14.5話 一緒に遊んでくれる兄が
幼い頃はよく秘密基地へ来たものだ。
勝手に色々持ち込んで、遅くなるまで遊んでいたこともある。
その度に、母さんに叱られては結梨と2人で泣いたものだ。
しかし反省なんてちっともしなくて。もうこの秘密基地は2人だけの第二の実家みたいなものだった。
次第に歳を重ね、ここへ来ることもなくなっていったけれど、やっぱりいざ来てみると昔を思い出してはしゃぎたくなる。
「そういえば、ここって大分キレイに保たれてるけど結梨が掃除しに来てくれてるのか?」
「一応、ね。ほら、私たちにとってはここってもう一つの実家みたいな物だからさ。キレイにしておきたくて。」
「そうだったんだな。キレイに保ってくれてありがとうな。」
「ううん。私がやりたくてやってることだから。
・・・そんなことより、遊ぼ!!」
そう言って結梨は俺から距離を取り、ばっちこーい!と声を上げた。
それに応じるように、俺は持っていたゴムボールを結梨に向かって投げた。
一応怪我をしないように軽く投げたが、キャッチした結梨に
「もっと強く投げて!」
と怒られてしまった。
「いつまでもか弱い乙女扱いしないでっ!!」
と思ったよりも速いボールが飛んできた。
パシンッ!気持ちの良い音を響かせ、ボールをキャッチする。
「先に落としたほうが負けねー!!」
そう言ってニヤリと笑う。
なんと、好戦的な妹だ。それも可愛いところではある。
「よっしゃ!負けねぇからなー!!」
ならば俺もそれに応えよう。
「くらえっ!!」
先ほどよりも、速めのボールを投げる。
パシッ!それを結梨は両手でキャッチした。
「こんな球じゃ、私は落とさないよー!」
流石にまだ取れるか。
すると結梨はまるで野球選手のように投球モーションに入ると、地面スレスレのサイドスローを放ってきた。
「うわっ!危ねっ!!」
思ったよりも低い位置でキャッチさせられたため、思わず手のひらで弾きそうになった。
「こういうのは速さだけじゃないんだよね!テクニックが大事なの!」
どうやらしばらく会わないうちに、俺の妹は好戦的なゲーマーみたいになってしまったようだ。
昔は速すぎる!もっとゆっくり投げて!
と喚いていたというのに、、、。
しかし兄として、この勝負に負けるのはプライドが許さない。
ここは全力で行くしかない。
今度は先程よりもさらに速くボールを投げた。
しかしそれも結梨は難なくキャッチする。
くっそー。やるな、、、。
「今回ばかりは負けないんだからね!」
当の結梨は得意げになってボールを見せつけてくる。
やばい、、、。なんか勝てる気がしないんだけど・・。
今度は上の方から足元へ落ちるボールを投げてきた。
なんなん!?コントロール良すぎじゃない?!
俺はそれに対し姿勢を低くしてボールをキャッチする体勢になった。
が、ボールはさらに変化して俺が出した手よりも前で地面についた。
・・・負けた。想定していたよりも、速い決着だった。
軽くボコボコにされてしまった。
「やったー!!やっと勝ったー!!」
離れた場所で結梨がよろこんでいる。
いや、やっと勝ったって。どんな昔から俺に勝とうとしてたんだよ。
正直に言うと悔しいよねやっぱ。俺だって負けず嫌いなんだ。
今回はその執念に負けたけども、次は負けない!!
「結梨ー!もう一回やろうぜー!」
「えー?しょうがないなー。仕方ないからやってあげるー!」
さぁ第二ラウンドの始まりだ。