表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/55

第29.0話 何もできない自分が嫌いだ。

「━━━ん。」



ここはどこだ?


どうやら、女の子の部屋のようだが、、、。



・・・確か俺は、文香に会うためにケーキ屋を訪れたはず━━━━






━━━━っ!!


「文香はっ!?」


慌てて部屋から飛び出し、広い家を探し回る。


しかし、文香の姿はなかった。


「・・・宗則くん。」


「っ!


・・・千紗さん。文香は・・・?」


俺の問いに、千紗さんは無言で首を横に振った。


「そんな・・・。」


・・・守る。って、約束したのに。

大丈夫だ。って、俺がいるから。って、

伝えていたのに。


俺が何をした?


ただただその場にいて、無様に捕まり気絶させられ、情けないことこの上ない。


「・・・宗則くん。そんな顔をしないで?


・・・本当は私が守ってあげないといけなかったのに。

昨日、宗則くんをここに来てはダメだって、止めるべきだったのに。


・・巻き込んで、ごめんなさい。危険な思いをさせて、ごめんなさい。」


「いや、、、辞めてくださいよ。頭を下げないでください。

ここに来たのは僕の判断でしたし、文香を守ると誓っていたのに何もできませんでした。彼氏なのに、、、。」


クソ。自分で言ってて情けなくなるな。


しかし、千紗さんは頭を下げたまま


「・・・それと、ごめんなんだけど、



もう、私たちに構わない方がいい。

・・これ以上、宗則くんに迷惑をかけるわけにはいかない。」


と言ってきた。


「え。」


「これは私たちの問題だから。


私も私で文香をもう一度姉さんの手から解放してあげたいと思ってる。

だから心配しないで、宗則くんはいつものように大学へ通って、普通の生活をして?


もし文香を取り返せたら連絡するから。」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。


俺も、文香を解放させてあげたいです!

手伝わせてくださいよ!」


「・・いえ、これ以上宗則くんに何かあったら、あなたの親御さんに顔向けできない。


気持ちだけ受け取っておくから。ありがとうね。」


「っ!


納得できません。俺にも何か━━」


「もういいから!!」


大きな声が俺の耳に響く。


「これは私たちの問題だって

言ってるでしょ!?


赤の他人に何ができるって言うの!?


あなたが行っても、同じように男たちに捕まえられて突き返されるだけ!

それであなたに何かあったら責任なんて取れない!


あなただけの問題じゃないの!」


ハァ、ハァ、ハァ。と息切れをしながら、すごい剣幕で千紗さんが叫んだ。


「・・・怒鳴ってしまってごめんなさい・。


でも、本当にもうこの問題に関わらないで。


ここは大人に任せて、今日はもう帰りなさい。」


普段温厚な人が怒ると怖い。というのは本当で、俺はしぶしぶその言葉に従い、介抱してくれたお礼を言って、ケーキ屋を後にした。


粘ることもせずに、千紗さんの言葉に従った理由は、単純に言い返すことができなかったからだ。


言われた言葉は全て俺に突き刺さり、反論の余地も与えなかった。



俺に何ができるんだ。

俺の力はこんなにもちっぽけだったのか。

甘くみすぎていたな。

何もできなかった。

弱い。

悔しい。



頭の中でネガティブな思いがぐるぐると回る。

しかし、そう思ってても文香は帰ってこない。


〇〇〇〇〇〇


・・・俺はどうすれば良かったのだろう。


単純な力では、全く歯が立たなかった。


なら、作戦をしっかり立てておくべきだった?


いや、きっと文乃さんの方が一枚も二枚も上手だっただろう。


実際、文乃さんはかなり前から従者を送り込み、淡々と作戦を練っていたに違いない。


いっそ警察にでも相談するか?


ダメだ。文乃さんは一応、桜ヶ崎の社長みたいなものだ。

一般人の俺が通報したところでどうにもならないだろう。


・・・もう、全てにおいて俺に勝ち目なんて無かった。

絶望だ。俺には何もできない。


・・・クソッ。


そんな俺の心に呼応するかのように、ザーザーと空が音を立て始める。


全身に降り注ぐ冷たい雨が、異様なまでに心地よかった。



「・・・・ここは大人しく、千紗さんが何かをしてくれることを祈るしかないのかな。」


自分の無力さが嫌になる。



降り注ぐ雨の中に、俺の涙が混じった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