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ハズレ王子 Ⅱ 〜輪廻の輪から外れた俺は転生させられて王子になる〜  作者: さつき けい


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56/65

56・信用出来ないこと


 ここからだと王宮への伝令は一日あれば届く。


うまくいけば返事が来るのは明日の夕方だな。


「おい、この書類、真実か?」


風呂が一段落して、今は文官たちを問い詰めている。


「は、はい」


絶対に嘘である。


俺の目の前の床に座らせた文官ニ人の目が泳いでるからな。


「どう思います?」


そして俺の隣にはヤーガスアの難民代表の夫婦。


その夫婦にギディが抜き出した書類を渡す。


「我々が拝見してよろしいのでしょうか?」


「俺はおかしいことは分かるけど、どこがと言われたら細かいところは分からない。


出来れば解説してもらえるとありがたい」


前世は中学生、今世は王族なんで文官の仕事なんて分からない。


どうせ、返事が来るまではここを動けないからな。


「分かりました」


夫婦に書類を読んでもらっている間に、俺はギディに話を聞く。




 ギディとソミには騎獣たちを抑えた後、ここの住民たちの暮らしを見て回ってもらっていた。


「最初の約定を確認しないと正確なことは分かりませんが」


普通の生活に必要なものが足りないようだ。


「やっぱりか」


最初の頃は自分たちが持ち込んだ分もあり、何とかなっていたのだろう。


 ところが西のヤロウが来てからは補充されず、配給も減っていくばかりだったという話だ。


横領だろうな。


それまで頻繁に出入りしていた業者を、自分の息のかかった者に替えていた。


質を落とし、量を落とし、高価な物は横流しで自分たちだけは贅沢をする。


これでは住民に不満が溜まって当たり前じゃないか。

 

「ソミ、足りないものをまとめて書き出しておいてくれ」


「はい、承知いたしました」


反乱が起こる前で良かったな。

 

