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第41話 逃走③

━━窓はないよ?」


えぇ?それはどういう……?


「そ、それだとめっちゃ匂っちゃうんじゃないか?」


「ううん。各個室の上部に喚起用の装置があるから、匂いとかは大丈夫。」


そんな……。もしそうなら脱出できないじゃないか。


しかし、文香は全く焦った様子を見せない。


「ふふっ。今ちょっと焦ったでしょ。


大丈夫だよ。ここから外に出れる。」


文香はそう言って『掃除用具』と示してある部屋へ入った。

そのまま上の方を指差すので、俺もその指の先を見てみる。


……なるほど。確かに映画などでよく見るものがそこにあった。


「……昔も私、あそこから外に出たことがあるんだ。梯子を持ってきてね。

あれ、簡単に取れるんだよ。小さな私でも簡単に外せちゃうくらい。」


その時のことを思い出したのか、文香の顔は晴れない。

それもそうだろう。文香にとっては地獄だったのだから。


「……さ、早く行こう?


確かあそこらへんに梯子があるから持ってきてくれないかな。」


そして文香は奥の方を指差した後、そのまま指を左に向けた。


「……あそこの左側にあるんだな?わかった。」


言われたところを見てみるとしっかりと梯子が置いてある。俺はそれを文香の元へと運んだ。


文香はありがと。と言い、梯子を設置してすぐに天井のカバーのようなものを外す。

そしてそのまま上へと消えた。


「ほら!宗則くんも!」


言われるがままに俺も梯子を使って上へと上がった。


人がしゃがんでようやく進むことができるほどの広さだ。


俺が上がるのを見て文香はこっちだよ。と手てわ俺を招きながらまた進んでいった。


確かに前方の方からうっすらと風を感じることができ、外が近いのがわかる。


そして、ついにその時が来た。


風が強く感じる方へと進むと前方に細切れの光を見ることができる。


外だっ!

あそこから外に出れる!


しかし、早まってはいけない。

ここから外へ出たところで、見つかってしまっては元も子もない。


俺はその出口を挟むような形で文香と話す。


「文香、ここから一番近い会社の正門まではどのくらいの距離かわかる?」


「……ここからかぁ……。


えーと、、、大体5〜60くらいじゃないかなぁ?」

 

「わかった。じゃあ、一旦俺が外に出て周囲を見てみるから俺が大丈夫だって合図したら出て来てくれ!」


文香がうなづいたのを見て、ゆっくりと出口の戸を開ける。


そして、大きな音をたてないように出口のふちに手を置いて、自分の足が地面にゆっくりと近づくように力を調整しながら降りた。


涼しい風に迎えられ、外に出た俺は壁に沿って角まで走った。

角につくと、そこから顔をひょこりと覗かせ先の方を見てみる。


その視線の先には、黒スーツの男たちがそれぞれ耳に手を当てながら忙しなく動いてる姿があった。


きっと連絡をとりながら俺たちのことを探し回っているのだろう。


その割にはあまり広く探索範囲を設けていないなとは思ったが、きっと出口などに人数を割きたいという考えなのかも知れない。


どちらにせよまだこの辺りは探索範囲の外にある。

俺はそれを文香と共有するために、また元いた場所へ戻って行った。

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