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番外編・根拠は愛


 朝食もそっちのけで、母上様の膝に縋ってわんわん泣きじゃくる。

「どうしてダメなのぉ……! わたしが! いちばん! おにいさまを好きなのにぃ~~~~!!!」

「兄妹だから無理って前から言ってあったでしょ」

 そういえば、言ってた。

「でも……父上様にお願いしたら、いいよって言ってくれるかなぁ、て」

「なるわけないでしょ、おばかさん」

 ぺち、と額を小突かれる。

 なんで~~~~??? 父上様にオネダリしてダメだったことなんてないのにっ

「父上様は、おうさまだから、出来ると思ってたのに……」

 裏切者! という気持ちをこめて父上様を睨むと、なんともしょんぼりとした顔をしていた。そんな可愛いお顔しても、恋に破れたわたしの気持ちは慰められないのよっ


「こら、どうしようもないことなんだから、ライアン様を睨むんじゃないのっ!」

 またぺちり。

「ひどいわ、母上様は一番好きな人と結婚出来たから、わたしの気持ちなんてわからないのよ!」

 わーん!! とまた母上様の膝に縋りつく。

 ちなみにわたしは見えていなかったけど、この時母上様と父上様は変なお顔をしていた。なんで??

「は、母上……」

 お兄様が困り切って母上様に声をかけると、母上様はわたしの頭を優しく撫でながら首を横に振った。

「陛下もディーノ様も、気にせず……というのは難しいでしょうけれど、ここは私に任せてどうぞお仕事に向かってください。この子には私が付き合いますから」

「ウィレミナ、よければ私も付き合うが……」

「一番忙しい方が何仰ってるんですか。大丈夫、今日中に折り合いつけさせますから」


 母上様、わたしの長年の恋にしゅうしふを打つには同じだけの時間が必要なのよ……!

 えぐえぐと泣き続けていると、父上様の優しい掌とお兄様のキスがつむじに降ってきて、それから二人とも部屋を出て行ってしまった。

 ぱたん、と扉の閉まる音がして、わたしはさらに盛大に泣きじゃくる。

「は、ははうえさまぁ~~~なんで? ぜったいだめ? にい、さまと」

「絶対ダメ。神様がお許しにならないわ」

 父上様とお兄様がいなくなったのをいいことに、最近はめっきり昇らなくなった母上様の膝に座って、正面から抱きついて大声で泣く。

「いやーーーーー!!!! もう生きていけない……!」

「はいはい。その内もっと好きな人が出来るから、人生諦めるのは早いって」

 母上様の声はいつも暢気だ。

「お兄様より素敵な人なんていないわっ」

「うーん……まぁそれは確かに」

 しかも説得力に欠ける。もっとりろんぶそうして、わたしに恋を諦めさせてよ……!

「まぁ、初恋は実らないっていうし」

「……母上様も、実らなかった?」

「…………実ったわね」

 我が母ながら、なんて憎らしい……!!!

 しかも実ってるってことは、お相手は父上様ってこと!? そんなのズルい!

「母上様のばかぁ~~~」

「八つ当たりはやめなさい」

「はぅっ!」

 またまた、ぺちり。


「…………」

 母上様に抱き着きながら、わたしは考える。

 ディーノお兄様に、いつまでも婚約者が出来なければわたしにもチャンスは巡ってくるんじゃないかしら?

「何考えてるか、大体顔に書いてあるわよ」

 むに、と頬を摘ままれてまた涙が出て来る。

「だってぇ……」

「まあまあ、あなたはまだ若い……ていうか幼いんだから、これからもっとたくさんの人に会う内に、素敵な人が見つかるわよ」

「全員に会っても、お兄様の方が素敵だったら?」

「全員……世界中の人?」

「うん」

「えー……まぁその時はディーノ様の傍にいたらいいじゃない。結婚は出来なくても、あなた達は兄妹なんだから、一緒にいることは出来るし」

 ん? そう? その手があったわ!

「そっか……むしろ兄妹なんだから、結婚しなくてもずっとお兄様の傍にいれる!」

「うーん…………まぁ、今日のところはそれでいいんじゃない」

 母上様は頭を掻きながら適当な言い方をする。もう、もっと真剣に考えてよ!

 わたしは母上様の膝から飛び降りると、華麗に着地。びし! とポーズを決めてみせる。

「わたし、ずっとお兄様の傍にいることにする!!」

「……まぁ、状況が許せばねー」

「大丈夫! だってわたし、姫だもの!!!」

 華々しくわたしが宣言すると、母上様は大層うろんな顔でぼそりと呟いた。

「…………ああ……だからうちの男共に、可愛がりすぎちゃダメって言ったのに……」


 その後もブツブツ言ってたけど、わたしは元気全開!

 さっそく今日のお花をお兄様に渡しに行くことにした。こんやくしゃの選定? 中かもしれないけど、姫が行くんだからお花を渡す時間ぐらいあるわよね。

「行くわよ、デイジー!」

「は、はい、姫様!」

「ディーノ様の邪魔しちゃダメよ~」


 ズンズンと朝食の間を出て行くわたしの背中に、母上様の声は届かなかった。



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