龍の王が出たのじゃ
暴風雪が吹き荒れ、視界が非常に悪くなる。
さすがのライラでも超低温に対応することは難しく、ガルドと自身を【高熱】の魔法で暖める。
ドラゴンは竜人族と同じく気温が低いと動きは鈍くなる。
しかしそれは、寒さに弱い個体種だけの話であり、海からやってくる正体不明なものは速度を緩めずに飛んでくる。
周りを囲もうとしていたドラゴンたちは半数以上は行動不能になり、逃げ道ができていく。
「さすがに逃げましょう!囲まれてはあなた達でも生き残るのは難しいです!」
「そうじゃろうか?別に強い龍がくるわけじゃないのじゃから、問題なかろうて?」
「海から来ているのは龍王なんですよ!」
「こっちから行く手間が省けたのじゃ。挨拶くらいはせんとの?」
――随分と嘗められた挨拶だの……この女狐が。
声のする方へ顔を向けると鱗のほとんどが堅殻となり、後方へ伸びる一対の角、頭頂部から背中にかけて生える鬣、腕が翼となっているが腕として使うこともでき、蛇のように長くしなやかな尻尾、そして全身を黒色の堅殻と鱗と金の瞳、そして王族の証である赤い紋様が顔に現れていた。
「り、龍王……!?」
「なんじゃ、この空飛ぶトカゲが龍王とな?大したことないの」
「ち、挑発しないでくださいよ!」
突如、龍王の口から炎が吐き出され、その炎にふくは包まれていった。
ガルドは水の魔法で火を消そうと詠唱をした瞬間、炎は水の膜につつまれ、消火された。
誇りを振り払うかのような仕草をした後、指を龍王に向けた。
すると【何か】が龍王の首に当たり、吹き飛ばしていく。
「わしに攻撃をするのは千年早いのじゃ」
そう告げた瞬間、極太の光がふくに向けられて襲い掛かるが、空気と水を含ませた高密度の大気で光を屈折させて軌道を捻じ曲げた。
そしてお返しと言わんばかりに先ほどの炎よりもより高火力である【蒼炎】を龍王に向けて放つ。
二人の争いは激化し、魔法と攻撃の応酬が繰り広げられる。
「やっぱり始まっちゃったか……」
「ヴォルフ様……どうしてふく様はあんなに戦うの?いつもはあんまり戦わないのに……」
「ふくは一番上になりたいからね……。それに、トカゲの見た目をしている龍族のことは毛嫌いしているんだ。クソドラゴンも自分のことを一番だと思っているから喧嘩になるかな?って思ったけど、やっぱりなっちゃったな……」
「と、止めないとあの魔法の強さはどんどん陸がなくなっていきますよ……!」
ヴォルフは頷くと獣人の姿となり、背後からふくを抱きしめる。
その隙を見逃さずに攻撃を入れようとした龍王に向けて【絶対】による拘束魔法で手足の動きを封じ込めた。
「はい、喧嘩はそこまで。ふく?落ち着いて。ウサギちゃんともふもふドラゴンがビビってるから。おいクソドラゴン。神になったばかりの妖狐にボロ雑巾にされてるじゃねえか!腕が鈍ったんじゃねえのか?」
――貴様……氷狼ヴォルフか……!我らの争いを止めるとは何事だ!
「ちったあ頭冷やせよ、クソドラゴン。だから俺の嫁に負けるんだよ」
「嫁になった覚えはないのじゃが?」
「え?!違うの!?」
ふくが頷くとヴォルフはがっかりしたように肩を落とす。
ヴォルフはそのようなことをしてる場合ではないと気が付き、龍王に向かって歩き出す。
「クソドラゴン。俺の国――」
「わしの国じゃ」
「……ふくの国にドラゴンを送らないでくれ。じゃないと全部殺すからな」
――ふんっ!我は命じた覚えはない。個々が勝手に襲っているだけだ。
「じゃあ、全部殺すからな。文句言うなよ?」
――勝手にするがいい。こちらも侵入した奴らは全て葬ってやるからの。
二人の交渉が決まり、お互いそっぽを向く。
ヴォルフはふくの肩に手を当てて目を合わせる。
ふくが龍王のそばにより、口を開く。
「お前の国に野狐族の赤子は来ておらぬだろうか?」
――来てはおらん。そのような赤子を食したところで腹の足しにもならんわ。
ふくは龍王に食べられていないことを知り、安堵する。
そして、もう一つ気になることを訊ねた。
「そうか……では、【異形の怪物】ついては知っておるのかの?」
――最近、現れる【ヤツ】のことか……。同胞から倒すと面倒なことになると報告は受けている。
「正体こそわからぬが、わしらにとって共通の敵じゃ。気を付けることじゃの」
それだけ伝え、龍王に背を向ける。
違和感を察した龍王はふくに質問する。
――貴様は手を抜いておったのか……?
ふくは立ち止まり、振り向かずにその質問に答える。
「そうじゃの。少なくともわしの本気の魔法は一度も使っておらぬからの」
そう答えるとライラとガルドのもとに歩みを進める。
ヴォルフは龍王の拘束魔法を解除し、四人は集まる。
「ふく様?これからどちらへ向かいますか?」
「そうじゃのぅ……。玉藻がおらぬからの……」
「一旦国に戻らねぇか?ふくの子供について何かあるかもしれないし、野狐に対しての措置もしないといけないから」
「措置ってどうするの?」
「とりあえず……十人くらい処刑するか?」
「ならぬ!」
ヴォルフはふくの力いっぱい込められた拳で殴られるのだが、そもそもふくの腕力はほとんどないに等しいのでダメージはない。
しかし、ヴォルフの発言に憤慨している様子を見て、ヴォルフは反省する。
「じ、冗談だよ……?」
「お前が言うと冗談に聞こえぬのじゃ!全く……」
――話しているところ悪いが、【それ】が最初に出てきた穴からとんでもない魔力をした【もの】が現れたぞ?
龍王の魔力感知が非常に広いということにも驚いたが、ふくとヴォルフは頷いて国の方向へと神速で走っていった。
取り残されたライラとガルドは恐る恐る龍王に土下座する。
「ど、ど、ど、ど、どうか……私たちもそこに連れて行ってくれませんか……?」
「こ、こ、こ、こ、この通りです……!」
龍王はため息をつきながら尻尾を差し出す。
――早く乗るのだ。今回の奴は相当強いぞ。
それを聞き、二人は気合を入れるように拳をぎゅっと握りしめたのだった。
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