たくさん魔法を使ったのじゃ
結局、コムギの説明ではふくの理解力が追い付かず、書庫に頼って何とか理解することができた。
「全くもって空気とは不思議なものじゃのう。目には見えぬものが複数組み合わさり、ちょうどよい塩梅でのみヒトが過ごすことができるとはの」
「はい。わたくしは風魔法を操れないのですが、きっと酸素だけを取り出すことができて【灼熱】を使用することができるかもしれません」
「ちょっといいか?」
突然ヴォルフが話しかけて二人の傍に座る。
コムギはふくに慣れたがヴォルフには慣れておらず、委縮して固まる。
彼女にとって邪神ヴォルフは相当怖いものだと認識し、耳をペタリと倒して悲しさを表現する。
「ぼるふ、何の用じゃ?」
「空気の中から燃えるやつを絞るのは【炎】の複合魔法だぞ?」
「どう違うというのじゃ?」
ヴォルフから【炎】という新たな複合魔法を告げられ、ふくは疑問を持つ。
「【炎】は圧倒的な火力で焼き尽くす魔法で、【灼熱】火と熱を使って焼いていく魔法だったはず。どっちも強い火なんだけど、効率よく長時間燃やすなら【灼熱】だよ。」
ふくは手をポンと叩き、理解する。
「竃の火をくべるのが【灼熱】じゃの!あれなら確かに風を送って火力と熱を底上げできるの」
「カマド……ってなんですか?」
どうやら本当に料理というものがこの世界にはないらしく、竃の存在をネズミ族もヴォルフも理解していないようであった。
「……色々教えんとならんようじゃの。まずは畑からじゃ。ぼるふよ、灰になるまで焼くなら【灼熱】とやらで十分なのじゃな?」
ヴォルフは自信満々で頷くと再び風と火の魔力を手に取り考える。
幼少期の頃、母より竈の火の焚き方を思い出す。
(風は火の近くで吹かせず、少し離れたところから風を送る……。そして一か所に空気を当てず、竈の中の空気をまわすように吹かせる……)
人間の時代の頃を思い出し、自身の母のことを思い出していると、掌には火の魔力が一つ、風の魔力が六つできており、火の魔力を囲むように風の魔力が均一な間隔で並んでいた。
それを上空へ抛り投げると拍手を二度、パンッ……パンッと鳴らし、そのまま手を合わせる。
ヴォルフ、コムギ、チュータロー、ネズミ族一同はふくの行動に釘付けとなる。
ふくは意識を集中すると舞いながら詠唱を開始する。
「『炎の神よ、小さな火種をその風により大きく昇華し、供物を焼き尽くせ……。土地の神よ、供物の灰より新たな魂の芽吹きを……。この地を豊かなものにし、繁栄を促さん……』」
炎はドーム状に燃え盛り、周りに延焼しないようにふくは風をコントロールしていた。
高熱効果力の炎は見る見る魔獣の死体を焼いていき、骨も灰となった。
燃焼物がなくなり、ふくは【灼熱】を打ち消し、土の魔法へ転換し、地面を耕し水の魔法でを少々練り込んで湿潤なものにする。
一度にすべての元素を使ったことでふくの疲労が極限まで達するが、気力を振り絞り、再び拍手を二度鳴らす。
「『豊穣の神よ、この畑にそなたの力を以って恵みを与えん!』」
息を切らし、跪きつつ手を祈るように組む。
表情からも非常に苦しいものだと理解でき、コムギはふくの元へ走るが、ヴォルフに首根っこを咥えられ持ち上げられる。
そしてそのまま背中にポイっと投げ乗せられ、コムギは反発する。
「な、なんでこんなことするの!?ふく様苦しんでるよ!」
「オレたちには何もできやしない。ふくは今集中しているんだ……邪魔したら殺されるよ?」
「そんなことないもん!わたしはふく様に認められたネズミ族よ!邪神のくせに分かったことを言わないで!」
「……そろそろ終わるみたいだぞ」
そういうと息を切らしたふくが天を見つめながら立ちすくんでいた。
ヴォルフはいち早くふくの傍に座ると、わかっていたかのようにふくはヴォルフの上に倒れる。
倒れたふくを見て焦った表情をするコムギを横目にヴォルフはふくに声をかける。
「ふく、ご苦労様。畑にはいっぱい緑色の小さいヤツ出てきたよ。」
「……そう……か。なら……上手く……いったようじゃ……の」
そう返すと寝息を立て始めた。
完全に魔力が底を尽きた様子である。
健やかに眠っているふくを見てヴォルフは微笑む。
遅れてやってきたコムギは慌てて看病しようとするが止められる。
「ふくは魔力がなくなっただけ。オレの魔力で回復できるから、そっとしてあげてくれ」
「……わかりました。でも!ふく様にヘンな事したら許さないから!」
コムギは怒ったようなそんな表情を見せて畑の様子を見に行った。
「ヘンな事ってなんだよ……」
ヴォルフはネズミ族がふくのことを守ろうとしていることが伝わり、自身が創った生命に不思議な感覚を抱きつつ、周りを見ると、畑の周囲にネズミ族が集まり活気に満ち溢れていた。
まだ新芽が芽吹いただけでこの騒ぎで作物ができたらどうなるのか想像するが、段々と退屈になり、考えるのをやめた。
「ふくが創った畑、みんな喜んでいるよ。キミは本当に凄いな……」
ふくが目を覚ますまでヴォルフは一歩たりとも動かずにふくを守ったのであった。
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