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怖い夢を見たのじゃ

『ふく様、どうして助けてくれなかったのですか?』


『オレたちを裕福にさせてくれるんじゃなかったのかよ!』


「違う!違うのじゃ!わしは……お前たちを助けたかったのじゃ!」


『けど、わたくしたちは死んでしまいました。どうしてですか?』


「そ、それは……」


 ふくは小麦の指摘を返すことができなかった。

 言葉が詰まり、上手く話すことができない。

 息が苦しくなり、その場に座り込む。


『アンタに賭けたオレが馬鹿だった』


『わたくしたちはネズミ族……。弱い存在は淘汰されるべきですからね』


「そんなことは……」


『ないと言えますか?』


 ふくは再び言葉が詰まってしまう。

 コムギから自身の思っている部分を突かれ、反論できず目をぎゅっと瞑る。

 冷たく言い放ってくるコムギに対し、言葉をかける。



「わしは……!お前たちを救いたいという気持ちにウソはないのじゃ——っ。はっ……はっ……はあっ……はあっ……。ゆ、夢じゃった……のか……」


「ふく大丈夫?」


 太心配そうに声をかけられ、振り浮くと、ヴォルフの姿が目に入る。

 眠りから覚めたヴォルフを見て、顔をゆがませ、号泣する。


「わあぁぁぁぁぁっ!」


「ちょちょちょっと!?どうしたの!?怖い夢を見ていたの!?」


「ばかばかばかばか……キサマは大バカ者じゃ……!なぜわしを一人にする……!」


「ご、ごめんて……。もう一人にしないから……。ね?」


 ヴォルフはふくが背負っていたものと孤独感を感じ取り、獣人の姿になる。

 そして、そっと優しくふくを抱き寄せ、首元のふさふさの毛にふくを埋める。

 ふくは久しぶりのヴォルフの温かい毛に埋もれ、安心して寝息を立て始めた。

 

「あ、あの、ヴォルフ様?」


 レオンに声をかけられたヴォルフは嫌そうな顔をしてレオンを見る。


「一つ疑問なのですが、ふく様の魔法は殆ど複合魔法で、詠唱も無視していました。これはふく様の純粋な力なのでしょうか?」


「……複合魔法。どんな属性を、詠唱無視した?」


「確か……【氷結】、【爆破】、【暴雨】、【蒼炎】です。それぞれ『凍れ』、『白銀の抱擁』、『爆ぜよ』、『吹き荒れる嵐』、『獄炎の檻』と言っていました」


「……オマエ、全部覚えてんの?気持ち悪っ」


 レオンの記憶力にヴォルフは完全に引いており、ふくをかばうようにしっかりと抱き寄せる。

 急に気持ち悪いと言われショックを受けたレオンだが、心が折れてはならないと思い、まっすぐとヴォルフを見る。

 これでも獅子の獣人であるのでまっすぐと見ると普通の獣人なら恐怖で委縮するのだが、今回は相手が違う。

 まっすぐに見つめてもヴォルフは怯むことなく、見返してくる。

 逆にヴォルフのどんな獲物でも委縮してしまう金色の瞳はレオンによく効き、思わず怯んでしまう。


「……オレもだけど、基本的に詠唱なんていらないようにふくには教えてる。それを使いこなしているのはふくの才能だと思う。だが、複数の、しかも全元素魔法を使いこなした上に、複合魔法を複数使うのは話が違う」


「……と申されますと?」


「この世界の魔法のルールは?」


「……一個体につき一つの魔法を所持。複数元素の素養があっても複合魔法の素養がなければ組めない。複合魔法の持ち主は元となった各魔法を使える……です。」


 ヴォルフはうんうんと頷き、レオンの回答が正しいものだと分かり、ほっと一息を吐く。

 そんなレオンを見てヴォルフはもう一言告げる。


「【斬撃】、【治癒】の魔法も使いこなしていたから付与魔法が使えるし、【氷結】も二種類使ったのだろう?」


「は、はあ!?付与魔法まで!?ありえないけど……。【氷結】は直接凍らせるものと、自身の周囲に吹雪を起こすものがありました」


「なら、【収縮】、【発散】の二種類の事象魔法も使えていたということ。ということはもしかしたら、現在使える魔法は『全部』だと思った方がいいだろう」

 

 ヴォルフの考えを聞き、レオンは頭を抱える。

 ふくの規格外の強さに納得がいく半面、出鱈目さに悩む。


「ふく様に聴いたのですか?」


「いや?きっとそうなんじゃないかなと感じているだけ。獅子頭、女の子の秘密はズケズケと踏み入るものではないぞ?」


「……お前が言うでない、あほ犬」


 いつの間にか目を覚ましていたふくを見てレオンは背筋を正す。

 ヴォルフいつもの調子でふくの顔をぺろりと舐める。

 そして、鼻の穴を爪でぐりぐりと抉られるのだった。



「わしの魔法について話をしておったのじゃろう?」


 レオンは背筋をピシッと正し、ヴォルフは涙目になりながら抉られた箇所を擦っていた。

 地震でもよくわかっていない事を説明するのは非常に難しく感じるのだが、ふくはありのままを話すことにした。


「わしの魔法の素養についてはよく知らぬ。じゃが、わしの魔法なのじゃろうな、魔力を込めて念じるとな、書庫に連れていかれるのじゃ」


「「ショコ?」」


「本がいっぱいあっての……なんじゃその気持ち悪いものを見るような顔をして」


「ふ、ふく様申し訳ございません。『ショコ』と『ホン』というものが我々にはわからないのですが……」


 意外な疑問が帰ってきてふくは困ってしまった。


「本というのは今まで物事を記す紙を集めたもので、書庫は本を集めたものなのじゃ」


「壁画のようなものでしょうか?」


「ううむ……。壁画では持ち運びができぬであろう?木や草を砕き、濾したものを乾燥させたものじゃ。わしの国ではそれなりに使われておったのじゃが、この世界にはないものなのじゃな?」


 ふくはヴォルフを見ると、しっかりと頷く。

 肉を焼くことを知らないのであれば、当然だろうと納得する。

 製法まで説明すると長くなるので、ふくは話を進めることにした。


「紙のことはまた後での。その書庫には『魔法大全』といった本があっての、それには術の魔法が記されておる。まあ、その時に必要な魔法しか見させてくれぬものじゃが、それを見て使っておるのじゃ」


「だけど、それじゃあ素養についてが分からないね。魔法には素養が必要だから……」


 ふくは素養について言われるが、よくわからないので、魔法を発動しているときに行っていることを説明するのだった。

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