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みんなで膳を囲むのじゃ

 ふくが目を覚ますと夜になっており、周囲は暗くなっていたが、ひそひそと声が聞こえる。


「ふく、起きたね。」


「ふく様!」


「なんじゃ……。わしはまた眠っておったのか……」


「複合魔法を三度も使えば倒れるのはしょうがない」


「どこか痛むところはありませんか?お水は要りますか?お腹は空いていあせんか?」


「ええい!うっとおしいのじゃ!小麦よ、わしはまだ起きたばかりで頭が働いておらん。すこし待つのじゃ」

 

「も、申し訳ございません……」


 コムギは肩をすくめて悄気る。

 そんな様子を見て「しまった」と思ったふくはコムギをそっと抱きしめる。

 寝起きだとは言え、ヴォルフと同じような扱いをしてしまった事をふくは反省する。


「わしこそすまんのじゃ。寝起きはあまり構わないでほしくての……。コムギよ、お主は肉を食べたりするのかの?」


「あ、はい……!わたくしたちネズミ族はなんでも食べます!」


「良い子じゃ。ぼるふよ、肉を持ってくるのじゃ。この前みたいに焼いて皆で膳を囲むのじゃ」


 肉を焼くと聴き、ヴォルフは目を輝かせて走っていく。

 余程焼いた肉が美味しかったのだろうと思い、ふくはクスリと笑う。

 コムギの方へ視線を戻し、一つ命令をする。


「コムギよ、ネズミ族を広場へ集めるのじゃ。そして、皆で食事を摂ろう」


「しかし、光がないのであまり動けません……」


「そうじゃの。篝火を点けておくからそれを目印にすると良いじゃろう」


「カガリビ……?」


「道を照らす灯りじゃよ」


 目をまん丸にして余り理解ができていないようだったが、ふくなら何とかすると理解して走って一族を集めに回った。

 ふくは重たい身体を起こし、立ち上がると、広場へ足を進める。

 道中、風の刃で木の枝を大量に収穫し、魔力を使って運ぶ。

 広場に木の枝を置いて山にし、篝火用の枝を持ち、岩山の足元に置き、火をつけていく。

 火の灯りで道はボンヤリと明るくなり、ネズミ族でも見える明るさになった。

 広場まで戻ると木の枝の山に向けて火を放つとメラメラと燃え上がる。

 いつの間にかヴォルフは戻ってきており、牛の見た目をした大型魔獣が側に置いてあった。

 相変わらず山のような見た目をした巨大である。


「む、これはあの時の魔獣か」


「そうだよ~。この肉は生で食べても美味しいから焼いて食べたらもっと美味しいかな?」


「そうじゃの、わしの知っておる物と同じであれば美味しい肉になるじゃろうて」


「楽しみだなっ!」


 ニコニコして肉が焼かれるのを待っているヴォルフを尻目に魔獣を解体していく。

 野生の肉なので霜降り肉のような部位は手に入らないが、程よく引き締まった肉は脂身と適度なバランスであり、ふくは思わず涎をじゅるりと鳴らす。

 段々と火の周りにネズミ族が集まり、賑やかになっていく。

 適度な大きさに切り分け、それを火に掛けていく。

 脂が滴り落ちるたび、火力は上がり、ネズミ族は引いていく。

 しかし、それ以上に肉が焼かれるニオイがネズミ族の嗅覚を刺激して空腹のボルテージが上がっていく。

 火が通った事を確認し、ふくはそれを食べる。


「……ん〜!……美味いのじゃ!皆の者!ドンドン焼くから食べるのじゃっ!」


 ふくからお墨付きを貰った肉を見てネズミ族はふくの元へ集まり、貰おうと賑やかになる。

 次々と焼いていき、ヴォルフもお腹いっぱいになるまで食べることができ、大盛況のうちに終了する。

 満腹になったネズミ族はあろう事か広場で寝転び、そのまま眠ってしまう。

 コムギも同じように眠り、本当に食糧難で飢えて苦しんでいることが痩せ細った身体を見て分かる。


「ぼるふ」


「どうしたのふく?」


「暫く……この村が安定するまでは残っても良いかの?」


「それがふくのやることならオレは止めないし、側にいるよ」


「……すまんの」


 ヴォルフは尻尾を振ってふくのそばにピタリと密着して座る。

 ふくは少し胸が高鳴り、ヴォルフを見る。


「ぼるふよ……お前は神なのであろう?ヒトの姿をとることはできるのか?」


「うーん、やったことないなぁ。ふくの血をもう少し分けてくれたらできるかもしれないけど」


「それならやってみるのじゃ。お前が狼の姿をしておると、邪神として見られ、皆に避けられるじゃろう?ヒトの姿になれるならお前の事を怖がる者も減るのではないか?」


「ふくがそう言うなら、遠慮なく……」


 ヴォルフはゆっくりとふくの腕に噛みつき、その牙で出血させる。

 骨を砕かず筋肉を切断する事なく、皮膚を貫くといった器用な事をした。

 

「あっ……」


 ふくは思わず声が漏れてしまい、空いている手で口を塞ぐ。

 みるみる姿が変わり、ヒトの形をしたヴォルフを見る。

 目の色と頬についている赤い紋様、毛の色はそのままではあったが、ふくのように立ち上がり、ケモノの姿をしていた頃は気が付かないほどの筋肉が毛皮の上からでも分かる。

 そしてケモノの姿の時から変わらず、ヴォルフはにっこりと笑う。


「ふく!これでどうかな?」


「……よ、良いのではないか?あのアホ犬がこのような男前になるとは思わなかったぞ?」


「なにそれ、酷いや」


「少しは神らしく振る舞えと言っておるのじゃ。いつまでも無邪気ではおれんのだぞ?」


 ヴォルフは難しい顔をしていたが、すぐにいつもの無邪気な笑顔に戻り、ふくに擦り寄る。


「ええい、鬱陶しいのじゃ!」


 いつものように鼻の穴に爪を刺されるヴォルフなのであった。

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