女子同士のお話じゃ
夜が明けてふくは目を覚まし、背伸びをする。
服を着ていたことに少し戸惑うが、昨日の記憶を掘り起こし、用意されたものだと思い出した。
ヴォルフはふくが起きたことで眠りが覚め、大きな欠伸をする。
「おはよう、ふく……」
「おはようなのじゃ。わしは今から湯あみに行ってくるのじゃ」
「はぁい……」
どうやらヴォルフは入る気が無いようで空き家から出ると、コロンが入り口で座って眠っていた。
「これ、ころんや。女子がこのようなところで寝るとは良くないのじゃ」
「おはようございます……。ふく様、早起きなのですね……」
「そう……じゃの。それよりも、今から湯あみをしたいのじゃが行ってよいのかの?」
「あ、それならご準備いたします!少しだけお待ちしてもらってもいいですか?」
「む?準備をする姿を見させてくれぬか?わしの国でも湯あみのできるところを作りたいからの」
「そういうことでしたら……」
ふくとコロンは浴場へ向かっていく。
浴場の裏手に回り、コロンは薪を組んでいく。
そして木の皮を詰め込んでいき、最後には抜け毛を大量に詰め込んだ。
「この毛はころんの毛かの?」
「えぇっと……集落のみんなの毛です。一定の時期になると硬い毛と柔らかい毛が交互に生え変わるので、その時に抜けた毛をみんなで集めておいて、このように使うのです」
「ほう!それは賢いの。これから興す国にも採用しようかの」
火に関しては板に細い棒を立てて摩擦熱を起こしていた。
どこでも火おこしができるのがメリットなのだが、コツを掴むまでは時間がかかる作業だ。
見かねたふくは地面に絵を描いていく。
「ころんよ、魔力でこれを描いて、詠唱をするのじゃ」
「なんでしょうか、これは……」
「【火】の元素魔法の紋様じゃ。詠唱は……燃える『いめーじ』とやらをしてやれば良いじゃろ」
「……そう、なのですね。えぇっと……こうして……毛に向けて……『かの物に火を点けよ!』」
ふくの助言通り紋様を描き、詠唱を行うと、抜け毛がボウっと燃える。
そして、木の皮が燃え始め、薪にならない端材が燃え、薪が燃える。
順調に火が燃え、コロンの目が輝く。
「ふく様!わたし、元素の魔法初めて使いましたっ!素養がなければ使えないと思っていたのですが、このような形で誰でも使えるなんて……さすがふく様です!」
「な、何を言う……!?わしはあくまで助言しかしておらん。実際、わしも疑心暗鬼じゃったのじゃ……」
「ギシンアンキ?」
「本当にできるとは思ってなかったのじゃ、と言うことじゃ」
ふくはコロンの頭をわしゃわしゃと撫でると嬉しそうに耳を下げる。
二人は浴場に行き、背中を流し合い、湯船に浸かる。
「ふく様……一つ質問してもいいでしょうか?」
真面目な顔をしているコロンを見てふくは首を傾げる。
そして両手の人差し指をツンツンと合わせて恥ずかしそうな顔をして小声で訊く。
「ヴォルフ様のこと好きなのですか……?」
「ぼるふのことを?」
目をギュッと閉じて首を縦に振る。
年頃の女の子というのもあり、大変恥ずかしい話題なのだろうとふくは察する。
それを見て可愛いと思うふくであり、正直に答える。
「……うむ、恐らくじゃが好いておるかもしれんの……。」
「恐らくなのですか……?」
「む……わしはのこの世界に来た時はキツネの姿ではなく、毛の無いニンゲンじゃった。……で、魔獣に殺されかけての、と言うより殆ど死んでおった。そこにぼるふがわしをこの姿にして生き永らえさせたのじゃ」
コロンのヴォルフ像が完全に崩れ去った瞬間である。
ヴォルフは邪神として恐れられ、機嫌を損ねれば喰い殺されると聴いており、実際に見た時は本当に冷たく逆らってはいけないと本能で感じていた。
しかし、側で見ているとどうやら違うのでは無いのかと思い始めていたところで、ふくの発言でヴォルフ像が崩れたのだった。
そう、『ただの大きくてふくのことが好きな狼。めちゃくちゃ強いけど』と言うヴォルフ像に切り替わった瞬間であった。
そして、そのヴォルフとふくは両想いであり、両手で顔を覆う。
「そ、その……交尾はされたのですか……?」
「……残念じゃが、しておらんの」
「ど、どうしてっ!?」
「……夫婦になったわけではないからの。さすがにそれは出来ぬのじゃ」
「と、取られてしまいますよ?ヴォルフ様……」
コロンがそう告げる意味をふくは理解していなかった。
ふくのいた世界では婚前交渉はご法度である。
そのためコロンの『取られる』と言うのが理解できなかったのだ。
「ええっとですね……私はまだ成人していないので分かりませんが、その、交尾をすることで正式な番いとなると聴いてます。そして、先に取られてしまうと――」
「良いのじゃ」
コロンはふくに遮られ、驚いていた。
ふくはコロンに顔を向け、ニカッと笑う。
「あやつがわしを選ぶならそれに応えようと思うが、そうでなければ、今まで通りあやつの使いとしておるだけじゃ。生命を貰っただけでも、十分感謝しておるのじゃ」
そう言うと立ち上がり、手を差し出す。
ふくの手を掴み、コロンも立ち上がる。
「まあ、わしはあの犬を誰にも渡すつもりはないのじゃ。ころんが欲しがってもぼるふは渡さぬよ?」
(やっぱり、ふく様には敵わないです。どうかふく様とヴォルフ様が結ばれるよう祈ります……)
コロンはふくとヴォルフが結ばれることを願い、クスリと笑うのであった。
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