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一夜明けて

 ヴォルフが目を覚ました時は、【太陽】は夜を示す暗闇の中であった。

 元々夜目があまり利く方ではないので、足を躓かないようにソロソロと歩く。

 昼間とは違い、夜は非常に暗いこの国は少々物足りなさを感じる。


(いつの過去を思い出しても戦争のことばかり……闘い、オーディンを斃すために作られた存在であるか……)


「何を考えているのですか?」


 突然背後から声をかけられ驚く。

 正体を聞かずともわかる。


「もう起きたのか?」


「だってヴォルフ様、コッソリ出ていかれるので、気になりますよ?」


「……」


 別に逃げたりしているわけではなく、風を浴びたいのと、転びたくないだけであったが言葉に詰まってしまう。

 なんだかんだ、勢いで抱いてしまった女性だ。

 「帰れ」とは言えず、そっぽを向く。

 彼女は、隣に座り、崖に足を出してプラプラさせる。


「落ちるぞ?」


「落ちたら助けてくださいね?」


「なら、そこに座るな」


「結構いいものですよ?ヴォルフ様もヒトの姿になってやってみたらどうですか?」


 そう勧められて断る理由もなかったので、獣人の姿になり、彼女と同じように崖に足をぶらぶらと下げる。

 暗闇でほとんど見えないが、彼女は笑った気がした。


「ふく様、今でも好きですか?」


 そう訊ねられヴォルフの心臓はドクンと跳ね上がる。

 失礼だとは思いつつ、正直な心を出すことにした。

 

「まあ、な」


「絶対助けなければなりませんよ?今の野狐族は……正直言って悲惨なものです……」


「ワイバーン倒した後、コッソリ見ていたんだ。ふくも野狐も全部ツネミロが心を奪って好き放題していやがる。ふくにまで手をあげて……正直食い殺してやろうと思った」


「つ、な、ひ、こ……ですよ?でも、そのような暴力を振るう姿はあちこちでも見られています。あんなことして許されるのは綱彦様だけなのです。レオン様、コリー様も抗議するのですが、『野狐族は他の低俗な種族と同じにするでない!』と言って跳ね除けるのです」


 やはり、国民にも綱彦の行動はあちらこちらで散見され、彼の暴力性はたびたび議論になるようだった。

 

「暴力で追放しようにも向こうは向こうの権力関係で手が出せないカンジだな。やはり、【心を操る魔法】の正体を掴んで、使用を認めさせて引きずり降ろすしかないか……」


「あの……話は変わるのですが、よろしいですか?」


 野狐族の話題から離れたいと思っていたのか、彼女は話題変更を申し出る。

 これ以上のことは、夜が明けてからでも良いと考え、了承する。


「ありがとうございます。えっとですね……も、もし、ヴォルフ様の子どもを身ごもった場合いかがなさいますか?」

 

 急に現実に引き戻され、ヴォルフは頭が混乱する。


「どうって、助けた子供も、これから生まれる子もここで面倒見ればいいと思うのだが……」


「あ、ごめんなさい!そのですね、子供が王族として認められるものなのか気になりまして……」


「王族変異していれば王族になるだろうよ。もちろん獅子頭と片眼の犬の許可を受けてから、だけどな」


「離れ離れになりますよね……」


 彼女は離れ離れになることに強い拒否感を持っているようで、ヴォルフは暗闇の空を見上げて口を開く。


「オレはこの国の王、この世界の神だ。お前と一緒にいるのは難しいだろう。だが、子供は子供だ。お前の思うように一緒にいてやるといい。獅子頭には伝えておいておくし、何があってもお前たちを守ってやる。それだけは約束しよう」


「たまには一緒にいてくださいね?」


「善処する」


 ヴォルフの判断は一国民、一般的なヒトには理解が及ばない。

 そのことはヴォルフがよくわかっている。

 羊族の彼女を妃にしないことで彼女は守られる。

 物理的に世話をすることができず、中途半端に一緒にいるところを目撃されれば彼女とその子供が狙われ、その命が脅かされるのを防ぐためだ。

 したがって、あえて父親不詳にしてしまうことで二人は守られ、仮に子供が【王族変異】していれば、国民から優秀なものが現れたと知らないふりをしておくといった手段もとれる。

 そう言った考えは伝えない。

 彼女に要らない負担をかけさせないため、ヴォルフの最大限の愛情であった。

 傍から見ると、責任を取ろうとしないただただ屑な父親となるが、すべて受け入れる。


「……あなたのことです。何か考えがあって、そのようなことを言われるのでしょう?わたしはわたしのやるべきことを全うします。でも……絶対に死なないでくださいね?」


「オレは神だぞ?そうそう死んでたまるものか。身籠れば、子供のこと頼むぞ。不安になったらいつでもここにきて獅子頭に訊くといい。アイツは腕のいい治癒士だからな」


「あれ?レオン様は召喚士だっておっしゃっていましたが?」


「治療できる技術があれば誰でも治癒士だ」


 ヴォルフはニカッと笑う。

 丁度【太陽】の光が漏れ、ヴォルフの笑顔は彼女に届いた。

 涙をこらえ、笑顔で返す。


「私の子供はきっと、あなたを超えて見せますから、覚悟してくださいね?」


「そりゃ、楽しみだ」


 朝焼けが起こることはないが、水蒸気が【太陽】の光を反射し、幻想的な煌めきが二人の目に映し出された。


「ずっと応援しています。」

いつもありがとうございます!

『良かった!』

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『続きを見たい!』

と思って貰えましたら、

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ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

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