川沿いを歩いていくのじゃ
魔法の件がひとまず解決し、レオンは気になることを訊いた。
「二人はこれからどうされるおつもりなのでしょうか?国と言っても敷地しか現在存在しないのですが……」
「わしはここに居座るつもりはないのじゃ」
「オレはふくの傍にいるって決めたから、ふくについていく」
「こ、ここはどうするのですか!?ふく様にとって大切な場所なのでは……?」
ふくはレオンにそう言われ、コムギ、チュータロー、ネズミ族たちのことを思い出す。
ふくは段々と呼吸が短くなり、胸を押さえる。
それを見たヴォルフはそっと背中を擦り、そのまま抱き寄せる。
「落ち着いて……ゆっくりね……」
「……す、すまぬ……。もう大丈夫じゃ……」
「顔色悪いよ?休む?」
「大丈夫じゃ、れおんよ。お前にこの土地を守ることを頼みたい」
突然守り人に任命されレオンは慌てる。
それもそのはず、基本的に守り人は土地に由来した者か一族の二番目に権力のあるものが行う。
どれでもないレオンが守り人の立場に就くのは普通、あり得ないのだ。
「し、しかし……私はあなたたちのように村や町を守る力はございません!」
「命令じゃ。わしらはまだ目的が達成しておらんのでの。お前の思うように国を築いてもらいたいのじゃ」
「よかったな。でもふくの国を潰すなよ」
すれ違い際にヴォルフから小声で釘を刺される。
ガクガクと足を震わせ、絶望する。
彼はオスのライオン。
基本的にメスをハーレムにして群れを作るのだが、レオンはそういった気配を見せない。
それはオス同士の争いや、メスによる追放が関係しており、一匹狼ならぬ一匹ライオンになっている。
不安になっているレオンに向けてふくは一言だけ告げる。
「お前を信頼しておる。わしの庇護下になりたいものを集め、国を発展させるのじゃ」
そういうと、集落を背にし、森の中へ消えていった。
ヴォルフはレオンに対し、「ベーッ」と舌を出し、狼の姿となってふくを追いかけて消えた。
一人残されたレオンは呆然としていたが、ふくに言われたことを思い出し、両手をグッと握り気合を入れる。
「ふく様の為に頑張るぞ!」
レオンは精霊を出し、腐った大地と木を取り除き、民家用の木材を作っていくのであった。
§
二人は小川のほとりを歩いていた。
餌となる魔獣も飲み水確保のために立ち寄ることが多く、食料に困ることはなかった。
不便といえば近くには広大な荒地しか存在しておらず身を隠せられるような洞穴や木がないことであった。
そして何よりふくは風呂に入りたくなっていた。
天皇家での暮らしですら風呂は三日に一回。
湯を沸かすのも、水を張るのも一苦労の為である。
もちろん、自然のお湯が出るようなところに行けばいつでも入られたのだが、この世界はそのようなところを見たことがないとヴォルフは告げる。
地底世界であるが故に水は非常に冷たく、飲む分には最適なのだが、行水は論外であった。
それは一度旅を再開した初日に行ったことでふくはもう二度と水浴びはしたくないと思っていた。
だが、いくら魔法で調理ができとはいえ、肉を捌けば返り血は多少浴びることにはなるし、水を飲んだり肉を食べたりすれば出ていくものもあり、ふくは非常にイライラしていた。
一方、ヴォルフは神の力なのか何をどうしようが日を跨げばきれいさっぱりとなっており、非常にうらやましく感じた。
「ふく、どうしてそんなに怒っているのさ?オレ、なにかした?」
「……別にぼるふが悪いわけではないのじゃ。そろそろ体のニオイが気になるんじゃが、風呂がなくて困っとるんじゃ」
「あぁ……あの時の水とても冷たかったんだよね?」
ふくは頷いて不貞腐れる。
ヴォルフは何かいい方法がないか考えていくと、思い出したことをふくに伝える。
「ふく?この先集落があるんだけど、寄る?」
「本当かの!?ようやく人に会えるのか……。長かったのぅ……」
ふくは自身の体の汚れなど気にしなくなったのか尻尾を振り、ご機嫌となる。
服を身に纏っていないため、尻尾が降られるたび、ヴォルフの視界に臀部が目に映る。
何もしなければいくら股を開いたところで体毛の陰で中身が見えることはないのだが、好奇心で尻尾の先を見たくなってしまう。
これまでのふくとの旅の中でヴォルフは尻尾を触るとふくの機嫌を損ねることが分かっていたので恐る恐る訊いてみる。
「ふく……?」
「どうしたのじゃ?集落の者に除け者にされないか心配なのかの?大丈夫じゃ。ヒトの姿になれば誰もお前を怖がったりせんじゃろうて」
「そういうのじゃなくてさ……」
「なんじゃ?はっきりとせんか!」
もごもごしているヴォルフにふくは段々険しい顔になっていく。
ヴォルフは一瞬やめようかと思ったが、この際怒られてもいいと思い、思い切って伝えることにした。
「ふく!おしり見せて!」
「お……しり……?……なぜじゃ?なんかついておるのか?それならば取っておくれ。この体になってから虫や種が引っ付いて、しかも後ろは見えんのじゃ。ほれ、これでよい――やっぱり駄目じゃ」
ノリノリで見せようとしていたが、よくよく考えればいかに不味いことをしていることに気が付き、臀部を押さえて尻尾も下げる。
いくら神で狼でもオスなのだ。
ふくは恥ずかしくなって集落のあると思われる方角に向かって顔を押さえながら走った。
そして、前を見ず走ったので川べりに足を滑らせ、冷たい川に落ちたのだった。
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