ふくのためなら何でもする
ヴォルフはニオイを追って行くと小屋に辿り着く。
そこには龍のニオイがし、気を引き締めて扉を開ける。
そこには綱彦とドラゴンの核とも言える水晶体があり、不敵な笑みを浮かべヴォルフを見る。
「ふくの子供を返せ」
「無理な話だ。既に餌送りにしてやったあとだ。お陰で我は莫大な財と力を得られた。そして……この龍の核を使えば我も龍になれる……」
大きな水晶体を腹部に突き刺し、腹から、口から血液をぼたぼた撒き散らして行く。
ズブズブと石は綱彦の体内へと入り込んでいく。
ヴォルフの耳でも聞こえるほどの鼓動が速くなっていく。
キツネの体毛は抜け落ち、新しく羽毛のようなものに生え変わり、尻尾や首は長くなり翼を持たない龍に成った。
「レックス種か……外皮は非常に硬い筈だな」
龍に成った綱彦はグルグルと喉を鳴らし、威嚇をする。
「ゴオォォォォアァァァッ!」
(この龍はふくでも勝てない龍の一種……ヴォルフがいくら神でも敵わない力を持っている筈……子供も野狐を命令し、売り払った……我の勝利だ……!)
綱彦は意識が混濁していく中、勝利を確信して綱彦という人格も身体も消滅し、完全な龍となるのである。
ヴォルフは綱彦の事などお構いなしに魔力をどんどん昂ぶらせていく。
ふくの表情を思い出し、どんどん怒りに満ち溢れ、今までに使ってきた魔法よりさらに冷たく、時を止めるという優しいものではなく、さらに無慈悲な概念に変わっていく。
そして、ヴォルフの顔の紋様が変形し、より神の領域に踏み込んだものとなる。
ヴォルフの吐く息は全ての命を等しく時を止め、その足音は命の残り時間を刻んでいく。
その眼は獲物を冥界に送ることを許さず、死よりも重たい全ての物事が停止された世界へと送り込み、その魔法は触れる物を凍らせ、細胞を構成している元素や電子の動きを停止させる。
そうなってしまうと、結合する力は完全になくなり、元素レベルで崩れ去っていく。
綱彦だったドラゴンは文字通り、塵になり消え去っていった。
「お前は……お前が生きた証は……その子供に託されたんだぞ……。それを売り飛ばすなんて……」
ヴォルフは国中を走って玉藻を探しに行った。
野狐族の集落に聞き込みをしても知っている者はおらず、空振りに終わる。
様々な国民に聞いていくも、これと言った情報はなく、途方に暮れる。
「くそ……!ふくの子供の情報が出てこない……!」
ヴォルフは足を進めて国外に出ていく。
レオンから聞いた話では一応国内なのだか、あまりにも郊外すぎて国内と扱うべきか悩むそうだ。
そして、集落が見え、中に入ると数人の野狐族が住んでおり、ヴォルフは聞き込みを開始する。
「なあ、ここに赤ん坊を連れた野狐の男を見なかったか?」
「いえ、見ておりませんが?」
「見たら報告してくれ」
そう言い残し、集落を後にする。
いくら足の早い者でも、この集落まで行けるのはヴォルフ以外存在しない。
途方に暮れ、ヴォルフは居城に戻り、ふくの元に行く。
既に治療は終わっており、身体は無事なのだが、心が沈んでいた。
「ふく……ごめん……。子供……見つけられなかった。」
「……ふ。ふふ……。ふふふふふ……。良いのじゃ。わしにバチが当たったのじゃ……。不甲斐ないばかりでなく、酷いことをして許してもらえるものではないわの……。」
ヴォルフは獣人の姿になり、ふくを優しく抱きしめる。
漏れ出す冷気はふくの火照った体には心地良い温度であった。
段々と泣く声が聞こえて、力が無くなっていく。
ヴォルフは以前使った霊魂を呼び出す魔法を使おうと考えるが、条件が足りず諦める。
霊魂を呼び出すためには肉体が必要不可欠な魔法であり、それもほぼ全身揃っていないと呼び出すことは出来ない。
霊魂が殺害や無念の死によって地に縛り付けられていても変わらず、一部の魂は肉体と結びついている。
時間と共に地と完全に結びつき、冥骸獣となって二度と呼び出せなくなる。
そんな冥骸獣は地縛霊のような存在で肉体だけでなく怨念などが魂と結びついて複雑化し、正常な考えができなくなり、暴走する。
今もふくの子供がそのような存在になったとするならば倒すのは非常に心苦しい。
そして、赤子の冥骸獣は非常に強力な個体になりがちであり、下手をすればヴォルフ以上の脅威にもなりうる。
それは生への執着心や出生により赤子は強くなるためである。
生きるために生まれ、生まれながら二尾の狐である玉藻は才覚だけならふく以上だったかもしれない。
そんな存在が冥骸獣になれば弱いわけがなく、この国を簡単に滅ぼすことができる。
「まさか……ふくの子供を冥骸獣にしてこの国を壊すつもりじゃ……!?」
ヴォルフはつい口を滑らせてしまい、不味いことを言ったと口を一文字にする。
「ぼるふ……わしの子は……化け物になってしまうのか……?」
「まだ、決まったわけじゃない……。でも……もしそうなったらオレは……」
ヴォルフはそれ以上先の言葉が出なかった。
『殺す』
そのたった一言がどうしても言えなかった。
決して出来ないわけではない。
ヴォルフの子供でもないため、容赦なく殺すことは出来る。
それをふくにだけ言うことができなかった。
どう説明するか、迷っていると首周りの毛の上から殴られる。
ふくの力では殴ったところでダメージは無いのだが、少し痛みを感じた気がした。
ふくは涙を拭い、ヴォルフを見る。
泣き腫らして真っ赤にした眼がその辛さを物語る。
「ふく……」
「玉藻を探しにゆくぞ……。あの子を一人にしてはならぬ……。せめて、わしの手で……最期を……」
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