三年前の再現になるかもと思うと怖い。




「こんなんでよく我慢してたな」


お茶を入れ替えに来てくれた従者の少年にボソッと零すと、


「ヤーガスアはブガタリアにひどいことをしましたから」


と、目を伏せた。


「はあ?、お前たちがやったたわけじゃないだろ」


当時は過激な奴らがどこにいるか分からないから、全部追い出してたとは思うけど。


今はヤーガスア自体がなくなってるし、もう関係ない人の方が多いだろう。


「それでも、ブガタリアの普通の人たちはそんなこと知らないでしょう?。


私たち皆んなが嫌われるのは仕方ないかと」


だから我慢しろということか。


 ほむ、誰かがそう言ったんだろうな。


俺は、子供がこんなことを考えるとは思えなかった。


書類に目を通している代表の夫婦を見る。


使えそうなものは使わないとな。


「こ、これでいかがでしょうか」


解説付きの書類を渡される。


「ありがとう、良く出来ている。


あなたたちには王都へ一緒に行ってもらうことになるので、旅の準備をしておいてくれ」


「へっ?」


唖然とする夫婦にニコリと微笑むと、慌てて出て行った。



 さて、文官たちを見る。


「お前たちはヤーガスアの者なのか?」


ブガタリアでは文官は脳筋じゃ務まらないが身体は鍛えられているはずだ。


黒髪黒目、濃い肌の色に筋肉質の体がブガタリアの基本的容姿なのだ。


「い、いえ、東の部族からです」


それにしては、この二人は身体の線が細い。


「もしかして、東の部族から追い出されたのか?」


俺の誘拐騒動の後、東の部族から一部の者が逃げ出していると聞いた。


問い詰めると、やはりそうらしい。


「俺たちは身体を鍛えてこなかったから、大きい身体の奴らに逆らえなくて」


ここなら自分たちと同じ体型の者が多い。


そう思ってやって来た。


「つまり、ブガタリア民だから役所には入り込めたが、あいつらの言いなりだったということか」


コクコクと頷く二人。


まあ、ブガタリアは好景気とはいえ、未だに人手不足が続いている。


優秀なら仕事はある。


いや、こんなことに優秀なのは困るけどさ。


「王都で不正の証言をするなら解雇まではしないが、どうする?」


「します、します、させていただきます」


俺は大きくため息を吐く。




 イマイチ信用出来ないんだよなあ。


前世の記憶でもいざとなるとコロッと手のひらを反すヤツはたくさんいた。


「悪いけど、契約書にしてもらうよ」


俺はこいつらに契約魔法の実験台になってもらうことにした。


うん、少しワクワクしてきたぞ。


 俺は少年従者に手伝ってもらいながら、契約魔法書を準備する。


「コリル、何をやってるんだ」


兵士たちに肉体言語という模擬戦での会話をしていたエオジさんが戻って来た。


ギディとソミは他の机で必要品の書き出しをしている。


「ちょっとねー」


俺はシーラコークの業者から契約魔法を習った。


アレの簡易版くらいなら簡単に出来るのだ。


まだやったことはないんだけどね。


 まずは真っさらな紙に光魔法を付与して魔法契約書を作成。


「エオジさんは署名をお願い」


「お、おう?」


俺は中立の立場での立会人になる。


エオジさんと文官二人に魔力を込めて署名してもらう。


さて、罰則は何にしようかな、うふふん。


薄く笑ってたら少年従者に引かれた。




「何の魔法契約だ?」


ああ、エオジさんに説明しないとね。


「この二人に王都で証言をしてもらうための魔法契約です。


エオジさんの要請により、二人が偽りなく証言する、という内容ですね」


「もし破ったらどうなる?」


そうそう、そこなんだよね、この魔法契約書の面白いところは。


「一目で見て、すぐに分かり易いのが一番だね」


実は紙自体があまり品質が良くない。


おそらく、確実な拘束力は期待出来ないな。


だから簡単なものしか付与出来ないんだよねえ。


チラリとまだ若そうな文官二人を見る。


「『二度と嘘を吐けない』でどうかな?」


「ほお?、もしそんなことになったら小さな嘘さえ吐けないってことか」


エオジさんの笑顔が黒い。


「そう、お世辞や誤魔化しが出来なくなるね」


心にも思っていないことをいうのは『嘘』という判定になる。


生きにくい世の中になるだろうねえ。


文官二人の顔が青を通り越して真っ白だ。


俺は魔法契約書に最終的な魔法を施す。


ポワンと一瞬光って完了である。




 翌日、俺は病人がいるという長屋へ向かった。


ソミとギディが歩き回っていて見つけた場所だ。


「どうしてこんなところに」


難民地区の中の隔離された長屋。


「ギディもソミも出ていろ」


付いて来た二人を建物の外に出す。


ヤーガスアはツデ国との交流が多い国だったから、同じ病が流行っていても不思議じゃない。


 診療所といってもあまりにも狭い。


「ヤーガスアから医療関係者は来ていないのか?」


世話をしていた老婆が涙を流しながら首を横に振る。


 中に居た十名程度の患者の多くは屈強な男たちだった。


「やはりツデの流行病か」


ヤーガスアの弱体化計画で追い出された脳筋たちは、ツデの魔獣対策に兵士として送り込まれた。


そこで病になって、家族の元に戻されたらしい。



 俺は部屋の中央に浄化の魔石を設置する。


ブガタリアの医療術師からは原因はおそらく蛇魔獣の毒だろうという話を聞いている。


部屋に浄化の光魔法を施すとそれ以上病は進行しないそうだ。


これだけガタイの良い男たちなら回復だけでイケるだろう。


一人一人に回復魔法を掛ける。


俺自身の抗体も魔力に乗せて送り込むが、これは個人差があるのでうまくいくかは受け手次第だ。


「がんばれ、こんな病に負けるんじゃないぞ」


薄く目を開けた男を、俺は微笑んで励ます。


俺だって三日も寝込んだから辛いのは分かる。 他人事じゃないんだ。


 ソミに頼んで東の宿場から食料の配送をお願いしている。


今日中には到着すると伝えると、また老婆に泣かれた。


「泣くのは病の者たちが全員元気になってからにしろ」


って言ったらまた泣かれる。


どうすりゃいいんだよぉ。




 夕方には伝令が来て、罪人は別に移送部隊が来ることになった。


俺たちは明日の朝には証人たちを連れて王都に戻るために立つことに。


あれ?、何か忘れてる気がするー。



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― 新着の感想 ―
[一言] ここに来た目的どっか逝っちゃってるねえ(棒 コリルに監査官として色んな所飛ばしまくる事になりそうやな
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