大穴の封印方法を探すのじゃ
何だかんだとヴォルフとウルの関係がふくに知らされ、ヴォルフが近付くとふくが離れるという奇妙な光景を目にすることができた。
「……ぼるふのことは放っておいて、うるよ。お前は【聖泉】という魔法を知っておるのか?」
「……それは、おとぎ話のようなものなのですが、偉大なる剣士が身につけていたとされる聖なる剣を湖の孤島に剣を刺すと、湖は泉となり浄化されたとても美味しい水を生み出すようになる。そして、溢れた綺麗な水は川となり下流へと流れ、人々を水不足から救ったという話です」
「では、その魔法は現存するかわからぬという事じゃな?」
それを指摘するとウルは申し訳なさそうな顔をして俯く。
ふくはそれを確認するとヴォルフの方へ向く。
「ぼるふ、わしは書庫へ行く。頼む――浮気者」
それだけ告げて書庫の魔法を発動させたのだった。
§
書庫についたふくは本棚へと向かい、歩き出す。
すると、九尾の狐が座っており、手招きしていた。
「お前は消えてしまったのかと思うだが、まだくたばっておらんかったか?」
「会って早々、なんて言い草だ」
「何の用じゃ?」
「探し物はこれであろう?」
九尾の狐は『魔法大全』を持っており、それをふくの前にちらつかせた。
それを取り上げようとするとヒョイと躱された。
取り上げようとした反動でそのまま床へとダイブし、恨めしそうな目で九尾の狐を睨む。
「わしで遊ぶでない!せっかくお前の魔法の綻びを直してやったというのに、恩を仇で返すか?」
「……実際、それには大変感謝している。だが、お前にはまだまだ仕事が残っている。……この世界が痩せているという事に気がついているか?」
「もちろんじゃ」
ふくは初めてきた時から荒れ果てた荒野、風が止まない渓谷、貧しい村を思い出す。
いつ、どの時でも大地は疲れ果てたような枯れたものであり、作物を育てるにも一苦労であった。
「アレをどうにかできる魔法があるのか?」
「ああ、【万物殷富】という魔法だ」
「今までにない魔法のようじゃの。どういった魔法じゃ?」
「二人の神が一つの魔力となる。そしてそれを支えるものたちの魔力と共に舞と詩を歌う。魔力は底をつくと思うが、一年ほど国土は緑豊かな大地となり、新たな命が芽吹く。そのような魔法だ」
ふくはモジモジとしており、九尾の狐は怪訝そうな顔をする。
意を決したように、ふくの目は九尾の狐を見据える。
「わしは歌が苦手じゃ」
突然のカミングアウトに呆気に取られたが気を取り直して答える。
「音程は無い。詠み上げるだけで良い」
ふくはホッと胸を撫で下ろし、安心する。
九尾の狐はその姿を見て、鼻で笑い、『魔法大全』をふくに渡す。
「長々と話して済まない」
「良いのじゃ。またいつでも話に来るのじゃ」
「もう、会えないんだな」
「……何故じゃ?」
「漸く魔法が機能をしはじめたんだ。使命を全うせねば……な?」
九尾の狐は残念そうではあったが、それでも使命を全うできることに嬉しさを噛み締めていた。
そんな姿を見てしまったものだから、ふくは呼び止めることをせず、腕を組んで気丈に振る舞う。
「そうか……それなら仕方のないのじゃ。わしらはまだまだ綻びを見つけては直しに行く。その時にまた会おうぞ」
「……ありがとう。得子……」
「……!?」
ふくが返事を返す前に姿がなくなっており、天井のない真っ暗な空間を見上げていた。
「なぜお前は……わしの本当の名を……」
そう呟き、『魔法大全』を読み込むのであった。
今まで指定されたページしか捲ることができなかったが、ふくの魔法がヴォルフの魔力と混ざり合うことで昇華され、全てのページを開くことができていた。
そして、今までのように読みたいページだけを開く事もできた。
とても便利で使い勝手が良くなったので、ふくは少し満足していた。
目的のページである【聖泉】を開く。
「聖なる光の魔法と浄化された水の複合魔法。悪しきものを打ち消し、浄化させた上、最適な飲み水を作り出す。魔力消費量が多く、かつ永続的であり、超高等魔法である為使う事は非常に困難を極める……。ふむ……、ならばポチおとがるどの奴に魔道具を依頼するかの」
ふくはパラパラとページを捲っていく。
ふくが読んでいる書物は全て地上の世界にある国、日本の言葉であり、全ての魔法が漢字二文字である事に気がつく。
そして、漢字四文字のページで止まった。
「【万物殷富】、四大元素と光と闇を組み合わせた複合魔法。四大元素それぞれだけでなく、それらを組み合わせた複合魔法も同時に展開し、空間に向けて放つ。使用者の魔力量によって範囲と効果時間が決まっている為、注意が必要である」
ふくは自身が全ての元素、事象、付与の魔法を扱うことができることを思い出し、発動条件は満たしていることを確認する。
そして、ヴォルフのことを思い出し、ライラ、ガルド、ポチお、にゃんを思い出す。
ふくの髪飾りがピョンと跳ねた気がした。
「そうじゃの。お前たちも、れおんやこりい、せいらもおる。みんなでこの世界を良くしようではないか!」
ふくはこの世界に来て、初めて何かを成し遂げられるような気がした。
口角を上げ、自信に満ち溢れた表情で書庫を後にした。
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