また【それ】が現れたのじゃ
門番は突然、集落の中央に現れた【それ】に怯まず応戦する。
ぶよぶよで赤く腫れあがった頭部に人間脚を八本生やした謎の生き物でかなりの巨体だった。
冷静にこん棒で足を潰し、もう一人が上空から石槍で突き刺す。
緑色の体液をまき散らし、暴れる【それ】は門番を蹴り飛ばし、頭を刺しているもう一人を身震いで吹き飛ばし、傷を再生させる。
その速さに門番は驚愕する。
そして門番の一人が踏みつぶされる瞬間、【それ】の全身が凍り付く。
「早く逃げろ!足手まといだ!」
ヴォルフは門番にそう告げるが、ヴォルフ自身も恐怖の対象な為門番は動けずに震える。
ふくはヴォルフの背中から降り、門番の頬を叩く。
「ぼるふが逃げろと言っておるのじゃ!早く逃げんか!」
「あ、あなたは……!?」
「わしはぼるふと共に戦うのじゃ。ここにいてはお前たちが死んでしまう……。それだけは嫌なのじゃ。頼むから民を連れて遠くへ逃げるのじゃ」
ふくは涙を流し、説得すると門番は急いで他のヒトと共に避難を開始した。
「ふく……大丈夫?」
涙をぬぐい、【それ】を睨みつける。
「大丈夫じゃ。皆が逃げるまで決して倒してはならんぞ……!」
「ゴメン……全身凍らせちゃった……」
「バカ者!また……繰り返してしまうでないか……!」
ふくは頭を抱えて唸る。
しかし、ふくの心配をよそに【それ】は自力で氷を溶かして再び暴れ始める。
再び動いた【それ】に脅威と安心を感じ思考がぐちゃぐちゃになる。
それでも闘いの余波が及ばないように場所を移動し、時間を稼いだ。
避難の時間を十分に稼いだふくたちは、距離を取り、魔力を全開にする。
「あいつ、オレの氷を解かすってすげえな」
「あれは『たこ』のような生き物じゃの……。確かに冷たいものには強いのかもしれん……」
「じゃあ、オレは何もできなくない?」
「足を凍らせることはできるじゃろう。わしがあやつを仕留める。手を貸すのじゃ」
ふくは魔法を発動しようと手を翳した瞬間、何かを感知した【それ】はふくの前から姿を消した、いつの間にか背後に回っており、ふくに攻撃を仕掛けた瞬間すべての脚が凍り、地面に張り付けにされ、無防備になる。
「『獄炎の檻』」
青い焔が【それ】を包み込みあふれ出る体液が出るたびに蒸発していく。
焔によってヴォルフの氷は解けることがなく、逃げることも叶わず、炭や灰も残さず焼き尽くした。
しかし問題はこれから。
あれだけの高火力で溶かし焼き切ったにもかかわらず、どす黒い石だけは無傷であり、ふくは驚愕する。
「わしの青い焔でも消し去ることはできぬのか……。ぼるふよ、これからが本番じゃ。背中に乗せるのじゃ」
ふくはヴォルフの背中に乗り、二人はどす黒い石から距離を取る。
離れた所で手を祈るように組み、魔力を込める。
そして前回同様、石より負の魔力が込められたどす黒い靄が周囲を汚し始める。
「『清らかな光よ、悪しき力を祓い給え』」
小さな光を発生源に向けて投げると、閃光が集落を包む。
どす黒い靄は光によって浄化され、被害は最小限に抑えられた。
「や、やった……。やったのじゃ!やっと……」
ふくはそのまま意識を失い、ヴォルフの背中に倒れる。
「ふく、お疲れ様」
そのまま集落の探索を進めると、【それ】が出てきたと思われる穴が空いており、においを嗅ぐ。
「ネズミ族のところと同じニオイだ。大穴から追いかけてきたのか……」
すべてが終わったことを察した犬族はヴォルフとふくに集まる。
コロンの魔法で浮遊しながらコリーが二人の前に立つ。
「ヴォルフ様、今までのご無礼お許しいただけるだろうか?」
「ふくが怒っていないから、不問にする」
「ふく様、本当に我々の為に動いておられたとは……」
「ふくは優しいからな。ネズミ族を助けられなかったときは酷く落ち込んで、そのまま死ぬんじゃないのかって思ったし……」
コリーはコロンと目を合わせ、何かを確認するとヴォルフの方へ向き直る。
そして、犬族が整列し、跪く。
「私たち犬族はふく様、ヴォルフ様の国に加入し、あなたたちに身をささげることをこの牙に誓う。」
「……そっか。ふくが起きたらまた言ってあげて。あと寝床が欲しいね」
そう告げると急いで空き家を整理し、寝床を作り上げていった。
コリーが隣に来てその光景を見る。
「いつか野狐族のところに行かれるのですか?」
「まあな」
「では、ふく様の衣服はそれに因んだものをご用意いたします。」
「そうだな。ふくもそうだけど狐は気が強いし、ね」
犬族の男がコリーに報告に上がると、寝床の確保ができたというものだった。
コロンが近くまで来て、一瞬ヴォルフの姿を見て怯むが、小声で「だいじょうぶ」と呟き、ヴォルフに話しかける。
「ふく様をお運びいたしましょうか?」
「オレが運ぶから下がっていいぞ」
「ですが……」
「これからは大人の時間だ。良い子はねんねしな」
そう告げて空き家の中へ入っていく。
ヴォルフは判っていたのか【太陽】は光を失い、夜へと切り替わった。
ヴォルフは寝床と思われる場所にふくを落とさないように伏せる。
「大人の時間とは何なのじゃ?」
「やっぱり起きてた」
「知っておったのか!?……で?大人の時間とはなんじゃ?ん?」
ふくは悪戯っぽく笑みを浮かべ、胸やお腹を触る。
ヴォルフはふくがワザとやっているのに気が付き、忠告する。
「外で聞き耳を立てているヒトが沢山いるよ?」
そう言うと急に触っていた手を引き上げて恥ずかしそうに丸くなる。
そんな彼女が愛おしく感じ、顔をぺろりと舐める。
——また今度ね……
と囁いて、眠りに就いた。
ふくは口を尖らせ、ため息をついて、ヴォルフにくっついて眠りに就いたのだった。
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