変わってしまったふく
「お前がつ……つ……ツメモノだな」
「綱彦だ。女王の夫に対し失礼だな」
「それを言ったら王であるオレに対して不敬だろ?」
「王?貴様が?」
「さっき、獅子頭から継承した。だからオレがこの国の王」
ふくはヴォルフに近づき胸ぐらを両手で掴む。
相変わらずの力の弱さでちょっとつまめば振り解けそうなものだったが、それをせずふくを見つめる。
「王はわし一人で十分じゃ。れおんは役立たずじゃし、お前が王になったところでわしのやることを止めさせぬ」
「戦争なら一人でやってくれ。オレの知っているふくは国民を犠牲にして成り立つ国にはしない。オレは昔のふくの理想としていた国にしていく」
「ならば我とふくを殺して貴様が王になると?」
綱彦がそう言うと、ヴォルフは首を横に振って挑発する様な笑みを浮かべて指を指す。
「二人の王でいいんだ。国民がどっちの王がいいか選ぶさ。それでいいだろ?」
「ふん、勝手にせい。わしは国民のことよりも腹の子の方が大事じゃからの……」
「じゃあな」
そう言ってヴォルフは最速で部屋を出て行った。
ふくは興味なさそうに自身の腹に目を戻し、まだ膨れていない腹を撫でる。
綱彦は憎らしそうにヴォルフの出て行った窓を睨みつけていたのだった。
ヴォルフは石造りの建物の中に戻り、ツカツカと歩いていく。
「獅子頭!」
「なんでしょうか?何か手伝えることでも?」
「今すぐ国民を集めてくれ」
ヴォルフは帰ってくるなり突然無茶苦茶な指示を出す。
しかし、イタズラにことを運んでいる様な雰囲気ではなく、寧ろ何か大きなことをするつもりだと察する。
「集めて、何をされるのですか?」
形式的ではあるが、一応聞いてみることにした。
頓珍漢なものであれば事前にストップがかけられるからだ。
「オレ専門の軍を作る。目で見られる範囲で国民のことを鍛えていく」
「鍛えてどうなさるおつもりで?」
「その中でさらに部隊を作る。そしてその軍の補佐としてお前と片眼の犬にやってもらう。目的はドラゴンに対抗できる軍隊を作ることで、最低でも草食魔獣を単独で狩れるようになること」
「ということは食料を調達する事が目的である……でしょうか?」
ヴォルフは首を横に振って否定する。
「旅をしていて分かったんだ。ネズミ族や犬族の若いヤツが草食魔獣を逃したり、逃げまわったりで大半が死んでしまう。今だってそれは変わらないんだろう?見た感じ、子供が産めるやつは国で保護されて生涯子供を産み続ける。若いやつを呪いで相打ちにしているんだろ?」
レオンは何も言う事ができなかった。
一度も説明も、案内もしていないのに国の状況を把握していた。
「最近、農作物も不作が続いてるんじゃないのか?」
「何故それを……」
「畑を作り続けるにはふくの魔法が不可欠だ。土、火の元素を操れるヒトはそうそういない。それにふくは子供に魔力を与えるから魔法も碌に使えないハズ……それが理由だ」
「あなたは今でもふく様のこと……」
「あぁ、好きだよ。でも、今のふくは確かにおかしい。証拠がないからどうにもならないが、今できるのは国民に自身の力で自分を守る事しか教えられない。ついでに食料も手に入るってカンジだよ」
寂しそうな顔で外を見るヴォルフにレオンは申し訳ない気持ちで見るしかできなかった。
千年間、多種族が交流する事で今までよりも生活の質は上がった。
しかし、ヴォルフの言う通り男女問わず五十歳を過ぎなければ子供ができない為、人口を増やす貴重な人材を外に出す事ができない。
比較的長く生きた個体ほど魔力も強いので彼らが戦闘に参加してもらえるとよいのだが、一度国家全滅の危機に陥った。
それが、ドラゴンの登場であり、誰も対抗する手段を持っていなかった。
歳をとった個体もドラゴンの鱗を通す魔法を持たず、魔力量も雲泥の差でありお手上げだった。
それを救ったのが現女王ふくで、苦戦をしつつもドラゴンを一体葬った。
それがきっかけで国を襲うドラゴンの数が減り今に至る。
レオンは一つ提案をすることにした。
「ヴォルフ様、国民は明日、集めることにしませんか?」
「何かあるのか?」
「明日はドラゴンが贄を求めてくる日になっています。そのドラゴンを倒せば、ヴォルフ様の実力を国民が理解するかと……」
「それはいいな!それじゃあ、サクッと倒してハートを掴んでやろうか!」
レオンはヴォルフを上手く乗せ、憂鬱な明日に希望を見出す。
ヴォルフは首に異物感を感じそれを手で取るとキラリと輝く石が二つあった。
「ネズミのチビちゃんと生意気なやつの石……ふくが大切にしていたもの……」
レオンはその石を見てどうして首にあるのかわからなかった。
毎日お世話係が毛繕いをして埋め込まれている事がないからである。
ヴォルフはその二つを見てフッと笑う。
「お前たちもふくをなんとかして欲しいんだな……。それにふく自身も助けて欲しいとこれを仕込んだのか……」
「それなら絶対にやるべきですね……!国民の目の前でドラゴンを倒してやりましょう!」
「夜が明けたら起こして」
ヴォルフは部屋の隅に座り込み、息を長く吐き、狼の姿に戻ると眠りについた。
レオンにとってようやく肩の荷が降りる一日となったのである。
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