王族の頑張りなのじゃ
半刻も経たずに帰還したヴォルフとふく。
国はすでに三割ほどの建物が破壊されている状況で、国民たちが【それ】に対して応戦していた。
ふくは壊れている国を見てギリィと歯を鳴らし、手を握り締めた。
「ふく!早く行こう!」
「……そう、じゃな……!」
ふくはヴォルフの首の毛を掴み直し、そこに目掛けて跳んだ。
§
ふくとヴォルフが到着する少し前の出来事。
【それ】の出現で国は大混乱に陥っていたが、戦闘訓練を受けていたヒトたちは混乱しながらも、なんとか動くことはできていた。
「負傷者を退避させつつ、他の部隊は火力を上げて足止めするのだ!」
レオンは大声で指示を出すと、手を合わせて詠唱に入る。
「『大いなる風の精霊たちよ、我が敵の手足を切り刻め!』」
強い風が吹き荒れ、【それ】を翻弄していると、風でできた刃が手足を襲う。
しかし、風の刃は表皮すら貫くことができず、弾かれた。
攻撃を向けたことで、レオンに標的が向き大きな体に似つかわしくない速さで迫る。
再び手を合わせ詠唱に入るレオン。
「『土の精霊よ、我をま――』ぐうぅぅっ!?」
詠唱は間に合わず、【それ】の一蹴りで腹部を貫通され吹き飛ばされる。
壁にたたきつけられる瞬間レオンは空中に浮いていた。
「レオン様!しっかりしてください!」
「ゴフ……。セイラ殿……。私は……ここまで……のよう……だ……」
「何を言っているのですか!?治癒部隊に診てもらえればまだ助かります!」
「自身の……ことはよくわか……るのだ……。血を……なくしすぎた……」
セイラが空を飛べるといっても、流石にレオンを足で捕まえたまま空を飛ぶのは一苦労であり、戦場から少し離れたところに着地する。
意識が朦朧としているレオンの顔をペシペシと叩いて戻すが、次の瞬間には右足がボロっと崩れた。
セイラは突然のことで混乱している一方、レオンは最後の力を振り絞って手を合わせる。
「ぐふっ……最後の力をふく様の……お子様……に……精霊の……」
光が地面の中に吸い込まれていき消えていく。
そして、レオンは安堵したような表情をし、全身の力が抜け、永遠の眠りについた。
別れを惜しまないかのように、右足と同じく全身が砂のように崩れ去り、石が残った。
「あ……ああ……!そんな……レオン様……!」
セイラは砂となったレオンをかき集めるが、戦いの余波で全て吹き飛ばされていく。
残ったのはキラリと輝く石だけであった。
それを拾い上げ、胸に当てて無力な自分を責めるように大粒の涙を流し、悲痛な叫びを上げた。
§
野狐族はコリーによって逃がされている最中であった。
それは野狐族に戦闘に参加させないためであった。
綱彦の件で【命令】の術者が居なくなったとしても、残滓だけでも発動されることを想定した動きである。
実際、何人かが歯が立たないにも関わらず突撃し、命を落としていった。
コリーの考えでは『綱彦を身を挺して守れ』という命令が下されているのだろうと分析し、死んでもなおその効果が残る【命令】の魔法の厄介さに悪態をつく。
流石に千年の時を経ている為、イナホや千年前の野狐たちはおらず動きの悪い野狐族にイライラしていた。
「早く避難するんだ!間に合わなくなるぞ!」
「なんで避難するのさ……」
「野狐は戦いに参加させてくれないのか……」
「国のために死ぬつもりで戦うのに……」
各々がコリーの方針に文句を言っていく。
それでも、コリーは野狐族を逃す方針は変えない。
(いつか、あの化け物と対抗できる存在を作るために野狐は絶対に絶やしてはならない……!)
その気持ちでコリーは動き、男女問わず尻を叩き、避難させていく。
するとフワッと温かいものが野狐族とコリーを包む。
その気配は野狐族の【命令】の刻印を取り払い、綱彦の束縛を解いていく。
そしてコリーは思わず涙をポロポロと流す。
「レオン……お前……死んだのか……?」
精霊魔法による解術は何度か見たことがあり、温かいものはコリーに何かを伝えようとしていたことに気がつく。
ひとりの野狐族の女性が抱いていた赤子にその力が集まっていく。
顔に紋様を持つ、二尾のキツネ。
「綱彦のやつ……こんなところにふく様の子供を……!皆のもの!この子供は必ず守り通せ!すぐにこの国から避難するのだ!」
呪縛から解き放たれた彼らは頷くと足早に国から脱出を試みる。
素直に歩いてくれる彼らたちを見て安堵した瞬間、彼の下半身は消し飛んだ。
比喩ではなく、文字通り消し飛んだ。
地面に叩きつけられながらも、上体を起こし、【それ】を見る。
「コイツ……いつの間に……!?お前ら!俺のことはいいから早く逃げろっ!」
目眩し程度の威力しかないが、魔道具で【爆炎】の魔法を発動させる。
小さい魔力でダメージが殆ど通らないが、しばらくの間は時間が稼げると思い、その選択をとった。
結論、その選択は間違いではなく、野狐族に標的が向かずコリーに集中する。
コリーは胸ポケットから小さな石を取り出して祈る。
「コロン……俺に少しだけ力を貸してくれ……!」
眩い光がコリーを包み込み、彼の体を宙に浮かせる。
石の中にはコロンの意思、【飛行】の魔法が込められていたようで下半身を失った彼の機動力となる。
大量の血液がボドボドと流れ出て、残された時間は少ないと悟る。
「さあ、バケモノさんよ……。少しだけ……付き合ってくれよな……!」
【飛行】と【見切】の魔法を併用し、【それ】と対峙する。
一撃貰えば即死の攻撃を紙一重で躱し、石斧で頭蓋骨を割っていく。
鋭いものなら切れた可能性もあったが、敢えて切れ味のないこの武器を好むコリー。
理由は簡単で、よく切れる刃物は切れ味の管理が大変であること、それだけである。
切れるモノなら刃こぼれや血液、脂など切れなくなる要因に気を配る必要がある。
切れないならそのような事を気にせずに攻撃を続けられるためでもある。
それでも、【それ】の表皮はかなり硬く、ダメージが通っているか不安になるレベルだった。
触手のようなモノを潜り抜け、石斧を顎と思われる部位に打ち付けたのだった。
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