光から身を守るように靄とドロドロで繭のようなものを作り身を守る。
「な、なんだこりゃ……!?」
「忠太郎……小麦……こりい……。お前たちなのじゃな……」
チュータロー、コムギ、コリーの遺した石が光を放ち、ふくとヴォルフの中に温かいモノとして吸収していく。
『ふく様……!聖なる力とはお互いを想うキモチが大事ですよ!』
「こりい……」
『今のアンタなら最強の光の魔法が使えるかもね……!』
「忠太郎……」
『ふく様。ヴォルフ様のこと、いっぱい大好きでいてね?ヴォルフ様も、ふく様のこと守ってあげてね?』
「もちろんだ」
「小麦……」
光はどんどん収まっていき、石から輝きが失われる。
ふくは覚悟を決めた表情をし、魔力を最大限まで昂らせる。
すると、今までは顔と手首にだけ紋様が浮かび上がっていたのだが、初めて妖狐になった時のように全身に赤い紋様が浮かび上がっていく。
「お前たちのことも、ずっと大好きなのじゃ。もちろん、ぼるふの事だってたくさん愛しておる……。これからもの……!」
矢に魔力を全て注ぎ込み【梓弓】を構える。
ふくは決して運動能力は高くない。
見様見真似で流鏑馬のように弓を構える。
ヴォルフが最大限揺らさないように気を配っているが、それでもフラフラとしてしまう。
「ふく……!ごめん!立ち止まってあげたいけど、アイツの攻撃が……!」
「分かっておる!わしが何とかするから、ぼるふは動き続けるのじゃ!」
ふくはヴォルフの動きを制限させないように強がる。
ヴォルフは尻尾をふくの腰に巻き付けて振り落とされないように固定する。
そして、急加速して【それ】に接近する。
「ふく!二回くらいならアイツに近づけられるかも!」
「う、うむ……!その時に狙い撃ちすれば良いのじゃな!」
急加速による重力と風圧に耐え、【梓弓】の弦を引く。
急接近した瞬間、【それ】の身体に何も起きなかった。
ふくは矢を放つことが出来なかった。
速すぎるスピードに耐えるだけで精一杯であった。
そしてその速度に対応ができる【それ】の反応速度にも驚くものであった。
「すまぬ……。わしは……」
「大丈夫……!もう一回出来るさ。準備はいい?」
ヴォルフは尻目でふくを見ると、それに気付いたふくはヴォルフの頭を撫でて再び弓を構えた。
そして、再び超高速の中、狙いを定める。
先ほどより速度が上がっており、重力も風圧も強くなり、狙いを定めるどころか、構えることすら出来なくなる。
ヴォルフは嫌がらせでそういうことをしている訳ではなく、【それ】の背後に回った瞬間、最高速度を出して一気にすれ違う。
【それ】は背後を取られた時に振り向いていた為、再び背後をとる形になり、ヴォルフの牙が【それ】の喉笛を噛みちぎり、四肢を空中に放り投げる。
「今だ!ふく!」
ヴォルフの合図を受け、素早く構えて狙いを定める。
ヴォルフが何かを狙っていたことを察していたふくは、ヴォルフが走っている間は弓矢を構えず、いつでも放てるように神器【梓弓】の最大出力を維持していた。
「『悪しき者を打ち滅ぼせ!』」
【梓弓】から放たれた光の尾は真っ直ぐ【それ】に向かって突き進む。
それを阻止するため、ドロドロを槍状に変化させ矢に向けて放つが、打ち砕かれ、霧散していく。
「な……!?【暗黒】が負けた……!?これならどうだ……!!」
靄とドロドロをかき集め、大きな盾のような壁を作る。
ふくの光の矢は【暗黒】の壁をものともせず易々と打ち砕き、全てを浄化させて突き進み、【それ】を射抜く。
そのまま採掘場の壁に当たった瞬間、【浄化】とは比較にならない程の光が支配し、どす黒い靄やドロドロによって黒く蝕まれ死んでしまった土地を元の状態へと戻す。
【暗黒】に蝕まれても浄化できる【梓弓】の力を目の当たりにしてふくは呆然とする。
そして、魔障石となった魔石は射抜かれた際、完全に打ち砕かれ、どす黒い靄も同時に浄化された。
事実上、ふく一人で魔物を斃すことが可能になった瞬間である。
砕かれた魔石がふくの矢の光で乱反射し、キラキラと採掘場を幻想的に照らしたのだった。
いつもありがとうございます!
『良かった!』
『面白かった!』
『続きを見たい!』
と思って貰えましたら、
お話の下にあります
☆☆☆☆☆
から作品への応援をお願いいたします。
面白かったと思ったら☆を5つ
つまらないと思ったら☆を1つ
正直に伝えていただけると今後の作品にしっかりと反映していきたいのでよろしくお願いします。
また、ブックマークも頂けるととても嬉しいです!
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
何卒よろしくお願いいたします。




