僕とネコのくろまる
なろうへの初投稿です。
「彼女と彼女の猫」のbgmでもyoutubeから検索して流しながら読んでもらえるといいと思います。
あれは僕が8歳のときの思い出だ。その日は深夜から台風の予報で、下校のときにはぽつりと雨が降り始めていた。
台風が好きだった。低気圧のせいだろうか、なんだかわからないけど好きだった。その日、僕は帰り道に寄り道をした。
なまぐさい空気が僕を路地に誘った。吉祥寺の街は新しく、そして古い。あれは今はもうないスナックの前だ。そこで僕は見つけた、ぬれてよれた段ボールを。
中には二匹の子猫がいた。白い方は既に死んでいた。もう片方の黒いのに僕はくろまると名前をつけた。
幸い家族は子猫を飼うことをすんなりと受け入れてくれた。その日から狭い部屋の中に宇宙が広がることになった。
くろまるはとても元気な男の子で、しょっちゅうトイレ砂をこぼしては怒られていた。僕はくろまるが好きだったし、くろまるも僕が好きだった。
僕が10歳のときだっただろうか、ある日くろまるがいなくなった。一日中探した、みつからなかった。電柱にポスターを貼った、みつからなかった。僕は泣いた。
一年くらいたって僕はくろまるのことを忘れていた。いや、忘れようとしていただけで忘れられなかった。
その日はあの日と同じ大雨だった。その日、僕は野球部で雨天コールドの敗北を喫し心身ともに疲れ切っていた。
傘は持っていたがそれでもずぶ濡れだ。仕方がないので、公園にある小さなトイレ小屋の中で雨宿りすることにした。ブランコが風に吹かれて不規則に揺れる。
ふと、足元で黒いものが横切る。子猫だ。そういえば昔、黒い猫を飼っていたな。
子猫は僕を警戒しない。むしろ僕をどこかに連れて行ってくれるようだ。僕は子猫について行った。シーソーの裏の手入れされていない花壇の藪の中にそれはいた。
くろまるだ。見ればわかる。間違えるはずがない。あの右頬の小さな傷はお前しかいない。そうか、そうか、なるほど。この子は君の子供か。
くろまるは、小さな声で鳴いた。僕らは数年ぶりの久闊を叙し、しばらく一緒にずぶ濡れになった。傘は捨てた。全てを洗い流してくれる雨だった。
どれだけ一緒にいただろう。そうこうしているうちに夕方になった。雨はもうやんでいた。急に公園の入り口に僕の兄が現れた。なかなか家に帰ってこない僕を心配して迎えにきてくれたらしい。
兄は猫があまり好きではなかったので僕はくろまるのことは何も言わずに公園を去ることにした。去り際、僕はつぶやいた。
「君も大人になったんだな。」
これは僕と猫の15年前の思い出。くろまるはまだ生きているだろうか?いや、そんなことはありえなくて、本当のことをいうとそんな猫は存在しておらずこれは全部おれの作り話だ。うるさい、黙れ、おれが頭の中で何を妄想しようと勝手だろう。
25歳の男は今日もワンルームの冷蔵庫の発泡酒に手をのばす。
いかがでしたでしょうか?感想くれると嬉しいです。
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