木を生やすのじゃ
「こ、この地域に食料が欲しいのと、魔獣を退治してほしい……!」
ふくとヴォルフは顔を合わせて頷く。
「お前はそれでよいのか?」
「それでいいのかって……?ぼ、ボクたちは魔獣に殺される人も多いけど、それ以上にみんな食料がなくて飢えて死んでいくんだよ……!」
「……ぼるふよ、近くに棲みついている魔獣を狩ってくるのじゃ。わしはこの強い風を何とかするようにするの」
ヴォルフはそれを聴くと一瞬で姿を消す。
ふくは腕を組んで考えていると、ネズミはふくの体を舐め回すように見る。
ヴォルフという強力なオスのライバルがいなくなったことにより、ふくに急接近する。
それは全身体毛で覆われているとはいえ、衣服を着用していないふくを見ればオスの本能としてしょうがないのかもしれない。
息を荒くしているネズミを見て視線を下げるが、衣服越しでもその物を見ることが出来なかった。
「……つまらぬ物を見せるでない。それ以上近づくならば、わしはお前を噛み殺さねばならん。わしの体はぼるふの物じゃからの」
冷たい視線でネズミを睨み、鋭い犬歯を見せるとネズミは後退りし、身を縮める。
威嚇として最高の結果となった。
ふくはふと気になることをネズミに問う。
「ネズミよ、お主はこの横穴を作った本人か?」
「そ、そうだけど……」
「この岩はかなり硬い物じゃが、どのようにして掘ったのじゃ?水や風の魔法じゃ、掘る事は叶わんじゃろうて」
「ボクの付与魔法【掘削】で削っただけだよ?歯に魔法を掛けて掘る力を強くしたってカンジ」
「ふむ……【斬撃】と似た魔法のようじゃの」
ふくはネズミの【掘削】魔法が斬撃と似ている事を結びつけて、現状の問題に直面する。
まずは土を豊かにする必要がある。
ゼロから土を作り出すとなるとふくの魔力では到底不可能。
土に栄養を与えようにも砂と礫(れき:石のかなり小さい物)の土地に腐葉土のような栄養価を与える事は材料が足りなさすぎた。
両手の人差し指でこめかみをグリグリして考えると意識は例の場所へと移っていた。
§
ふくは再び書庫へ辿り着いていた。
「今回は早く着いたの。それにわしの意思で呼び出せた気もするの」
書庫を歩いて進んでいくと一冊の本が落ち、走って取りに行く。
ウキウキした気持ちで本を開くと魔法の本だった。
「【土】の元素魔法。土や岩の形を変える魔法。土を耕し、畑に変えることもできる。硬質化して攻撃もできる。ほう……畑に変えられるなら便利じゃの。畑を作るための理解をしておかんとその魔法は使えなさそうではあるからの……」
他の本を探しに行こうとすると『魔法大全』の別のページが開かれる。
そこには【樹木】と書かれたページだった。
ちょうど防風林を作ろうとしていたのでふくは目を輝かせてそのページを見る。
「【樹木】。木を生やす複合魔法。元素魔法【土】【水】【火】を混ぜ合わせて使う魔法。生やした木は魔法を解いても消えることがない。世話をしなければ枯れる。複合魔法は元素魔法を複数練り合わせるのじゃな。本当にこの書庫はわしの意思を読み取っておるの」
【樹木】魔法の存在を知り、この魔法を使えば畑を作るのも不可能でないと思い、書庫を出ていく事にした。
§
ふくは横穴に戻ってくると立ち上がり行動する。
ネズミには先程まで思い付かず悩んでいたように見えているので、慌ててふくを呼び止める。
「ね、ねえ!?どうやるのか分かっていないのにどうするのさ!?」
「?……わしはやる事を理解しておるぞ?」
「じゃあ、何をするのさ!」
ネズミがそう訊くとふくはニヤリと笑いネズミに背を向ける。
「木を生やす」
ふくは風の吹きあふれる外へ出ていった。
突然木を生やすと言われ、思考が停止していたが、ネズミもふくを追いかけて外へ出る。
(この風に耐えながら魔法を使うのは中々しんどいものじゃのう……。土、水、火を使うとなると混ぜ合わせる順番も関係しそうじゃの。土は土台、水は成長、火は……なんじゃろうな)
ふくは山に生えている木を思い出して自分が人間の時に住んでいた環境を思い出す。
建物を作る職人が話していた事で山を手入れする時、日の光が大切であるというのを聴いていた。
火の魔法はそれの代わりになるのか半信半疑ではあったが、書庫の魔法大全に書いてある物を信じる事にした。
(……水を一つに対して土を四つ……太陽の光として火を八つ……それぞれ魔力を順番に包んでやれば……。……やってみるのじゃ……)
「『樹海』」
短く詠唱をすると地面から大量の木々が生え、岩ばかりの土地は木に囲まれる。
風は止み、他の岩場の巣に隠れていたネズミたちが外に出る。
一瞬にして周囲の環境が変わった事に驚いたが、それ以上に裸のキツネが訪れていた事に驚いていた。
広範囲に木を生やした上、複合魔法を使いこなしたふくは完全に魔力が尽きかけていた。
膝から崩れ落ち、息も絶え絶えになっていると見ていたネズミはここぞと言わんばかりにふくを押し倒す。
抵抗する力も無く、覚悟して目を瞑ると急に身体が軽くなった。
動けるようになったわけではなく、恐る恐る目を開けるとネズミが宙を舞っていたのだ。
そしてふくの目の前にはヴォルフが座っていた。
ふくは目を潤ませ、大きな声で叫ぶ。
「帰ってくるのが遅いのじゃ!!わしは……わしは……
怖かったのじゃ……。ぼるふの馬鹿……アホ犬……ぐすっ」
「ご、ごめんて……でも助けに来たよ?」
「……わしを……護るんじゃ……。ずっとそばにおれ……」
「もちろんだよ。ふくは少し休んで?」
ヴォルフはふくのそばに伏せ、彼女が回復するまで一時も離れる事はなかった。
宙を舞っていたネズミはそのまま木の上に引っ掛けられ他のネズミたちに助けられるまでは宙吊りになっていた。
その光景をヴォルフは睨みつけ、そばに寄らせないように威嚇するのであった。
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