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珍しい魔法の持ち主なのじゃ

「いた!」

 

 ヴォルフは魔獣を発見し、魔獣の周りを回りながら減速していき、真正面に立ち塞がり三人を背中から降ろす。

 ライラとにゃんは足をガクガクと震わせて碌に立てるような状況ではなかった。


「ぼるふ、お前は少し加減して走る事は出来んのか?」


「……ちょっと遅く走ったんだけど」


「……?ぼるふ、ヒトの姿になるのじゃ」


 ふくはヴォルフを獣人の姿にさせる。

 何故そのようにしたのかわからず、首輪や傾げていると、ふくはヴォルフを抱きしめ、マズルを胸の中に埋める。


「よくやったのじゃ。お前はよく頑張っておるのはわしがよく知っておる。そんなに拗ねるでない」


 優しく頭を撫で、手櫛で髪の毛を解いていく。

 元々体毛であった為、髪の毛は非常に硬く太い毛であり、魔力を込めると鋼のように硬くなる特性はあるようだった。

 そして、撫でられていくうちにヴォルフは尻尾を左右にぶんぶん振って嬉しさをアピールする。


「さて、にゃんの戦闘を見てみるとしよう。ライラも魔獣と少人数で戦うのは初めてじゃろう?二人で協力して倒してみるのじゃ」


「えっ!ウチも!?で、できるかな……?」


「ら、ライラさん!よろしくお願いしますっ!」


 魔獣は四人が目の前に現れても逃げもせず、枯れた木の枝をバリバリと食べ進んでいた。

 植物の少ない世界でこの巨体になるまで成長できるこの魔獣の生態にふくは不思議に思う。

 にゃんは納めていた爪を出して毛を逆立てる。

 そして、膨大な魔力を解放させ、王族変異の状態になる。


「フーッ!フーッ!」


「にゃん!少し落ち着いて!そんなに魔力出したら気絶しちゃうよ!」


 ライラの一言でにゃんは魔力を抑え、呼吸を整える。

 にゃんの魔力量はライラを遥かに超えており、王族変異する体質に驚きつつ魔法についてを話すことにした。


「魔法はおでこのあたりに生まれつき一つの魔法があるの。それを魔力で呼び起こしてあげると、『言葉』が返ってくるよ!」


「や、やってみる……!」


 ライラの言う通り、魔力をおでこに集中させるように意識をすると頭の中でザワザワと音がし始める。

 突如、頭を両手で抑え蹲る。


「だ、大丈夫!?あ、逃げてしまう……!どうしよう……!」


 にゃんの心配をするか魔獣を倒すか迷っていると、閃光の如く魔獣の横腹に飛び蹴りがさく裂し、ゴロゴロと転がっていく。


「『木の檻』」


 短く詠唱したふくは魔獣の体を拘束し、締め上げていく。

 そして、にゃんの頭に手を当てた瞬間、ふくの頭の中にもザワザワとした音が響く。


「……こやつ、二つの魔法を持っておるのじゃ……!一つはアツリョク?と言うものを変える力。もう一つは……なんじゃ……?」


 ――バチッ!


 にゃんの頭に触れていたふくの手が何かに弾き飛ばされた。

 痺れるような衝撃を受け、掌を見る。

 特別外傷は無かったのだが、拒絶されたような痛みであり手をぎゅっと握る。

 

「どうしたの?」


「む……にゃんの魔法を調べようとしたら弾かれたのじゃ。あの魔法……わしの書庫でも調べられぬかもしれんの……」


「そんな変わった魔法の持ち主か……。王族変異が起きるのも納得かもな」


「……少し書庫に行ってくるのじゃ」


「いってらっしゃい」


 ふくは瞳を閉じて書庫に向かうのであった。


 §


 書庫に辿り着くと本が一冊落ちる。

 拾い上げ、表紙を見るとやはり【魔法大全】の本であった。

 開くことができるページを開くと【変圧】と書かれてあった。


「ふむ……物や大気のアツリョクを変えることができる魔法。圧力を増やしたり減らしたりすることで物の性質を変えることができるが、戦闘向きの魔法ではない……か」


 本を閉じ、棚に収めようとした瞬間、書庫に向かって訊く。


「のう……わしの魔法よ。わしの知らぬ魔法は分かるのかの?」


 書庫から返事が返ってくる事はなく、本はすんなりと収められた。

 さすがにどんな魔法か知らなければ調べることができないらしい。

 ふくは諦めて目を閉じ、書庫を後にした。


 §


 目を開けるとにゃんは頭を押さえており、それを心配するライラ、そしてふくを支えていたヴォルフと拘束された魔獣がいた。

 やはり書庫の時間はこちらの世界と大きく違うようで、殆ど時間が経っていなかったようだ。


「ふく、おかえり。早かったね」


「お前はわしが書庫におる間とそうでない時間が分かるのかの?」


「うん。帰ってきたのは分かるよ?」


「そうか。にゃんの魔法は【変圧】と何かのようじゃ。」


「【変圧】か。戦いには向かない魔法だな。なら、武器を持ってやるしかないが、今は持っていないからライラがやってみるか?」


「えっ!?ちょっと……自信……無いかな」


 ライラは自信のなさそうな表情を浮かべつつ魔力を昂らせていく。


「『火の力よ……彼の者を燃やす火球を放て!』」


 頭上に向けて手を翳すと大きな火球が生成され、その大きさはライラの身長の二倍の大きさであった。

 ヴォルフはそれでは魔獣を仕留めることが出来ないと考えていると、にゃんがライラの魔法に向けて手を向ける。


「私の魔法……戦闘には向かないかもしれませんが、手助けにはなるかもしれません……!『圧力よ、火球を槍のように形を変え、後部より圧力を抜き、閃光の如く速度を手に入れよ』」


「お?長い詠唱」


 ヴォルフがワクワクした表情で作り上げられていく火の槍を見つめていた。

いつもありがとうございます!

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