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18時 帰り道、笑う君が

文香と絶対に助けると約束をしてから、数分が経った。


「━━━ちょっと暗くなってきたね。そろそろ帰る?」


気付けば、太陽は半分程沈みかけ涼しい風も吹くようになって来た。

まったく、文香いる時間はあっという間に時間が過ぎる。


「それもそうだな。送っていくよ。暗くなるし。」


「えー?別に大丈夫だよ。お店までそんなに近くないし。宗則くんが帰るの遅くなっちゃう。」


しかし、文香を守ると決めた手前ここでわかった。じゃあバイバイとはならないわけだ。


「いや、何があるか分からないしできるだけ文香を1人にしたくないし、それに、俺が文香と少しでも長く一緒にいたい。」


・・・大丈夫かな。顔赤くなってないかな。


「わぁー!なかなかカッコいいこと言ってくれるじゃん!


文香と、少しでも長い一緒にいたいんだ。


だって!キャー!!」


こら、痛いからあんまり叩くんじゃありません。

めちゃくちゃ笑う文香を見て、しまった。余計なこと言ったかな。と少し後悔する俺に


「はー・・・。ふふふ。そんなの、私もに決まってるでしょ?」


そう言って手を繋いでくる文香。


「あはっ。また赤くなった。」


さらに、繋いでない方の手で俺の頬を突いてくる。


なんだか、前よりも文香が積極的になってきた気がする。

てか、赤くなってたのバレてたのかよ、、、。


すっかり文香のペースに乗せられて、でもそれも案外悪くないと思ってしまうのだった。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


やがて太陽も完全に落ち切り、街灯がポツポツと光を灯し始める。

その道は何度も通ったことがあるはずなのに、暗いというだけでなんだか違う道のような気がして不思議だ。

 

例えるなら、学校の登校の道と帰り道の景色は違って見える。みたいな。わかるかな。


「でさー、そのお客さんがね?ほんとに面倒くさくてさ。」


文香は最近の客の愚痴を言っている。


「明らかにお金が足りないのに、ここへくるまではちゃんとあったんだ!俺の金をどこにやった!って。


いや、しらんわ!って思った。」


「はは。そんなん言われても困るよな。」


「そうなの!めちゃ困ってしまって。そしたら常連のおばあちゃんたちが助けてくれてね?それで━━」


文香はそれを楽しそうに話している。

よほど今の仕事が楽しく、やりがいを感じていると話を聞くだけで伝わってくる。


横顔を見ても、笑ったり、ふくれたり、時折こちらを見てやっぱりニコッと笑う。


「文香は仕事楽しい?」


「もちろん!たまにさっきみたいな面倒臭いお客さんも来るけど、それ以上にケーキを買う人たちが見せてくれる笑顔が大好き。」


だから、とっても楽しいと。


文香がそう思っていることを知ったら、文香の叔母さんも嬉しいだろうな。


「そういう宗則くんも、大学は楽しい?

ほら、なんか色々大変っていうじゃん?ちょっと気になってて。」


「うーん。楽しい時は楽しいし、レポートが大変な時もあるし、まあ、俺は楽しいと思ってる。」


実際、冬真たちと遊んだり話したりするのは楽しい。授業も色んなことが知れるし。


「そっか。やっぱり憧れるなぁ・・・。ケーキを売るのも楽しいけど、私もJDっていうものになってみたかったかも。」


これは紛れもなく本音だろう。俺の話を聞く文香はとても興味深そうにしていたからな。


でもそうか、もしかしたら文香が大学生になっていた可能性もあるわけで、、。

もし、文香と同じ大学へ通っていたならどうなってただろう。


大学生の文香かぁ・・・。

その姿を想像してみる。

あぁ、きっとモテるんだろうな。だって可愛いもん。キレイだし。優しいし。


「今、大学生の私を想像したでしょ。めちゃ顔に出てるからね。」


・・・バレてた。

でも、想像しちゃうでしょ。絶対。


「だけどね、憧れはするんだけど今の私はケーキ屋で働けて幸せだから。


その分、宗則くんには大学の話いっぱいしてもらわなきゃね!」


言葉の奥に、私の分まで大学生生活を楽しんでほしいという気持ちを感じ、任せておけ。と心の中で思った。


それからもしばらく会話をしながら、帰り道を歩く。

すると、暗い道筋の中にポツンと明るいお店が見えてくる。文香の働くケーキ屋だ。


「そうだ!せっかくならご飯食べていきなよ。ご飯代浮くよ?」


「え、いや。流石に悪いよ。いきなりだし。店の人も困るんじゃないか?」


ここで断ったら俺の晩御飯はビーフシチューですが。

3日連続の。


「えー?・・・私と少しでも長くいたいんじゃないの・・・?」


・・・それは反則だと思うんだ。

その時の熱が蘇る。思わず顔を隠してしまいそうだ。


「・・・わかったよ。でも許可はちゃんと取ってくれ。オッケーだったらご馳走になります。」


「わかった!すぐ聞いてくるね!!裏口で待ってて!!」


そう言って、すごい勢いで中へ入って行った。


ほんとに、出会った時から文香の色んな面を知ることができるな。意外と破天荒なところとか。


少しだけ待っていると


「オッケーだって!」


思ったより早く、許可を得て戻ってきた。


でも、そうか。何気に初めましてなんだよな。

無礼のないようにしないと。


文香に招かれるまま、中へ入ろうとした瞬間。



俺は見つけてしまった。こんなに暗いのに、サングラスをかけてこちらを見つめる男に。

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