魔道具に魔法を入れるのじゃ
書庫から戻ってきたふくはヴォルフに抱きしめられていた。
あまりの力で抜け出す事もできず、困惑する。
「ぼ、ぼるふ!離れるのじゃ!」
「嫌だ!オレはふくにだけは嫌われたくないっ!」
「嫌うわけなかろう……?」
「ホントに……!?」
「……わしだって、死んでしまったとはいえ綱彦との間に玉藻を作ったのじゃ……。別に文句は言えぬ……」
玉藻のことを出してしまい、ふくの気持ちが少し沈む。
しかし、その時ではないと鞭を打って気合を入れ直す。
「先ずは【聖泉】の魔法を使う。ポチおよ、わしの魔法を保存できる魔道具はあるのかの?」
「うーん……ふくさんの魔法がどれくらい強いかわからないんだけど、魔法を封印する魔道具はあるよ」
「それを使うのじゃ。とっておきの物を準備するのじゃ」
「わ、わかった!ヴォルフさん!ちょっと力を貸してくれない?」
「いいぞ?」
ポチおとヴォルフは城の方へ向かって走って行った。
ライラとウルはお互いの子供、レプレとガブが遊んでいるのを見ていた。
ふくはその光景を見て、ズキンと心が痛む。
首を横に振り、魔力を昂らせる。
「『破邪の聖水よ、その清浄なる力を持って悪しきものから守る水塊となせ。そして、我らの命の水となれ!』」
詠唱が終わり、発動を待機させてヴォルフたちを待つ。
高度な魔法を発動待機状態にするのは非常に辛い。
簡単に例えると腕を伸ばした状態で重たい物を掴み続けるものと非常に似ている。
歯を食いしばり、魔道具の到着を待つ。
(大丈夫じゃ……。ぼるふは必ず早く来る……!)
そう思った瞬間、颯爽とヴォルフが現れる。
ヴォルフと同じくらいの大きさの魔道具であり、ふくは呆気に取られる。
「大きいの……!?」
「ふくさんの魔法ならこれくらいないとね」
「どう使えばいいのじゃ?」
「魔道具に手を翳して魔法を撃つだけ。それでできるよ!」
ふくは疑心暗鬼になりながら魔道具に魔法を放つと、魔法と魔力が吸い込まれていき、その場に座り込む。
ヴォルフはふくが倒れる前に肩を支える。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃ……。魔力を大量に持っていかれただけじゃ」
ポチおが尻尾を振りながら魔道具のあちこちを見ていく。
「わあ……!魔法が一発で満タンになったよ……!」
「して……これはどう使うのじゃ……?」
「魔力を込めれば誰でも発動できるようになるよ。魔法に相応した量を持っていかれると思うけど、この量はね……多分ふくさんやヴォルフさんくらいしか発動できないと思う……」
「結局わしらが要るのか……。」
ふくは少し不満そうな顔をするが、元々【聖泉】は超高等魔法であり、それを一人で組み上げることができるのはふくだけである。
その事に気がつき、ため息をついてヴォルフの首周りの毛に顔を埋める。
「わしは疲れたのじゃ。お前たち、頑張って魔法を発動させてみるのじゃな」
それだけ伝えると、手合図でヴォルフに指示を出して城の方へと姿を消していった。
その日、誰も魔道具を発動させることができずに困り果てていた。
夜と昼がはっきりとわかるようになったこの世界は朝の時間帯である薄暮の時がとても良い風景を映し出した。
相変わらず、寂しそうな荒野と岩場ではあるが、薄暗くも【太陽】の光が空気中の水分を反射し、キラキラと輝く。
「良い風景じゃ」
「ふくおはよ……」
「おはようなのじゃ」
ヴォルフはふくの隣に座ると、頬にキスをする。
突然キスをされ、驚いているとヴォルフは嬉しそうな顔をしていた。
飼い犬のような仕草で、やれやれとしながらヴォルフを抱き締める。
「今日は湖を作ってしまうのじゃ。早く大穴を塞がねば、また奴らがくるのじゃ」
「そうだね、ふく」
二人は大穴に向かってゆっくりと歩き、復興中の町を見る。
今まで洞穴の家以外は家とは呼べない物だったが、ポチおの入れ知恵で建物が建ち始めていた。
木造や石造の建物であり、種族の特性によって使い分けられていたようである。
様子を見ていた二人に国民が気が付き、一斉に頭を下げられた。
ヴォルフは手を振って合図するが、ふくはスタコラと歩いていった。
「なんで、合図しなかったの?」
「……わしはまだ国民に認められておらぬ。わしのやってきた事はまだ許されておらんのじゃから……」
「ふくのせいじゃないのに?」
「操られていたとはいえ、姿が嫌じゃと思うの……」
「そっか……いつか、認められるといいねっ!」
「まったく……お気楽なものじゃ」
そう言ってヴォルフの尻を叩く。
今までの叩き方と違い、ポンと軽く叩いていた。
§
町の復興には部隊が分かれていた。
資材を使って建物を作る復興部隊、魔獣を狩って食料を調達する給仕部隊、怪我人や病人を治療する医療部隊であった。
復興部隊はポチおとガルドが担当しており、住宅の建設や魔道具で作った日用雑貨の提供をしていた。
給仕部隊はにゃんとライラの担当であり、肉類はにゃんが、草類はライラが提供していた。
そして医療部隊は担当がいない。
元々セイラの担当であったが、すでにこの世を去っており、代役が立てられないでいた。
【治癒】魔法は高度な魔法であり使い手が非常に少ない。
リーダー不在の中、二人の獣人がボランティアのような形で医療部隊同様の作業をこなしていた。
山羊族の男性と羊族の女性で非常に手際よく治療を行っていた。
そして、一人の羊族の女の子が二人の元に食べ物を運んでくる。
「ててさま!ははさま!お食事持ってきました!」
「おお、助かるよ。お手伝いができて良い子だ!」
「偉いわね、メリル」
二人に褒められて嬉しくなったメリルはニコニコと笑う。
「おおきくなったら、ててさまとははさまの様なお医者さんになるんだ!」
「頼もしいぞ!ヴォルフ様もふく様もお認めになられるだろう!」
「そうね。セイラ様が亡くなられた時はどうなるかと思いましたが、案外やってみるものですね……」
「あ!ヴォルフさまとふくさまだ!」
メリルは手を振っていると、ヴォルフが手を振りかえす。
ふくは手を振らなかったことにその場にいた医療部隊は少し心配する。
「どうして、ふくさまは手を振らないの?」
「それはね……ふく様は自分のせいで国が壊れてしまったと思っていて、凄く落ち込んでいるの」
「それまでも、感じの悪い野狐族が酷いことをしていた事を全て自分に引き受けていると言って――」
「ふくさまがヴォルフさまのお尻をペシンて叩いた!」
それを見た医療部隊と夫婦二人は呟く。
「「「「「仲がいいな、あの二人」」」」」」
誰もふくのことを悪く思うヒトはこの場にいなかった。
むしろ、ふくは妻としての振る舞いの参考にされており、メリルの両親も例外ではなかったのだった。
要は、ふくは密かに人気者である。
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