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己の罪

 ふくは無事にヴォルフの元に戻り、治療を受けていた。

 身体中の骨に異常が出るほどの暴力を受け、【治癒】の魔法ですら治すのに時間がかかり、結局半年ほど身動きが取れずにいた。

 その間は【命令】を受けていたとはいえ、沢山の国民を殺してしまった罪で投獄されていた。

 綱彦は捕まる事なく逃げ回り、次第に国で目撃情報が減り、野狐の独裁政治は終焉した。

 ヴォルフは毎日ふくが居る牢獄へ足を運んでいた。

 今まで自由に話せなかったことで、毎日どころか休憩の合間にふくのそばに行き、話をする。


「――でな、今日なんか馬族にすげえ奴いたんだ!」


「……お前は、わしのこと嫌いではないのか?他の男を孕って、その子を産もうとしておるわしを……」


「???ふくはふくでしょ?オレはふくのそばに居て最期までふくのやっていくことを見ていきたいからね」


「やはり、お前には敵わんの……。じゃが、お前の願いはここで潰えるのじゃ……。わしは同族も国民も殺した大罪人じゃ。死んで詫びる他なかろうて……」


「そうはさせませんよ?」


 地下牢に突如野太い声が響き渡る。

 足音は二つ。

 大きく、それでも静かに歩くその様は猫科の特徴であり、もう一つの足音は硬い脚と爪をカリカリと鳴らしていく鳥の特徴を持っていた。


「獅子頭と鳥の女王か」


「れおんが……?鳥の女王とは……?」


 レオンとセイラが牢の前に立ち、跪く。

 因みにヴォルフはふくと一緒に牢に入っており、セイラは驚き、レオンは呆れていた。

 

「ヴォルフ様……流石に牢に入るのはいかがなものかと……」


「あ、自ら入った感じなのですね……」


「何か用事でもあった?」


 セイラは下げていた物を広げていき、首や手首足首に拘束具のような物を着けていく。

 ふくは裸にされていることもあり、ヴォルフはゴクリと喉を鳴らす。

 そんなヴォルフにふくは睨むと、目を逸らされる。

 

「この魔道具は【分析】というものが入っています。この魔法は貴女にかけられた魔法の痕跡を調べる力があり、貴女の無実を証明する物です」


「魔法を解いて結構日にちが経つが、痕跡は残る物なのか?」


「ええ、野狐族へこの魔道具の力を事前に試して結果を残してます。彼らはには【命令】の魔法が刻まれていました。ふく様に千年間魔法をかけ続けるならばより深い刻印を刻んでいるはずです。分かり次第、除去します」


「わしは……操られたとしても死ぬべきじゃと思うのじゃが……」


「それは逃げているのです。貴女は責任を感じているのであればその罪は生きて償いなさい」


 レオンの指摘にふくは不服そうな顔をする。

 話している間に【分析】が終わったようで、セイラは大汗をかいていた。


「非常に強い刻印が刻まれてありましたが、無事に取り除きました……!ありえないほど深く刻まれていたので、頭が少しスッキリしたように感じたと思います」


「ふく、お前はツカヒロの魔法で操られていた。この事実は国民に知らせて説明はする。ふくは少し休んで、子供を産むことに専念するといい」


「綱彦じゃ……。すまんの……彼奴との子供というのが気に食わないが、わしの子でもあって……の」


 ふくは愛おしそうにお腹を摩っていく。

 セイラは汗を拭うとふくの前に座る。


「そろそろ、臨月となるごろです。体調にはお気をつけてくださいね?」


「まだ、早くないかの?腹の膨らみからして、まだ半年ほどしか経っておらぬ気がするのじゃが」


「【分析】の時に一緒に診たのです。魔力の供給は絶たれ、既にお子様は魔力と魔法を構築している状態なのです。ここまでいくと、あとは産まれるだけです」


 そう伝えられ、ふくの顔が引き締まる。

 人間時代、子供を産んだことがあるのだが、非常に痛い目を見たことを思い出していた。

 レオンはふくの不安そうな表情を見て、セイラに声をかける。

 

「セイラ殿、ふく様が産気づいたら頼めるだろうか?」


「えぇ、わたくしが行くべきでしょう。治癒魔法も少しは使えるので大丈夫だと思います」


 どんどん出産準備が進んでいき、ふくはその早さに驚いていた。

 非常に手際の良い準備で、今すぐに出産するのではないかと思う早さであった。



 日も完全に落ち、周囲が闇に包まれたごろ、居城の地下から叫びが聞こえた。

 ふくは陣痛が始まり、痛みのあまり叫ぶ。


「う……うぅっ……!あ……ぐぅぅっ!」


「ふく様!呼吸を整えてください!下手に力を入れると貴女も子供も傷ついてしまいます!ゆっくりです!ゆっくりと深く息をするのですよ……」


 痛みに耐え、呼吸を整え、集中するが痛いものは痛い。

 お産は人間の頃より早く進むようで、あっという間にピークが訪れる。

 近くで声だけ聞いていたヴォルフは戦々恐々とし、廊下をウロウロ歩く。


 少しするとふくの叫びはなくなり、静けさに包まれる。

 セイラは走ってヴォルフの元に行くと息を切らしながら報告をする。


「生まれました……!子供は二尾の狐の女の子です!名前は既に決めており、『タマモ』と言われるみたいですよ!」


「本当か!ふくは無事なのか?」


「はい!母子共に健康で、ふく様はあと胎盤が出次第、治癒をかけ――」


「待つのじゃ……!玉藻を返すのじゃっ!」


 突然ふくが声を荒げたため、二人は走ってふくの元へ行く。

 そして、そこには出血もおさまらない中、這いずっているふくがいた。

 何事かと周りを見るとふくの子供、玉藻は姿を消していた。


「何があった……!?」


「綱彦……じゃ……。あやつ……わしの……子を連れ……去って……」


 そのまま気を失って倒れる。

 セイラは急いでふくの治療を開始する。

 ヴォルフはニオイを追って外へ駆け出していくのであった。


 

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