シュワッチ!「2015年8月31日」
遅いお盆休みが終わり、今日から仕事。
初日の朝から雨で、ゲンナリ。
傘を持ち車に乗り込みイグニッションを捻る。軽い振動と共にエンジンが目覚める。
この瞬間が、好きだ。
会社へ向かう途中、車内にあった、昨日の缶コーヒー。口をつけたが、空だった。
「フッ」と少し笑えた。
駐車場について、いつもの場所に車を止める。
雨はショボ降り。今のうちにと、少しドアを開けて傘を出し、天をつく。
腕を伸ばしてボタンを押す。
「シュワッチ!」
つい、口からでた言葉。
ウルトラマンだ。
降りてドアを閉める。まだ笑っていた。
ツボだった。
振り返ると、すぐそこの看護学校の生徒がこっちを見ていた。目があった。
僕はまだ、笑顔でいた。
2秒。
固まったままの、笑顔の僕を残して、女子生徒ふたりは、同時に無表情で前を向き、同時に左足から、スタスタと足早に去っていった。
「なんてシンクロ率の高いふたりなんだ!」
ふたりは卒業するまで、この道を通るのだろう。
僕は二度と傘をさしながら、笑わないぞと、誓った。